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第五章3
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| プロメタリア艦隊進行 トールを旗艦としたプロメタリア艦隊はアンドロメダ星雲外周でパメラとセイラからの通信カプセルを受け取った。リヴァイアサンの航行速度は予想を遙かに上回るばかりか、ラーメタルの移動によって尾を引いた暗黒雲のに阻まれプロメタリア艦隊も立ち往生を余儀なくされてた。かろうじて次元断層に入る前に放たれたパメラ達からの通信カプセルによって分かったラーメタルの位置は、今正に巨大な次元断層帯によって囲まれ、アンドロメダから大きく迂回しなければ到着できない状態にある。 「ラーメタルが次元断層に潜んでいるだと!こそくな手を使いおって・・・・。してパメラとセイラからの通信カプセルで他に分かったことは?」 「敵戦艦の見取り図、乗組員組織図が収容されておりました。それと、多数の不良細胞を持ちながら生きながらえているヒューマノイドのデータが・・・」 「ほう、なるほど・・・」 「しかしながらトール様、あのヴェルセルークの小姓をしていた者が乗船していたとのメモが。この分ではおおかたパメラ様とセイラ様の正体は・・・」 「なに?あのアルバとかいう小僧か!・・生きておったとは・・・!」 トールは激しく拳を握りしめ、その手に乗せてあった妹達からの通信カプセルをへし割った。トールの手からは透明の液体がにじみ出た。カプセルを持ってきた前衛艦隊司令が恐れおののいて二、三歩後ずさった。 「もう、敵艦リヴァイアサンはラーメタルに到着していてもおかしくありません。あの次元断層を迂回していれば我々のレーダーにも捕捉できましたが、捕らえられなかった所を見ると・・・」 「次元断層を航行したと言うのか・・・!」 「恐れながら、あの戦艦の大きさならば断層間をぬって航行することは理論上不可能です・・・しかしながら、薄い暗黒ガスの隙間を通れば・・・それほどの航行技術を有している可能性が・・・」 「可能、不可能などという言葉は聞きたくない!事実を申せ!航行したのかしないのか!」 トールのサーベルが宙を舞う。司令の首もとをかすめ、髪の毛がパラパラと床に落ちた。その時、巨大パネルがハルヴァルドーの姿を映した。 [ハーロックを見くびるなと申しておいた筈だが。戦術を心得ない者にはとうてい分かるまいがな] 「ハルヴァルドー!・・・ふん、私の妹たちとて愚かではない。敵に悟られたときの対処の程は心得ている」 トールは巨大モニターから目をそらして吐き捨てるように呟いた。 [やはりそなたも心を失った一プロメノイドに過ぎぬのだな・・・。分かっていたことだが・・・残念だ] 「心など弱者のたわごとに過ぎぬ。これ以上くだらぬ事を言いうつもりならば通信を切る」 [敵艦はラーメタルにある。そこからの攻撃はかなうまい。迂回して攻撃するには時遅し。だが、少し待てば攻撃出来ぬ訳ではない。断層はアンドロメダ星雲中心部にむけて移動を始めている、断層の隙間を利用すれば、艦載機程度なら航行可能になろう。・・・空母をそちらに向かわせた。私からの最後の餞だ。そなたの戦いの程・・・とくと拝見させていただく] 「なるほど・・・・ならば、礼として、パメラとセイラが送ってきたカプセルに面白い情報が入っておったので・・・それをそちらに転送しよう」 [面白い情報?] 「不良細胞の塊のようなヒューマノイドの情報だ。そなた・・・たしかこの種の材料を探しておったのではあるまいか?そのために散々メタブラディで人体実験を繰り返して追ったことは既知」 トールは鼻で笑うようなそぶりをしてそのまま通信を切った。プロメタリア軍事エリアの通信パネルの前で硬直したように立つハルヴァルドー。 「閣下、どうなされたのですか?」 側近が近づいた。彼にはハルヴァルドーが混沌とした感情にくれていることなど分かるはずもなかった。プロメノイドに分かる感情は数少ない。ハルヴァルドーがどれほど研究を重ねても、ヒューマノイドの持つ感情というものを全てインプットすることはかなわなかった。崇高な感情であればあるほど、それは複雑極まりない。 「どうもせぬ。私はラミア様の所に行く。至急高速飛行艇をラーメタルへ向かわせよ。トールが妹パメラとセイラが研究材料を見つけたそうだ・・・この者だ。確認次第ここへ」 ハルヴァルドーはパネルのスイッチを押してトールから送られてきたデータを映し出した。数々のDNA配列と共に細胞が構築され、やがてそれは一人の女を映し出す。側近はそれを確認すると自らが頭脳にインプットした。側近は深々と頭を下げ、その場を去っていく。それを確認してハルヴァルドーはラミアの元へと向かった。 ラミアはプロメタリウムの外で起きていることは何も知らず、中枢都市の塔の中で静かに浮遊していた。カプセルの中で跪いた。 「トールが出陣した・・・さようか。それほどまでに敵は近くに・・・ぬかりましたね、ハルヴァルドー」 「ヘルブラディはもはや戦艦リヴァイアサンそのものとなってラーメタルへと上陸しております。こちらが何の手出しもせねばこの戦いを避けることが出来るかもしれません。ヘルブラディの威力ははかり知れず、また、あの艦を率いるキャプテン・ハーロックの実力も」 「まだヘルブラディを諦められぬと言うのか。この大宇宙にプロメノイドの存在を脅かす者を生かしてはおけぬ。私に跪かぬ者を私は許さぬ。破壊せよ」 「・・・トールも、同じようなことを申しておりました。故に自ら出陣を。トールは妹の犠牲さえもいとわず、リヴァイアサンに立ち向かう様子」 ラミアの炎は徐々に女の顔をそのエネルギー体の中に構築し始める、それはトールによく似た女の顔、そしてその口がハルヴァルドーに語りかけた。 「トールは私の分身。そなたが私のエネルギーを使って肉体を与えた大切な僕・・・。あの子のやることに心配は無用です。お前はこのプロメタリウムを守っていればいい」 ハルヴァルドーは顔を伏せたままだった。その顔は勝ち誇っているかのようだった。ハルヴァルドーは軽いふらつきを覚えながら塔の真下にあるモノ・プロメノイドの養卵場上部中央の橋のエスカレーターに乗っていた。見下ろすとそこにはふ化を終えた無数の乳白色の殻が並んでいる。奥に並ぶ卵の中には、ふ化のかなわなかった未完成のプロメノイドが放置されていた。ハルヴァルドーはそれを見て不快な表情で目をそらした。 壁には隙間無く並べられた試験管。その中にひとつひとつ分析され、篩にかけられた精子が入っている。ハルヴァルドーの物だった。 長い橋の突き当たりにそびえる彫刻。美しい女神のような彫刻はトールにうり二つの顔をし、全てを包み込むように両手を広げ、聖母のようなまなざしで養卵場を見下ろしている。足下にはクリスタルの棺、彫像と同じ女性が眠っていた。ハルヴァルドーはその棺を前に膝をついて、手を回し、中で眠るトールにうり二つの女性を見つめ、そして呟いた。 「ラミア・・・私の望んだ世界は間もなく訪れるというのに、全てが狂いだしてしまった。あのハーロックという者の存在のせいだ。もうそれを止める事はできない。何者にもどんな物にも冒すことできない・・・完全なる遺伝子の入れ替えさえできればそれでよかったのに・・・。なぜ邪魔をするのだ・・・ヒューマノイドの戦士という輩は・・・」 永遠の眠りについている、「ラミア」と呼ばれた棺の中の女性は何も答えない。ハルヴァルドーが見上げれば、彫像は優しい眼差しを落とし、やはり何も語ることはなかった。ハルヴァルドーには時間がない事を自覚している。もう一つの1000年伝説、ダイバーランド星の伝説を知り、ヘルブラディを探し当てるも彼の望みは叶いそうにない。軍事エリアに戻ったハルヴァルドーはプロメタリウムのずっと先、アンドロメダ星雲外周にそびえる巨大な次元断層がプロメタリウムからでもハッキリ見て取れるほど、数々の亀裂とガスの嵐を従えて増殖移動している。次元嵐が断層の中で衝突し、時折、発光を伴う。まさに地獄への入り口。やがてそこからうっすらと、惑星ラーメタルが顔を出しつつあった。そこへ向けて数人のプロメノイド兵士を乗せた高速飛行艇はワープした。 トールの妹、パメラとセイラは、分け与えられた居住区の部屋から出てくることは無くなった。入り口には交代で銃を構えた者達が警備を続けているからだ。室内はモニターで監視され、完全なる監獄状態になっている。それでもハーロックは彼女たちを処刑しようとはしなかった。敵とはいえ、命がけで使命を果たそうとする者を処刑することは彼の意に反するのだった。 「彼女たちは随分大人しくしているみたいですね。ラーメタルに着いたのだから、下ろしてやっても良いんじゃないですか?泳がせるって言うのも一つの手だと思うんだけどな〜」 「おいアルバ。お前なに言ってるんだよ。あいつらはリヴァイアサンの組織図や見取り図を敵に知らせたスパイなんだぞ!泳がせるって、また艦内をうろつかれたりでもしたら・・・」 艦橋で広が怒鳴った。 「じゃぁ、幽閉して生かしておいて・・・人質にでもするつもりなんですか?キャプテンはそんな卑怯なことをする人じゃない。だったら、ここにいたって時が経つだけです」 「そんなの俺にだって分かるかよ・・・」 「あんまりうだうだと話をするような事ではなかろう。お前達はだまっておれ。他にやる事があろうが」 ホセが機関室から戻るや否や、広とアルバを叱った。ホセがちらとレーダーを見つめるラ・フロリーナを見ると、落ち込んでうつむいた彼女が力無い笑いをホセに返した。 「そう、落ち込むな。お前さんが艦内を案内しなかったとしても、結果は同じじゃよ。キャプテンもトチローも『だからどうした』ってなもんじゃ。この程度でうろたえておるようでは、お前さんらもまだまだだな。ふぉっふぉっふぉ。おっと、もう飯の時間じゃ、ほれ、食堂にいかんか」 ホセは後ろ手に組んでのんきに艦橋をうろついた。その時アルバの通信機が鳴る。パメラとセイラに食事を運ぶようにとの指示だった。無防備な彼女たちとはいえ、危険人物と指定されたために、彼女たちの部屋に出入りするのはアルバかアグリモニーのどちらかに限られている。アルバは二人分の食事をワゴンに乗せ、交代で警備されている彼女たちの部屋へと向かった。二人の部屋は、監視カメラに捕らえられていることを気にして薄暗く、アルバが部屋にはいるとぼ〜っと浮かび上がる二人の姿で一瞬おののいた。 「お、驚いたな・・・もう。ホラ、食事、持ってきた。部屋の電気くらいつければいいのに」 「・・・貴方がまだ生きていたとはね・・・しかもこの船に乗っていたなんて」 うつむいていた二人はゆっくり顔を上げ、セイラが電気をつけ、パメラがアルバの持ってきた食事を受け取った。 「なぜ・・・?いつもこんな食事を?リヴァイアサンでは捕虜にもきちんと食事をとらせるの?」 「さぁね、炊事担当者のやさしさってやつだろうよ。それに僕らは君たちを危険人物とは思ってるけど、捕虜だとは思ってない」 パメラは眉間にしわを寄せて首を傾げた。アルバは小さなため息をついて呟いた。 「分からないならいいいよ」 「私たち、なぜスパイだと分かって殺さないの?それとも、メタブラディでプロメノイドがしたように私たちを・・・」 二人は身を寄せ合ってベッドに座り食事を見つめていたが、そのまま上目使いでアルバをじっと見た。アルバは常に冷静に答えた。 「そんな卑劣なことを俺達はしない。君らとは違う」 「それではまるでプロメノイドが卑劣なことをしているとでも?」 アルバは眉間にしわを寄せて口惜しそうに頭を振った。彼女たちに何を言っても分からない・・・そう思った。 「君たちの目的は何なんだ?このまま黙っていたら、死ぬかもしれないんだぞ。恐くないのか?」 「恐ろしい・・・恐ろしいわ。それでも、私たちはお姉さまやハルヴァルドー様、そしてラミア様の為に生きることが私たちの宿命ですもの。主君だったヴェルセルークに仕えておきながら、主君が死んだら敵だった海賊に乗り換えるような貴方とは違うわ」 「言いたきゃ言ってろよ。ヴェルセルーク様の為に涙を流してくれたキャプテンの気持ちやそんなキャプテンに敵ながら敬意を払って死んでいったヴェルセルーク様の気持ちなんて君たちには分からないだろう」 パメラもセイラも無表情にアルバを見つめた。セイラが口を開いた。 「殺したければ殺せばいいわ。今頃この星の近辺にプロメタリア艦隊が集結してる。お姉さまが指揮する大艦隊を前にこの戦艦がどれだけ戦えるのかしら?死にたくなければこの戦艦とコスモドラグーンとかいう銃を引き渡すのね。そう、あの品のない男に言っておやりなさい」 品のない男・・・そう聞くとアルバは内心、自分を笑った。確か、ハーロックを初めて観たのはヴェルセルークと惑星ダラスのアグリモニーの店だった。ヴェルセルークがハーロックと決闘をしようとしたとき、アルバは主人に『あの品のない男』と言ったのを覚えている。艦橋に戻ったアルバは、遙か向こうに見える丘を歩いている『品のない男』とかつて呼んだ者の後ろ姿を見つめていた。もうそんな影は微塵もない、勇ましい後ろ姿を。 |
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