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第四章5
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| トール出陣 プロメタリア要塞惑星、プロメタリウム。リヴァイアサン号とトリクスター艦隊との戦い、そして巨大戦艦を撃沈の報告は中央軍事要塞を震撼させていた。プロメタリア軍指揮官、ハルヴァルドーはこの報告にただただ立ちつくし、ついには椅子の肘掛けをその手で握りつぶすほどに、怒りを覚えた。彼の親衛隊長達は体を震わせ、冷や汗をかきながら直立不動のままハルヴァルドーの様子を伺う。 「・・・メタブラディは陥落して捕虜のヒューマノイドはリヴァイアサンに・・・そう言うことか?」 「は、恐れながら、そのように」 「あの星野鉄郎という男もか!」 「は!そうであります」 マントを翻して立ち上がると給士とおぼしき者が恐る恐る運んできたブルーのワインを手にとって一気に飲み干した。 「リヴァイアサンの放った強力な閃光が、我々の・・建造したての巨大戦艦をも飲み込みこんだと・・・これが最期の通信となりました。真に恐るべき威力です・・・」 「して、その戦艦にキャプテン・ハーロックの姿は認められたのか?」 親衛隊長達は顔を見合わせて首を振っている。だが、髑髏旗を掲げた戦艦リヴァイアサンにキャプテン・ハーロックが乗っていることはもう疑いの余地はない。そして兵士の一人が通信と共に送られてきたリヴァイアサンの姿をモニターに映し出した。醜悪なまでに不気味な赤黒い艦体。艦首に突き出た巨大な6本の牙とその上にそびえる波動砲口。数々の武器各種。 「あのコスモドラグーンとかいう銃しかり、我々プロメタリア戦艦に比べたらあまりに古い形式のこんな戦艦のどこにそれほどの力があるのか我々には納得がいきません。・・・」 「・・・ヘルブラディ鉱石の威力という物なのでございましょうか?」 ハルヴァルドーはしばらくリヴァイアサンの映像を眺めながら思案を巡らしていた。ついさっきまで怒りに充ちていたその顔が、序序に笑みを浮かべ、しだいにそれはすがすがしくも見えた。 「もはや、この手にすることかなわぬのならば・・・いっそのこと・・・破壊してしまえばいいこと・・・それしか手はあるまい」 ハルヴァルドーはさっきとはうって変わって静かにつぶやき、肩をがっくりとおとし、それ以上話を続けず、黙ってその場を去っていった。やはり、ラミアが望んだように、破壊すべきだったのかと、少しばかり落ち込んでいるように見えた。 「誤算が生じたようですね・・・ハルヴァルドー」 ハルヴァルドーは地下基地研究所に立ち寄っていた。ここはトールの管理下にあるが、彼自身も兵器研究のために最近は一日の大半をここですごす。研究室の一番奥に座るトール。彼女とハルヴァルドーの確執は研究所の者達も既知の事。一帯の研究員達が去っていく。 「めずらしいな、私が居るときにお前がココに来るとは」 「最近、そなたが此処に長居をすると聞いたのでな。どのような研究をしているのか気になった。」 「見え透いた嘘を。お前は私の研究には目もくれぬくせに。どうした?私に嫌みを言われるためにわざわざ北というのか?・・・」 返す言葉を失ったハルヴァルドーにトールは高らかに笑った。 「図星・・・なのですねハルヴァルドー。ヒューマノイドの作った戦艦に負けた。ラミア様にどう報告するおつもり?黙って出軍した上、惨敗ですとでも?」 「だまれ」 「あなたがつまらぬヒューマノイドなどを信用したばっかりにカルナを失い、今度は実験用に生かしておいた奴隷どもを逃がすとは・・・」 「お前のつまらぬ研究よりはましであろう!」 ハルヴァルドーはコスモドラグーンを納めたカプセルのパネルを思い切り叩いた。入り口付近で二人のやりとりを眺めているハルヴァルドーの側近がビクッと肩を上げて驚いた。それを見たハルヴァルドーはゆっくりと深呼吸をした。トールが鼻で笑ってハルヴァルドーの顔をのぞく。 「私の研究の邪魔をするならば即刻出て行きなさい。ここは我が管理下にある。お前が手に入れたいと願っているヘルブラディとやらの追求でもしておれば良かろう!」 「ヘルブラディを手にすることはもはやかなうまい」 「なに?どういうことだ!」 トールの表情が一転し、ハルヴァルドーの顔をさらにのぞき込んだ。 「ヘルブラディはもはやキャプテン・ハーロックの戦艦へと姿を変えた。そのエネルギーの中枢さえも、あの戦艦の心臓となっているのだ。トール、欲しければお前が自力で取りに行けばいい・・・。カルナの敵討ちも出来るだろう」 「なに?」 「ヘルブラディを手に入れれば・・・強大な力をその手に掴むことになる。恐らくラミア様も及ばぬような・・・・。この世を脅威に陥れるような。それがお前の望み。このハルヴァルドーが知らぬとでも?」 トールは激しくハルヴァルドーを睨み、胸ぐらを掴んで自分の方に引き寄せた。 「貴様・・・・!」 「私は宇宙海賊というものが恐ろしいのだよ。いや、ヒューマノイドそのものさえも恐れる」 さもすがるような声でそう言うと、胸ぐらを掴んだトールの手をはぎ取って突き飛ばした。よろけたトールはさらに激しく睨みをきかせながら腰元のサーベルの先をハルヴァルドーに突きつけた。 「臆病者が!貴様のような臆病者にヘルブラディを手にすることなどかなわぬな!ふん、私なら、そのヘルブラディを破壊し、破壊すると共にキャプテン・ハーロックもろとも永遠の闇を彷徨わせてやる」 言い捨ててその場を去ろうとするトール。その時ハルヴァルドーの目配せで彼の側近が出入り口で待ったをかけた。 「どけ、無礼者!」 「無礼者はどっちだ?後で話がある。私の館へくるがいい」 トールは側近にサーベルの一撃を加えようとしたが、その瞬間、ハルヴァルドーに背後から腕を捕まれた。彼の力は異様に強く、感覚を失った彼女の手からサーベルが落ちた。ほんの一瞬の出来事。その後、腕を押さえながらハルヴァルドーを睨むと小走りにトールは去っていった。 プロメタリアにそびえる塔の上部、凄まじく湧いては消える火柱を挙げるラミアの懐に取り付けられたカプセルの中にハルヴァルドーはいた。 「その海賊とやらがヘルブラディの封印をとき、それを戦艦に・・・?」 「は、現在大マゼランからアンドロメダ方面へと向かっている可能性が」 「・・・こちらに?」 ラミアのエネルギーは一段と燃え上がり、カプセルにまとわりついた。 「恐れながら、メタブラディの地下水道に投獄しておりましたヒューマノイド達はこちらの隙をついて海賊の戦艦に乗り込み脱出。取り急ぎ出軍した戦艦も木っ端微塵に破れました。」 「・・・・トールがあの戦士の銃とやらの秘密を聞き出すために生かしておいたヒューマノイドの事か」 「・・・・」 ハルヴァルドーは何も言わなかった。確かにトールは星野鉄郎からコスモドラグーンの秘密を聞き出すためにヒューマノイド達を利用しようとしていたが、それ以上にハルヴァルドーがヒューマノイドの生態を知るために殺戮を回避しようとしていたのも確かだ。だが、この場は自分の非を明言する事は避けたかった。ここで非を認めればラミアは間違いなくトールに肩入れするだろう。それほどまでに、この数多く存在するプロメノイドの内、たった7人となってしまった『雌』を溺愛している。トールはラミアを闇に葬り、プロメタリアを自らの手中に収めようとしている。しかし、それはハルヴァルドーの憶測の域を超えない。ただ、ハルヴァルドーは・・・ラミアをそして今後繁栄を迎えるであろうプロメノイドの未来のために、正当な形でラミアからトールを引き離したいと考えていた。 「トールの話では、そなたの命令でヒューマノイドの生態を研究していたらしいが・・・それが徒となって軍の強化に落ち度が生じたではあるまいか?なぜ皆殺しにしなかった」 「し、しかしながら、我々プロメノイドはヒューマノイドの生態を知る必要があったのです。どうかお怒りをお鎮め下さい」 ハルヴァルドーは萎縮した。 「そなた・・・この私を破滅させるつもりなのか!・・・プロメノイドの母であるこの私を」 ラミアの炎はやがてカプセルにまとわりつきながら、激しい音を立ててハルヴァルドーを威嚇しているようだった。 「いいえ、ラミア様・・・決してそのようなことはありません。ヒューマノイドに立ち向かうためには敵のことを良く知らねばならぬ。そう考えたからです。もはや新たなる強固な生命を生み出すには時間が無さすぎます。敵はそこまで来ているのです」 プロメタリア唯一の生殖能力を持つといわれる『雄』ハルヴァルドー。モノ・プロメノイドの父。ラミアの中でハルヴァルドーは彼のエネルギーのほとんどを使ってラミアと共に新しい『働き蜂』モノ・プロメノイドを作る。それが真のプロメノイドの正体。ハルヴァルドーは分かっていた。自分の身体にはもう完全なるモノ・プロメノイドを作るだけのエネルギーが底をつこうとしている事を・・・。故に、彼はヒューマノイドの生殖能力と魂、そして精神をプロメノイドに与えたいと考えていた。だが、それをラミアに告げることは、創造主である彼女の存在を否定することになる。ハルヴァルドーにとって、今はまだ、ラミアの怒りを買うわけにはいかなかった。 ハルヴァルドーは自室に向かっていた。側近が彼の部屋のドアで待っていた。 「トール様が妹君をお連れになり、お部屋にてお帰りをお待ちです。ココでお待ちになるようお止めしたのですが」 「私が呼んだのだ。気にすることは無い」 臆することなくハルヴァルドーは自室へ入っていった。トールを中心にソファに守護乙女達が座り、ハルヴァルドーを見つめていた。一際輝きを放つトールが立ち上がり、ハルヴァルドーに向かったが、彼はそれをかわして足を進めると側近に甲冑を外させた。甲冑の中はシンプルな麻のブラウス。両手の籠手を側近が恭しく外すと、両手親指から中指までは籠手を外しても尚甲冑の様なリングがはめられ、それはカラスのくちばしの如く長い金属質の爪を持つ。軽くその爪先を左手で撫でると、ようやくトールの方を向いた。 「私に目に物見せると言っていたな。・・・よかろう、そなたに我が艦隊の指揮をまかせる。残りのコスモドラグーンは戦艦リヴァイアサンにあると睨んだが・・・どうだ、行きたいのだろう?」 「何?」 「戦艦リヴァイアサンにはヘルブラディ、そしてコスモドラグーンがあると言ったのだ。所詮敵はヒューマノイドの雄ばかり。守護乙女の美しさで敵を油断させるという上等手段をそなたは持っている・・どうかな?」 トールはつかつかとハルヴァルドーに歩み寄り、例によって彼の胸ぐらを掴んだ。ブラウスのなかのたくましい胸が露わになるが、トールはたじろぎもせずハルヴァルドーの顔を睨んだ。 「貴様・・・何をたくらんでいる?」 「私はこのプロメタリアを新たなる楽園にしたいと思っている。その為ならば我が軍をお前に与えても良いと思ったのだ。」 トールは胸ぐらを掴んだその手を外すと静かに笑った。 「なるほど、私の力が必要だと。そう申すのか!ならば跪け!」 ハルヴァルドーは側近が止めようとするのを制し、そしてトールの前に跪き、彼女の手の甲に口づけた。甲冑を取り去った彼の素顔がやさしくトールにほほえみかける。思いも寄らないハルヴァルドーの行動にトールは言葉を失った。 「ラーメタル、奴らは必ずあそこに現れる・・・手段はどうであれ、ヘルブラディを破壊し、あの海賊を葬れば、世の天下はプロメタリアの物。さすれば私は永遠の忠誠をそなたに誓ってもいい・・・どうだ?」 「・・・やけに素直だな。気味が悪い・・・やはり何か考えておるのだろう、ハルヴァルドー」 彼は立ち上がると窓辺へ向かい、そこからプロメタリウムの宝石のような輝きを眺めながら呟いた。 「べつに・・・。この美しい輝きのごとく、お前が美しいと言っただけ・・・。そしてこのきらめきはお前の野望にはかなうまい・・・」 トールは身震いしながら妹たちを連れてその場を去った。彼女の瞳は野望の炎を燃え上がらせている。 翌朝、彼女は1000隻の艦隊を引きつれ、プロメタリウムを後にした。止まらない笑いと野望と共に・・・。 守護乙女達を乗せた艦隊を見送るハルヴァルドー・・・。ハルヴァルドーは何も言わなかったが、現状動かせる艦隊はトールに与えた1000隻が最後。あとはプロメリウム内の戦闘装備しかない。 「もし・・・万が一彼女らがヘルブラディとコスモドラグーンを手中に収めるようなことが起きれば・・・いや・・・そんなことはない。もはや私の夢は破れるも同然。多少の覚悟はしておかねばならぬな」 「閣下・・・?」 「気にするな。プロメタリアの武装強化を進めよ。何があろうと、ここは死守せねば。たとえ何が起ころうと・・・・」 |
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