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第四章3
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| ヘルブラディ砲 山賊達は久しぶりの陸上戦にやる気満々でプロメタリア兵を次々と打ちのめしていた。アグリモニーの主要武器とも言えるボウガンは弾頭のついた矢を一度に5本自動充填し、見事なコントロールでミスすることなく遠方の敵の頭を射抜いた。彼らは下水道での爆発を察し、それに向かって四方八方から降り注ぐレーザーの中をぬって走った。巨大ビルの入り口を抜けた、元々はフロントだった辺りも、その下のラウンジやレストランも全くその影を失い、ライトの無い内部は暗闇の廃墟と化している。アグリモニーの放った閃光弾が明るい間だけがマスの進められる時間。へたなところに身を隠せば、闇でも目の利くプロメノイドにやられてしまうために、高度な戦法が必要とされる。 [こちらアグリモニー。ビル上部にヒューマノイドの形跡なし。これより地下下水道に向かうわ。さっき地中で強力な爆発が起きたようだけど、そちらで確認は?どうぞ] 「こちら広。爆発は確認しています。規模は小さく、プロメノイドのモノではないと思われます。さらにヒューマノイドが下水道内を移動開始。彼らは恐らく疲労困憊しているに違いありません。レーダーの反応は微弱で、さらに移動速度も非常に遅いです。どうぞ」 [こちらの攻撃を悟って、きっと脱出を始めたのね。速攻で向かうわ。以上!] アグリモニーの通信が切れたと同時にハーロックがエンジェルから戻ってきたアルバに指示を出した。 「アルバ、第一副砲発射用意。目標巨大ビル上部。エネルギーはビルが自発的に陥落する程度に抑えろ」 「そ、それでは中のアグリモニーさん達が脱出する時間が・・・」 「大丈夫だ。あいつならそれくらい回避できる。・・・撃て!」 副砲が火を噴く。さらに大気圏から突入してきたトリクスターの戦艦がリヴァイアサンの上部に現れた。かなりの至近距離で主砲をくらいリヴァイアサンは大きく揺れる。しかしながら、リヴァイアサンからも主砲が放たれ、トリクスター艦のど真ん中を打ち抜き、バランスを崩してメタブラディ地表へと墜落してゆく。通信機に向かってハーロックが呟いた。 「すまん、トチロー。かなりの振動がそっちに伝わるだろうが、ふんばってくれ」 トリクスター艦は彼の情けない悲鳴と共にメタブラディの酸化鉄の中へと火を噴いて墜落した。爆風と振動で一帯の溶岩をはぎ取り、酸化鉄の暴風を巻き起こした。うまっていた999号が大地のゆらぎで外に放り出される。何本かの客車を連ねたまま数回横転して止まった。 「いててててて。なんだよハーロックのやつ・・・もう。や〜れやれ、オイ、機関車・・・このレバーを倒したらちゃんと動いてくれよ。俺の勘ならこれで動くはずだからな。酸化鉄の浸食が内部に及んでてどこまで馬力が出るか分からんが・・・」 トチローは満身の力を込めてレバーを引いた。ぶ〜んという音と共に動力エネルギー充填が始まり、序序に機関室内部の電工パネルが灯り出す・・・が、エネルギー充填が完了しきらないうちに音がフェードアウトし、電工パネルが一つまた一つと消え始めた。 「なろ!この根性無し!おい、動けコラ!こんなところで錆ちまってもいいのかてめぇ!動け〜!このポンコツ!」 トチローはめったやたらとそこら中を蹴り、罵声を飛ばした。頭脳のある機械への上等手段その1である。 「・・・ポンコツ・・・私ハ・・・機関車C62-48・・・認識バンゴウO999F999SO999-9ノ90ジョウ。ギンガテツドウ本線ヲ走ル・・・ギンガテツドウ・・・999・・・・ソレヲ・・・ポンコツ。オマエノヨウナ者ニ、ポンコツヨバワリサレルオボエハ・・・ナイ」 弱々しいが、機関車のコンピューターがしゃべった。 「ちゃんと話が出きるんじゃねぇか。せっかく直してやったんだから礼ぐらい言え」 「直ス・・・ワタシハ・・・故障シタノカ・・・記憶ガナイ。ココハ・・・惑星メタブラディ。・・・ダガ、銀河軌道ガショウメツシテイル・・・オソロシイ。ナニガオコッタノダロウカ・・・」 どうやら999号には墜落したときの記憶が無いらしい。この汽車がココに到着したときに凄まじい攻撃を受けたのだとトチローは理解した。軽く機関室の内部を撫でてからトチローはハーロックに通信を入れた。 [オーイ。こちらトチロー。999が目を覚ましたぞ。ちょっとチップをいじくってやったら目を覚ましたが、錆が酷くて自力で動くのは無理みたいだ。引き上げられるか?どうぞ] 「分かった。艦底に引き寄せる。大気圏を出るまでそのままそこで待機していてくれ」 [あいよ。・・・ついでだから中を詮索してみる] 「そうだな・・・気をつけろよ」 鉄郎達は間もなく広い下水道から上に向かう出口らしき場所にたどり着いていた。そこに来るまでに数人の仲間が力尽き、また弾に倒れていった。プロメタリア兵が彼らを閉じこめるために爆破し、そこここは道なき道、階段すらまともにない、上部へと抜けるのは想像を絶する高さがあった。生き残ったいるのはもう30名程。鉄郎は壁という壁を叩いて回った、その時。 「そこに誰かいるの?・・・答えて。あなた達は幽閉されていたヒューマノイドね」 壁の向こうで拡声装置を使って呼びかけるアグリモニーの声がする。彼女のレーダーには壁を挟んで多数の生命反応を確認している。 「そっちこそ誰だ!」 銃を持っている者は一斉に壁の声の聞こえる辺りに銃口を向けている。他の者は皆肩を寄せ合い、不安げな表情でそれを見つめた。鉄郎はゆっくり壁に耳を寄せ、向こうの様子をうかがった。すぐ前に数人の存在を感じる。 「私はあなた方を助けに来た。ヒューマノイドならば名を名乗りなさい」 鉄郎は不安だった。この声に聞き覚えがあるが思い出せない。もし相手がプロメノイドならばと思えば容易に声を挙げることが出来なかった。彼らに向こうの存在が何者かを確認するすべはない。 「そっちこそ、味方なら名を名乗れ!」 誰かが大声で壁に叫んだ。 「私は宇宙海賊キャプテン・ハーロックの命を受けてあなた方を助けに来た。私の名はアグリモニー。マゼランの賞金稼ぎだったアグリモニー。この名に聞き覚えのある者はいるか」 生き残った者達は口々に安堵の声を挙げた。キャプテン・ハーロック・・・ここにいる誰もが知っている名だ。そして、マゼランに名をはせた女賞金稼ぎアグリモニーの声と名を聞いて、彼女の言っているキャプテン・ハーロックがニセモノでないことが確認できた。 「ア、アグリモニー!、アグリモニー!本当に君なのか!」 鉄郎がようやく口を開いた。アグリモニーは聞こえてきた声が誰かを知っている。 「鉄郎・・・鉄郎!貴方なのね。そこをどきなさい!壁を爆破します」 鉄郎、そして銃を向けていた者達はいっせいに後ろに退避した。バズーカによって壁は木っ端微塵に吹き飛び、煙の中から武装したアグリモニーが走り込んできた。鉄郎と目が合う。彼女の知っている鉄郎とは比べ者にならないほど痩せこけている。一瞬悲しい表情を浮かべながらもアグリモニーは鉄郎に指示した。 「鉄郎・・・挨拶は後。ハーロックが上で待っている。間もなくこのビルは倒壊するわ。急ぎなさい!」 鉄郎は大きく頷いた。山賊達が生き残りの男女を先導する。その中に数人のメタノイドの姿を見つけて一瞬凍り付いた。メタノイド達も目があって脚をすくませた。山賊達の目は怒りを露わにしている。彼らは忘れるはずもない。プロメタリアの支配下にあったメタノイド兵によって苦渋を舐めさせられ、そして首領を失ったことを。だが、目の前で怯える彼らに何の罪もない。 「いい、あなた達が真にリヴァイアサンの乗組員なら、苦しみ抜いた者の気持ちが分かるのなら、無用の憎悪をその者達に向けるのは止めなさい。だれも・・・必死に生きようとする者の自由を奪う権利はない」 アグリモニーが彼らにそう語ると、彼らはメタノイド達の手をとってヒューマノイドの中へと連れて行った。そして彼らも共にリヴァイアサンを目指して脱出した。 「収容しろ」 ハーロックは艦橋からアグリモニー達が倒壊するビルの隙間から脱出してくるのを確認した。 「後衛の艦隊が急速接近。あと40分ほどで交戦圏内に突入します」 広が叫んだ。そこにラ・フロリーナが続ける。 「後衛艦隊は数約200。ですが旗艦はとてつもなく巨大な戦艦です」 「収容を急げ!即刻大気圏を離脱する」 ラ・フロリーナ、広、アルバもがリヴァイアサンの艦底へと走り、次々と乗り込む人々を艦内へと運んだ。衰弱した体で逃げ回ってきただけに、力なく倒れ込む者達ばかりだ。ドクターとアグリモニーも必死で医務室へと彼らを収容し、手当を始めている。その時、強力なエネルギー砲が大気圏外からメタブラディの大地へと降り注いだ。 「何!」 [ハーロック、いかん。こりゃ次元波動砲の一種だ。まともに食らうとヤバイ・・・] 999号の客車からトチローはエネルギー砲を確認してハーロックに通信を入れた。すぐ後にラ・フロリーナ、広、アルバが艦橋に走り込んできた。 「艦内へ収容完了!」 ハーロックは蛇輪を握った。 「一気に大気圏を突破する。ラ・フロリーナ、敵エネルギー砲の射出位置チェックしろ」 「了解!」 「急速浮上!離脱角度40度!」 ホセがレバーを下げて叫んだ 「大気圏航行エンジン点火!第一加速、機関出力70%!」 リヴァイアサン号は急速浮上し大気圏に突入していく。その振動で巨大ホテルは間然に崩壊していった。大気圏を離脱した瞬間、艦橋にいる誰もが息をのんだ。目前に姿を現した巨大戦艦は巨大戦艦と言うよりは宇宙要塞といっていいほど巨大な物だった。飛行船の様な形をしており、艦首中央砲門はリヴァイアサン号を捕らえている。戦艦を取り囲んでいた親衛艦が攻撃を開始した。巨大戦艦の中央砲門を避けようとハーロックは仁王立ちで蛇輪を操作するが、親衛艦の攻撃によって中央砲門の方へと押し戻される。戦艦はエネルギーを充填しているようだった。 「ばかな・・・こちらにはコスモドラグーンが3丁あるというのに消滅させるつもりなんでしょうか?」 「集められないのなら消滅させる・・・それだけのことだ・・・くそ、999は無事か!」 ハーロックの額から汗がしたたり落ちている。体勢を整えるのでやっとなのだ。 「999はバリアで守られて無事ですが、艦の損傷が30%を突破します!バリアもいつまで持つか・・・」 その時、トチローがハーロックに再度通信を入れた。 [・・・いよいよリヴァイアサンの真の力を試すときが来たようだ] 「真の力?」 [邪悪な者達が望み、手中に収めようとしたヘルブラディの力・・・。恐ろしい力だよハーロック!さぁ艦首波動砲口を開け。リヴァイアサンのエネルギーを凝縮して射出するヘルブラディ砲だ] 「ヘルブラディ・・・砲?」 [通常の波動砲は艦のエネルギーをほとんど使い果たすために充填にも時間がかかるが、リヴァイアサンのエネルギーは動力エネルギーとは別で稼動している。リヴァイアサン自身のエネルギー圧縮だけで済む。] トチローが通信機を使って伝えてくるが、使ったこともない武器をココで使うのは不安だった。 「しかし、まだ演習もしていない武器を使うわけにはいかない。どれほどの威力があるかも分からん武器を使うことは艦にダメージを与えるかもしれない」 [ヘルブラディは無限の破壊エネルギーを持った鉱石だ。リヴァイアサンの戦闘エネルギーを縮小することなく痛恨の一撃を加えられるはずだ。だが、もう一方でリヴァイアサンはこの船そのものでもあるんだ。信じようハーロック、船そのものにダメージを与えることなく敵を撃破することを。信じるんだ・・・俺達の船を。さあ、ハーロック!お前自身の勘を信じろ!] 閉じていたハーロックの瞳が開かれた。 「ホセ!艦首波動砲口オープン。セーフティーロック解除」 「了解!」 「アルバ、中央の赤いボタンを押せ」 「は、はい!」 慌ててアルバが言われたとおりにすると自動的に真新しい照準機と銃のような形のコントローラーが出てきた。 [おい、アルバ。本来なら俺がやりたいところだが、今日の仕事に免じてお前に譲ってやる。うろたえた気持ちで引き金を引いたら、リヴァイアサンは素直にエネルギーを射出してくれんぞ!分かったな!] 「はい、分かりました」 「アルバ。落ち着いて撃て」 「ヘルブラディ・エネルギー機関接続完了。エネルギー充填50%・・・80%・・・100%・・・」 ホセがエネルギーカウンターの充填度を読みとった。それに呼応するように中枢コンピュータールームの青い炎が徐々に大きくなり始め、コンピュータールームの電工パネルが激しく点滅を繰り返す。 リヴァイアサンは艦隊を赤く発光させながら巨大戦艦に向かって進撃を始めた。主砲、副砲、その他の武器は出力の低下することなく悠然と攻撃を続けている。しかし機関部は異常な熱が渦巻き、中にいる者達は立っているのも辛いようだった。機関コントロールパネルが激しく警告灯を点滅させ、危険を知らせていた。 「エネルギー充填150%!・・・いかん・・もう機関部がもたん!速く撃つんじゃ!」 ハーロックの額を汗が伝う・・・・。機関エネルギー充填装置は最大800%まで次元エネルギーを蓄えることができる・・・だが、ヘルブラディエネルギーは200%も充填したら艦自体が爆発しかねない・・・そう彼は感じ始めていた。 「これ以上は危険だ・・・!アルバ!ヘルブラディ砲、発射10秒前!」 ハーロックのその言葉の後、アルバが続けた。彼の額を汗が伝う。 「9、8、7、6、5、4、3、2、1、・・・」 「発射!」 その瞬間、真っ赤な閃光が巨大戦艦に向けて発射された。リヴァイアサンの艦内の振動は大揺れに揺れ、艦内の乗組員達はあちこちに投げ出される。ハーロック自身も操舵輪を乗り越えて艦橋の前方へとふっとんだ。同様に投げ出されていた広達がハーロックを抱き起こす。艦尾と艦底の装甲板がいくつか剥がれ、いくつかは亀裂が入った。閃光が発射されもなお、リヴァイアサンが押しつぶされるような圧力を感じている。 そして、ヘルブラディ砲の射出と同時に巨大戦艦も次元波動砲を発射したが、リヴァイアサンのエネルギーに包み込まれるようにして消滅した。巨大戦艦の者達は、リヴァイアサンの艦首からやってくる天使のような顔が次第に悪魔のように豹変していく・・・そんな現象を目の当たりにしながら消滅していった。ヘルブラディ砲は周囲にある親衛艦をも見事に包み込み、激しい轟音の後、そこには何もなかったかのように静まりかえっていた。ハーロックは唖然として目前を見つめていた。 リヴァイアサンに戻れずに999号に取り残されていたトチローはリヴァイアサンのショーを見終えると、客車をぶらつきながら詮索をしていた。普段なら絶対に足を踏み入れない風呂場で大きなカプセルを見つけた。カプセルの中は何も入っていないようにみえるが、生命維持装置が動いているのが気になる。 「あ?なんだこりゃ?」 トチローがカプセルに触れようとしたとき、近くに脱ぎ捨てられた銀河鉄道の制服と帽子が落ちているのが目に入った。 |
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