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第四章2
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| 脱出の犠牲 「トリクスター司令!敵艦がミサイル艦を撃破、前衛艦隊もかなりの損傷を!」 旗艦空母の艦橋では次々に入電する悲痛な兵士達の最期の声が響いている。前衛艦隊も後わずかでやられることがトリクスターには見て取れた。ミサイル艦の後退から損傷を受け、損傷を受けていない側を前に攻撃をしているが、面積が広くなってしまう分、攻撃される範囲も広いのだ。リヴァイアサンのドラゴン・ブレイドは彼らのバリアーに簡単に穴を開け、近距離で発せられる主砲によって消え去った。 「お、お、お、おのれ・・・一度に200隻の艦隊を失うとは!このままではハルヴァルドー様に会わす顔がない・・・全砲門敵艦に集中!残りの駆逐艦は衝撃波集中砲火せよ!」 トリクスターの悲鳴にも似た声が戦艦内にこだまする。駆逐艦の衝撃波はリヴァイアサンを取り囲む。その集中砲火はリヴァイアサンの動きを鈍らせた。次々に衝突する衝撃で艦内は大揺れに揺れ、たっているのが困難極まりない。敵戦艦の主砲は身動きのとれなくなったリヴァイアサンに当たる。リヴァイアサンの有効射程距離より長いことが分かった。 「向こうの射程距離はこちらの1.5倍です。右舷に衝突。損傷率3%!・・・5%!」 「キャプテン!衝撃波砲じゃ。振動が大きすぎて減速しておる!」 「ひるむな!前進しろ!アルバに傷一つつけずに任務を終わらせるのだ!」 アルバはすでに出撃し、空母から射出された艦載機の攻撃をぬって大気圏へと突入しようとしている。前衛艦がバランスを崩して空母に当たったため共倒れとなる。リヴァイアサンの援護によってアルバは無傷でメタブラディへと突入することが可能だった。しかし妨害電波の拠点を叩かなければ、彼自身リヴァイアサンとの交信ができない。もし、その前に敵にやられても、助けすら呼ぶことはできない辛い任務であることを痛感していた。そして、アルバの後方で攻撃を受けながら身動きがとれないリヴァイアサンが心配になっていた。 (もうすぐ大気圏通過・・・敵がいませんように・・・なんてわけ無いよな・・・速く戻らないと・・・) アルバは胸に下げた白銀の階級章を握りしめた。大気圏を通過し、距離が測れないほど一面真っ赤な酸化鉄の大地が目前に広がった。その時、数機の戦闘機が後方から攻撃を仕掛けてきた。しかし、アルバの操縦は彼らのロックオンを回避し、さらにハーロックがオプションで取り付けた逆噴射ブーストで一気に彼らの後方に下がった。追尾ミサイルは撹乱され、自分の主である戦闘機を攻撃した。 「こりゃいいや!・・・・え?」 眼下に広がる酸化鉄の中に埋まる真っ黒な塊。蒸気機関車の頭部をかろうじて表に出し、あとは埋まっている。 「あれは・・・・?」 猛スピードで上空を通過したためほんの一瞬しか目に入らなかったが、間違いなく、アレは機関車だった。前部プレートに書かれた数字「C62-48」そして「999」。アルバにはそれが見えただけで充分だ。その後視線を前に戻すと一際大きなキノコ状のビルから閃光が飛んできていることに気づいた。 「アレか!」 アルバはその目をつり上げながら、猛スピードで巨大なビルに向けてエンジンを噴かした。 上空の爆撃音は地下下水道にも響く。天井から垂れる水滴の波紋が細かく揺れ、誰とも無く天井を見上げ始めた。振動で時折壁が剥がれる。地下水道に収容されている者達は巨大シャッターの前の開けた部分に集められている。開けた場所の中央から長いトンネルがあり、その向こうにシャッターはある。シャッターの向こうには数名のプロメノイド兵が銃を構えて立っているのだろう。誰もそのトンネルには近づけずに、ただ上部から聞こえる轟音と爆音に耳を傾けていた。 「いったい・・・何が起きたんだろう?」 「戦争でも起きたのか?・・・戦闘機の飛ぶ音が聞こえるぜ」 その時誰かが立ち上がった。 「誰かが俺達を助けに来たのかも知れない・・・違うか?鉄郎!」 鉄郎はよく耳を澄ませたが、聞こえてくるのは戦闘機が飛ぶ音と爆音だけ。銀河鉄道は酸化鉄の中。いったい誰がここに助けに来るだろうか?・・・・だが、鉄郎の心の中に、ひょっとしたらという気持ちが無いわけではなかった。 「まさか・・・」 「司令!メタブラディ基地の妨害電波発信塔がやられました!」 「くそ!後援艦隊はまだ到着しないのか!」 トリクスター艦隊はほぼ全滅に等しく、旗艦である彼の戦闘空母は力無く噴煙を上げながらもリヴァイアサンへの砲撃を続けていた。 「恐れながら、カリオス星基地を発進した艦隊が到着するまであと2時間ほどかかります・・・」 「・・・・致し方あるまい、メタブラディのヒューマノイドどもを処刑場へ連れ出せ!」 「は!」 その時、リヴァイアサンはアルバからの通信をキャッチしていた。 [キャプテン!聞こえますか!キャプテン!] 「アルバ!聞こえている。よく持ちこたえてくれた。ラ・フロリーナ、地表スキャンを至急開始しろ!」 「了解!」 [キャプテン、敵の基地は巨大なホテル様の建物です。戦闘機多数、兵士数は未知] 「我々も今から上陸体勢を取る。お前は大気圏ギリギリで待機しろ」 [はい・・・それと、酸化鉄の中に銀河鉄道を発見しました!確認したプレートナンバーはC62-48、広さんの言っていた999号と見て間違いありません。ほとんど酸化鉄の中に埋まっていて、先頭部のみ外に出ている状態です] 広は目を見開いてハーロックの方を向いた。ハーロックの瞳も一筋の光が走る。 「強行突破だ!」 リヴァイアサンの前方でこちらより遙かに損害状況が著しい旗艦が噴煙を上げて反転をしようとしている。 「損害状況は?」 「10%程度です。動力部への損害はありません」 「敵旗艦の損傷は激しいが、とどめを刺している程時間は無い。急速下降、出力80%、傾斜角30度」 「動翼作動!傾斜角30度!大気圏エンジン出力80%。大気圏に突入じゃ!」 ホセは声を荒げて機関部へ司令を出した。白煙を噴いているトリクスター艦隊を後目にリヴァイアサン号はメタブラディの大気圏へと突入した。大気圏内でも戦闘機の攻撃が執拗に続いている。おそらくアルバも必死に違いない。 「大気圏突破します!4時方向にコスモ・エンジェル確認!・・・キャプテン。地下下水道とおぼしき場所に多数のヒューマノイドが確認できました」 ハーロックの厳しい瞳が真っ赤な酸化鉄の大地を凝視する。まるでその向こうの地下下水道がみえているかのように、そして大地に散らばった白骨の数々さえもハッキリみえているかのように。そして静かに呟いた。 「ホセ、部下を借りるぞ」 「お、白兵戦かの?やつらの腕がなっとるじゃろう。心おきなく暴れさせてやってくれ」 その時アグリモニーが艦橋に姿を現した。待ってましたといわんばかりに彼女の身体には無数の砲弾とレーザーバーズーカ、ショットガンが抱えられている。 「そろそろ出番じゃないかと思ったんだけど。速かったかしら?」 「いや、丁度良かった。白兵戦の指揮を頼む。一刻も早く地下下水道の連中を救い出したい」 [キャプテン!僕は白兵戦の援護をします] 「いや、アルバ!・・・その前にトチローを999の機関部へ潜り込むまでの援護をしてくれ] アグリモニーはトチローを見た。艦橋にいるだれもが艦橋下に銀河鉄道の機関車を確認し、トチローならば動かせると判断した。 「俺は白兵戦はごめんだが・・・あいつの修理ならお手のもんだせ。一緒に連れてってもらうぜアグリモニー」 アグリモニーは不敵な笑みを浮かべてハーロックに目配せしてからトチローと共に艦橋を出た。彼らは艦尾艦載機射出口から救命艇を使って上陸した。すでにリヴァイアサンは地表すれすれの位置で副砲、ミサイル攻撃を始めていた。 リヴァイアサンのエンジン音は地下下水道を振るわせた。数人の男女がその恐怖からうめき声や鳴き声を上げ出す。他の者だって不安は隠せない様子だ。エンジン音の振動は酸化鉄にも激しく響いている。トチローはアグリモニーとアルバの援護によって酸化鉄の山によじ登り、999の機関部への侵入路を探っていた。彼らの上空をリヴァイアサンが停泊し、攻撃を続ける敵を迎え撃つ。 [アグリモニーさん!僕は艦橋に戻りますが・・・敵の兵士が多数一つ所に向かっている反応があります] 「トチロー!速く。敵の動きがおかしい。」 「アグリモニーさん!艦橋からの連絡だと奴ら地下水道に向かっているっていってやすぜ」 トチローはすこし焦り気味になりながら999前部をこじ開け、中に滑り込むことが出来た。アグリモニーがよじ登って中の様子を見るが真っ暗でトチローの姿が確認できない。 「トチロー!」 「いててて、あぁ〜俺は大丈夫だよ。真っ暗だが手探りでも何とかなる明るさだ。そこ、開けといてくれよ」 「分かったわ・・・私たち行くわよ」 「気をつけてな」 アグリモニー達はプロメタリア兵が基地としている巨大ホテルに向かって走り出した。 地下下水道の柵状シャッターの前に取り付けられた照明が照らされ、暗かったトンネルに激しい明かりが灯った。その明かりは下水に反射してまぶしい光が辺り一面に広がった。 「トンネルの入り口に身を潜めるんだ!」 鉄郎の一言で人々は左右に分かれてトンネルの入り口に潜んだ。これで明かりの直撃を避けられる。 「ヒューマノイドども!良く聞け!愚かな者達よ。おまえ達と同族のヒューマノイドどもが我々プロメタリアに反旗を翻したためにこれよりお前達を外に引きずり出し処刑する!」 幽閉された者達は口々に思い思いのことを呟きだした。そしてその大半が思った。彼らは我々を盾にしようとしているのだと。その時、数人のメタノイドのグループから一人、男が立ち上がった。身体のほとんどが金属製の筋繊維をむき出しにされ、腕の一部は骨までえぐられている。彼はよろよろと立ち上がってトンネルの入り口中央に立った。 「おい!何しているんだ。やられるぞ!伏せろ!」 小声で誰かがそう言った。メタノイドの男は鉄郎の顔を見て笑みを浮かべ、それからまっすぐ歩き出した。 「何処に行く!やられるぞ!おい!」 鉄郎も叫んだ。しかし男は両手を挙げてまっすぐシャッターの方へと脚を進めていく。 「誰だ!へたに近づくと撃ち殺すぞ!」 「ま、待ってくれ・・・俺はメタノイドだ。俺の話を聞いてくれ。・・・・俺は皮を剥がされて、このまま外気に触れたら死んじまう。俺はそんなのは嫌だ。死にたくないんだよ。なぁ、あんた達だってもとは俺と同じメタノイドだったんだろう?・・・頼むよ、おれもプロメノイドになりたいんだ・・・ここから出してくれよ」 取り残された者達は彼の言葉をうけて怒りの表情を浮かべる。 「貴様!裏切るのか!」 「メタノイドの根性無し!」 残っているメタノイドは皆、背を向けてうつむいていた。鉄郎が目をやると、少年のメタノイドは両耳を押さえて涙を流している。鉄郎は、その涙の意味に気づきだしていた。すがるような声でメタノイドの男はついにシャッターのすぐ手前まで近づいていた。 「気持ち悪いやつ!もとの場所に戻れ!」 「なぁ・・・頼むよ。俺もプロメノイドとして戦わせてくれよ・・・。あんなヒューマノイドと一緒になんていたくねぇ・・・」 男はあるプロメノイド兵の前まで差しかかると素早い動きでシャッターの柵から手を伸ばし、兵士一人を羽交い締めにし、兵士の持つショットガンを自らの心臓に押し当てた。 「き、貴様!何をする!離れろ!」 他の兵士がメタノイドの腕や脚を狙ったが、羽交い締めにされた兵士が叫ぶ。 「やめろ!やめろ!ヘリウム3の心臓がココで爆発したらどうなると思ってるんだ!」 羽交い締めにされた兵士以外の者達がじりじりと後ずさりし始めた。メタノイドの力は筋繊維がむき出しになっていたとしてもまだまだ強い。メタノイドの男が掴んだ腕はびくともしない。そして叫んだ。 「鉄郎!俺の身体はもうすぐ吹き飛ぶ!いいか、シャッターに穴が開いたら躊躇せずココを脱出しろ!」 「おまえは!おまえは!」 「俺は外気に触れれば死ぬ身だ・・・。俺達の自由のために!戦ってくれ!俺には、俺には、明日がそこまで来ているのがみえるぞぉぉぉぉぉぉ!」 メタノイドの心臓、ヘリウム3の爆発で強烈な爆風が下水道に吹き荒れた。トンネルの中は炎と煙が充満している。隣の顔も見えないほどの煙の中。さっきまで涙を流していたメタノイドの少年が鉄郎の手を取った。 「父は初めからこうするつもりでした。さぁ速く!今すぐココを出ましょう!外に出れば何とかなるはずです!」 呆然としている鉄郎が我に返った。立ち上がり、残った者達を先導して走り出した。爆発によってシャッターに大きな穴が開き、その向こうで数人の兵士も死んでいた。数人は彼らの銃を奪いとり、上部へ向かって走り出した。爆音によって兵士が次々の下に降りてくる。 「命ある限り走れ!生きて大地を踏みしめるまで死ぬな!」 鉄郎は叫んだ。 |
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