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第四章4
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| 戦闘後の一時 医務室ではドクターとアグリモニーを中心にその他の乗組員達が収容した人々の手当や治療に精を出していた。艦橋にはハーロック、トチロー、そしてホセがトチローの連れてきた人とおぼしき者を取り囲んで困り果てた表情をしている。 「いやぁ〜助かりました。ホントにもう。攻撃を受けたときはどうなるかと思いまして・・・ハイ。墜落する中で鉄郎さんが私の制服を無理やり脱がしてカプセルに、ハイ。私これでも透明な身体でして、服を脱いだら誰にも気づかれないからと・・・ところが、墜落の衝撃でタイマーが壊れましてハイ。私めはずっとカプセルの中で眠りについてしまったという訳でありまして。しかし!みなさんのおかげで私はこうしてまた元の姿に戻れ・・・しかも999は無事。鉄郎さんも・・・そしてメタブラディにいた方々も無事で・・・私は何と言ってこの気持ちを表現したらいいのでしょうかぁぁぁぁあ〜」 銀河鉄道の制服を着た小太りの男は噴水の様な涙を流しながら大声で泣き出した。その涙につられてホセがその者の背中をさすりながら同じように泣いた。絶句のハーロックにトチローが話した。 「あぁ〜こいつ、銀河鉄道999の車掌だよ。話には聞いていたんだが本当に透明の身体だった」 ハーロックは力無い苦笑を浮かべながら、ついでにため息をついた。こういった三枚目顔はトチローの前でしか見せないのだが。 「まぁ・・・銀河鉄道の修理が済み次第戻って貰うとして・・・とりあえずしばらくは船に乗っていてかまわん。ホセともなんだか気が合いそうだしな。おそらくドクター・雨森とも気が合うだろうし」 「と、と、とんでもありません。私は即刻999に戻らなければ職務怠慢で首になってしまいます!」 「あのなぁ、車掌。999は修理しないと動かない。動かないということはあんたが戻っても意味無いの。第一あんたが修理できるわけないだろ〜が。」 「ああああああ、私は出来ません。これでも機械のことは全くおんちでして・・・」 「だったらゆっくりしてってくれ。銀河鉄道要塞は遙か彼方だしな。」 車掌はトチローの言葉にまた大粒の涙を流した。 「ありがとうございます!!!!」 車掌とミーくんを抱いたホセは「よかったよかった」を連発しながら涙を流していた。 一通りの作業を終えた医務室では治療に携わったメンバーが集中治療室の上部ガラス窓から下を眺めていた。 集中治療室には栄養失調の酷かった男女数名、その中に鉄郎も入っている。メタノイド達は別室で怪我の治療を受け、食事が出来る者は食堂に向かっていた。 「やれやれ、ひとまずここで一区切りだな。みんな、よ〜働いてくれた。助かった」 「そうね。いろいろと大変だったけど、それぞれがそれぞれの任務を果たせて良かったわ」 ドクターとアグリモニーの隣にはアルバ、広、ラ・フロリーナと機関部の山賊達もいた。 「これからはほとんどが機械で様子を見るが、時々は見に来てやってくれ。」 「私とラ・フロリーナは交代で巡回するわ」 「いや、アグリモニー。お前さんは安め。怪我もしておったし。な?」 ドクターが少し厳しげな表情でアグリモニーを見上げた。それもその筈。彼女は具合が悪くなったときに手術を受けていた。しかしそれはドクターとトチロー以外は知らない事だ。 「そうね・・・そうさせて貰おうかしらね・・・。それはそうと、アルバ、あなた戦闘後の身体検査まだだったわね」 「戦闘後の身体検査?何ですかそれ」 ドクターが語気強く言った。 「身体検査だって言ってる。パイロットの身体検査って言ったらいろいろだ」 広がぶっと噴いた。可哀想に。パイロットだったばかりにこんな事になるとは・・・広はそう思っただろう。 「そんなのいいですよ。僕は至って元気ですから。まだ若いですしね」 腕を頭の後ろで組んで偉ぶったが、ドクターの目配せで広がアルバの腕を掴んで検査室に連れて行こうとする。 「な、何するんですか。大丈夫ですって。僕の歯はとても丈夫で虫歯だって全くないし、トチローさんに負けないくらい固い物をかじれますよ!」 「あぁ歯も大事だが、もっと下だ」 「ああ、直腸検査の事ね?」 ラ・フロリーナが広の言葉を聞いてやっと状況を理解してほぼ大声で、何の恥ずかしげもなく答えた。彼女の色気の無さは酒を飲んだとき以外にも随所に見られる。そして慌てるアルバ。 「ちょ、直腸?な、なんでそんなことまで!バルザックじゃそんなことしませんでしたよ!」 「でも・・・パイロットはいろいろな所に無理な力が入るからね。きちんと調べておいた方が良いんじゃない?残念だわ、私が診てあげたいところだけど・・・こういうのっていたいけな乙女がする事じゃないものね」 ラ・フロリーナがそう言いながらアルバの背中を押した。 「パ、パイロットならキャプテンだってそうじゃないですか何で僕だけ!」 「戦闘機に乗ったのはあなただけでしょ?」 アグリモニーがアルバの耳元でそうささやくと、全身の力が抜けたらしい。広にずるずる引きずられていく。 「ほれ!男ならビシッとせんか。情けないやっちゃな」 ドクターもその後についた。 「なんか可哀想。知ってたらリヴァイアサンに乗らなかったかしら?」 女二人の笑い声が医務室の外にまで聞こえていた。 数時間後、銀河をゆっくりと航行するリヴァイアサンの酒場ではさらなる大爆笑が沸き起こっていた。 「みなさん笑い事じゃないですよ!僕はショックです。こんな酷い目にあうと思わなかった」 「軍人のくせにヤロウにケツ見られたくらいでしょぼくれるな!」 「じゃぁトチローさんはあるんですか!」 「あるある。刑務所みてぇな所に放り込まれたときだったっけな。酷いモンだった。思い出すだけで吐き気がすらぁ」 今日の戦闘に関わった男達が杯を交わす酒場。珍しくそこには大爆笑するハーロックの姿もあった。 「キャプテン笑いすぎです!広さんも止めてください!もう、みんなで僕の事酒の肴にするなんて!」 どうやらツボにはまったのか、目に涙を浮かべながら肩を振るわせ、腹を抱えているハーロック。その向こうでもっと笑わそうと広が検査中のアルバの一部始終を語っていた。 「すまん、本当にすまん。だがな、もう当分は無いから安心しろ。もっとも長距離戦に及んだら別だがな」 「そうそう。これからはソレを肝に銘じてしっかり戦えよ!」 広はアルバの頭をくしゃくしゃになで回した。酔っぱらった彼のアルバに対する愛情表現と言ったところか。誰もが自分より歳のはなられたアルバのことをかわいい弟だと思っているのだろう。彼を笑った者達はそれでも温かい目で彼の今日の活躍をほめている。その証拠に、ハーロックがアルバのグラスに彼の愛酒レッドバーボンを注いだ。 トチローも上機嫌だった。これから60時間は敵が現れないだろうとレーダーで確認済みだが、その先はどうなるか分からない不安はある。だが、初戦でこれほど段取りよく進むことが出来たことを今はとにかく安堵した。そして、いつのまにか気の合う仲間達が増えたことに喜びを覚えた。 就寝時間が過ぎて、誰もが自室で睡眠をとっている時、ハーロックはトチローと艦橋で話し合っていた。 「いろいろあったな〜。実に充実した一日であった」 「巨大戦艦のでかさには正直驚いた。プロメタリアが急速に発展しているとはいえ、あれだけの大群と巨大戦艦を作る技術を持っているとはな」 「うむ。俺もさすがにショックだったよ。もっとも、急速に造船したせいか、すいぶんもろかったがな」 戦闘中は狭くも見えただだっ広い大艦橋の中、ハーロックもトチローも腕を組んで床にあぐらをかいていた。 「ヘルブラディ砲の威力をお前は予測していたのか?」 「まっさか。全くの未知だったよ。あれほど強力なものだとは思わなかった・・・。ありゃ制御が必要だな。あんなにひどい反動が起きるんだ、中に乗っている俺達の身が持たん。エネルギーの充填量を調節し間違えたら艦がへし折れるかもしれん。現に装甲板にはでかい亀裂が入ったし、機関部の連中もひからびるかと思ったって言っていた・・・・エネルギーの充填を200%まで持たせていたら、一巻の終わりだったかもなぁ」 「俺達はとんでもない物を背負い込んだわけだな。使う側の気持ち一つでどうにでも破壊力をコントロール出来るなら、世の中を意のままに操ろうとする連中が色めき立つのも無理はない。そんなものをなぜマヌエラは再度封印しようとしなかったんだ」 ハーロックは久しぶりにマヌエラの名を口にした。あれから心の痛みが癒えたのだろうとトチローは思った。 「姉妹二人の力無くしては封印できないとしたら?」 「じゃあ親父もおふくろも、封印を不可能にさせた張本人というわけか」 「そんな、偉大な親を悪く言うのはよせよ。女の愛は深い。それだけ深かったっつー事じゃないのか?」 「わからん。この世の滅亡と引き替えに俺を生んだようなモンだろうが。納得がいくか」 ついに床にごろ寝をしたハーロック。トチローの前でしか見せない怠惰な姿だ。 「逆だろ。この世の均衡の為にお前を生んだんだ。わからんやっちゃな」 「・・・・荷が重すぎる」 「またそうやっていじける!俺達が気ままに旅することで避けられない事が次々と起きてるんだっつーのに」 ごろ寝をしているハーロックはついには大の字になってあくびをしだした上、頭をぼりぼり。 「かっこわりーなもう。まぁ変な使命感に燃えてるよりは、のんきなお前の方が俺は安心だ」 トチローはニッカリ笑ってハーロックの隣に大の字になった。地球人レベルで考えれば、トチローよりずっと年下の筈のハーロックは惑星ヘレスを発ち、リヴァイアサンの艦橋に鎮座するようになって以来、そんな言葉微塵も感じられないほどに成長した。むしろ今ではトチローより年上に見える程だ。だが、二人の友情は決して変わることはない。二人はまるで惑星ヘレスでの様に、並んで夜空を見ているかのように、天井のパネルに映る銀河を眺めていた。平穏な時が流れる。 「おい、鼻くそほじるなよ」 「お前こそケツを掻くな」 アルバが自室に帰る道すがら、医務室に顔を出した。そこにはまだアグリモニーがいて集中治療室を見つめていた。アルバが入ってきたのに気づいて、優しく微笑むアグリモニー。この微笑みは、リヴァイアサンの乗組員には温かいミルクようなモノだと誰もが思う。 「まだ起きてたんですか。安めって言われてたのに」 「そうね。でも久しぶりに戦ったせいか、気持ちが高揚しちゃって。お酒飲んできたの?」 「ええ、キャプテンに注いでいただきました」 アグリモニーはハーロックが滅多に人のグラスに酒を注がない事をアルバに話し、「誇りに思いなさい」とアルバの肩を叩いた。それを聞いてなお嬉しそうな顔のアルバ。 「彼に惚れた?」 「え?・・・ま、まさか」 「男が男に惚れることはよくある事よ。そんなに照れる事じゃないわ」 バルザック人は地球人よりずっとストレートで単純。惚れる=恋愛を意味するため、アルバはとまどっていた。 「アグリモニーさんこそ・・・どうなんですか」 「私?私と彼の事を言っているの?勘違いしないでね。二人の関係に深い意味なんてないわ」 「そんな風には見えなかったけど・・・」 不服そうな面もちのアルバ。 「複雑だな。僕には分かりません」 「きっと私が本気で彼に惚れたら、彼は私を殺すでしょうね。それほど私は彼のことを知りすぎているから」 「殺すだなんて。キャプテンはアグリモニーさんを憎いんですか?」 「かもね。そして私は彼に憎まれていたいのかも。憎くなかったら私たちの関係はおしまい。いいの、貴方が考える必要の無いことよ」 アルバはさらに複雑すぎて眉間にしわを寄せたままうつむいてしまった。アルバは愛情と憎しみが常に背中合わせだと言うことを知らない。 「キャプテンを知りすぎることはいけない事?じゃあトチローさんはどうなるんです?」 「彼にとって愛情と友情は意味が全く違うのよ。彼は誰かの愛情に包まれて生きることは望んでいない・・・少なくとも今はね。そのくせ彼は自分に人を惹きつける力があることを分かっていない」 アルバの横のアグリモニーはとても寂しそうな顔になっていた。 「本当に彼に惚れたんなら、その気持ち、誠実でいることに使いなさい。間違っても彼の意にそぐわない事はしないで。酷い目にあうわよ」 彼女はアルバにそう言い聞かせていたが、本当は過去の自分に言い聞かせていた。もう取り返しのつかない過去に。 ホセは活躍した山賊達にねぎらいの酒を注ぎながらご機嫌で歌を聴かせていた。山賊達には聞いたことのない歌で、始まったときは困惑の表情を浮かべていたが、だんだん彼の歌に引き込まれて行った。 “夢ばかり見て・・・己の中の光・・・お前の両目はいつも遠くをみている・・・今度会ったら言ってやろう・・・なんて帰りが遅いんだと・・・夢見がちな瞳・・・己の中の光・・・お前の心はいつも遠くに飛んでいく・・・次にあったらしかってやろう・・・なんて帰りが遅いんだと・・・かわいい息子よお前はいつも・・・遠くを見ている・・・それは希望の光” |
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