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第四章1
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| 初陣 リヴァイアサンはメタブラディかろうじて見える程度の位置、メタブラディの第七衛星から減速をし始めていた。相手の艦隊の規模はもちろん、武器の詳細すらはっきり分からない状態で敵中へ飛び込むのは確かに無謀なのかも知れない。しかし、それは敵プロメタリアにも同じ事だ。かつて宇宙を席巻したアルカディア号でさえも、無限と言われた戦闘能力、それに匹敵する可能性は限りなく近い。そして謎の鉱石、ヘルブラディによって建造されたとなればその武力は未知数だ。 「メタブラディの状況が分からない限り、へたに動くことは犠牲を増やすことになりかねないな。トチロー、妨害電波はどれくらいの規模だと思う?」 「さぁな。まぁ、メタブラディの大気圏はたかだか10万宇宙キロだ。それを考えると・・・せいぜいその倍から三倍ぐらいがやっとだろう」 「キャプテン。逆探知ーダーが跳ね返される位置とメタブラディのこの距離から逆算して考えると・・・表層60万宇宙キロ弱ではないかと思いますが・・・」 ハーロックもトチローもラ・フロリーナの気の利いたはからいに感心の表情をうかべた。ラ・フロリーナもずいぶんこの艦での職務が板に付いてきたといえる。 「ちなみに、プロメタリアの艦隊と思われるものが広範囲に展開されています。メタブラディを中心に両舷に広がっています。」 「規模は?」 「現状分かるのは・・・200隻程度でしょうか?まだ妨害電波の中に潜んでいるとしたら、それは確認不能です」 「広、妨害電波の発信源は分かるか?」 「電波の広がり方から言って、メタブラディの中から惑星を取り囲むように発せられてると見て間違いないでしょうね。こっちのレーダーも通さない所を見るとかなり厚いのかも。手強いですかね」 「いや、そうでもないだろう。俺なら外の小惑星を中継して外から電波を張る。その方が手間はかかるが、何かと強い守りが可能さ」 トチローが広に答えた。確かに、惑星内から電波を発している場合、その拠点を叩くのは容易だ。 ハーロックは腕を組んで艦長席に座っている。ただじっと、艦橋から遙か遠くに小さく見えるメタブラディを見つめて考えている。こちらのレーダーが補足できていると言うことは、その逆もあり得る。おそらくプロメタリアの巡洋艦はすでにリヴァイアサンの存在に気づきだしていることだろう。 「敵はそこにいる。俺は感じる。醜悪な精神をもった悪魔の笑い声が聞こえる」 ハーロックは立ち上がり、蛇輪に手をかけた。艦橋にいる全員の視線がハーロックに向く。 「お前達に戦う意志はあるか?お前達に意志が無くても戦いは訪れる。もしお前達が拒絶するのならば・・・それでも構わない。だまって見ていろ」 「いいえ。私は貴方の心のままに従います。それがこの船に乗る者の為すべき事ですもの」 「醜悪な者に立ち向かうのならば、俺だって喜んで」 広とラ・フロリーナがハーロックに向き直ってその意志を伝えた。アルバも頷いた。トチローが作り替えたチップのおかげで随分と動力にパワーが感じられる。そして、動力エネルギーと戦闘エネルギーを分けた結果がこの戦いで試される。 「ドラゴン・ブレイド、ゲートオープン」 艦首波動砲口下部、両舷に三機づつあるブレイド射出口が開き、長く巨大な刀が出てきた。まるで巨大な牙のようにそれは前方に突き出たメタルブレイド。真っ向から衝突すれば、確実にこのブレイドの餌食となる。 「ハーロック、分かってるだろうが無茶はやめろよ」 ハーロックはだまって不敵な笑みをトチローに送った。そこにアルバが付け加える。 「大丈夫ですよトチローさん。僕が知る限りプロメタリアの駆逐艦レベルの威力はたかが知れています。問題は主力戦艦です・・・僕はまだ見たことがない」 徐々にプロメタリア艦隊はリヴァイアサンを取り囲み、円を築き上げようとしているようだった。 プロメタリア前衛艦隊はメタブラディの第2、第3衛星付近をリヴァイアサンに向けて航行を始めていた。航行が進むに連れて、左右上下に分かれ、リヴァイアサンを取り囲む戦法を展開しつつある。 「トリクスター司令。前衛巡洋艦がリヴァイアサンをレーダー捕捉しました。やはり巨大です。こちらの戦艦の倍はあると思われますが」 「スクリーンに投影しろ」 トリクスターの乗る戦闘空母艦橋スクリーンに小さくリヴァイアサンを投影し、それは徐々に拡大していった。赤黒く輝く戦艦はドラゴン・ブレイドを射出したことでなお不気味な様相を呈している。 「趣味の悪い戦艦だな・・・あれにヘルブラディがあるという可能性は?」 「強い反応が出ています。というより、あの戦艦そのものがヘルブラディ!しかも・・・非常識的武装ですね。・・・おそらくこちらの様子を見ながらなのでしょう。かなりスピードを落として向かってきています。この速度なれば、あと1時間ほどで有効射程距離にはいりますが」 トリクスターは立ち上がり、各艦に司令をだした。 「戦艦ヒドラは敵艦の後方へ回れ、第14,15,16艦隊は三列で前方を固めよ。残りの艦はまんべんなく布陣し有効射程距離ギリギリで体勢を確認。輪を縮めながら・・・集中砲火で一気に葬ってやれ。ヘルブラディ鉱石の威力、この目でとくと見せてもらおうではないか」 トリクスターはメタブラディの大気圏から離れ、第二衛星と第三衛星の間で様子を見ていた。高速巡洋艦はかなりのスピードでリヴァイアサンの周囲に展開、駆逐艦がそれに続く。リヴァイアサンの前方を固めた艦隊はさらにミサイル艦と空母を前衛に出してその距離を縮めていた。 「キャプテン、リヴァイアサンの周囲を高速で艦隊が移動しています。」 ラ・フロリーナはパネルスクリーンにこの宙域の状態を投影した。 「赤がリヴァイアサン号。青く点滅しているのが現在補足した敵艦隊で、緑の点はメタブラディの衛星です。」 青い点滅はリヴァイアサンを取り囲むように布陣しているため、青い点滅に混ざってメタブラディへ向かっているリヴァイアサンの赤い点が妙に小さく見える。青い点滅は序序に楕円形の陣形を取りはじめていた。 「敵の旗艦は?」 「第二、第三惑星上に見える青い点滅のいずれかです・・・規模から言っても戦闘空母、戦艦クラスですから。しかしながら、第三惑星には長距離ミサイルを搭載している艦、それと爆撃機が待機しています」 「我々の周りの艦隊の数は?」 「駆逐艦クラスが約250隻ほどに増加。次元レーダーでは敵後衛艦隊多数こちらに向かっています。圏内到着は約10時間後」 ハーロックが手でサインを送り、ラ・フロリーナはモニターをもとの状態に戻した。ハーロックは艦長席に座り腕を組んで不適な笑いを浮かべる。 「後衛艦隊が到着するまでにケリをつける。我々の目的はメタブラディにとらわれている者達を救い出す事だ。」 そして椅子の背もたれに寄りかかり、足を組んだ。 「我々の有効射程距離まであと1時間だ。それまでゆっくりしててくれ」 驚いた表情の広とアルバ、ラ・フロリーナ。それに反してトチローとホセは大あくびや伸びをしている。 「ゆ、ゆっくり・・・って。これから戦闘に入るのに?」 「始まってみなきゃわからんだろうが。こういうときは落ち着いて茶でものんどりゃええんじゃ」 「は、はぁ・・・」 「アルバ。お前はエンジェルをよく磨いておけ。どうせ手持ちぶさたなんだろう」 アルバの背筋に冷たいものが走った。広も同様に驚いた顔でハーロックを伺った。 「出るんですか?たった一機ですよ!」 「戦えと言ったんじゃない。いつでもでれる準備をしておけと言ったんだ。」 どっちにしろ一緒だろうとアルバは思いながら深呼吸して小走りに戦闘席を離れた。アルバとすれ違いでアグリモニーがワインと入れ立てのお茶を持って現れた。 「お〜すまんな。年寄りは茶が一番じゃ。トチローにも渡してくれんか」 「俺も年寄りかよ」 アルコールの弱いトチローはぶつぶつ言いながらお茶を受け取った。ラ・フロリーナと広は複雑な顔でなみなみと注がれたワイングラスを受け取り、とりあえず一口つける。 「うま、うまい」 「特上のを用意したわ。戦いの前のいっぱいもまたいけるでしょ?」 「ほんと。そうよね。じたばたしても始まらないわ。アグリモニーさん!もういっぱい!」 ラ・フロリーナはその顔に似合わず酒好きである。 「貴方は・・・私がお好み?」 「さすがだな。冗談を言う余裕があるとは」 ハーロックの前にアグリモニーがその場に他の乗組員がいるにも関わらず大胆な事を言いながらワイングラスをハーロックに手渡した。ハーロックに負けずと不適な笑みを浮かべながら残ったワインを瓶ごと飲んで艦橋を後にしようとした。 「親譲りなのかしらね・・・戦い慣れした感じ。戦艦での戦いはこれが初めてなのにね」 「お前にも出番があるかもしれん。あまり飲みすぎるな」 「はいはい」 あれからどれくらいたっただろうか、レーダーに映った敵影は艦首をリヴァイアサンに向けたままじっと止まり、隊列を崩すことなくじょじょに輪を縮め始めた。 「キャプテン。有効射程圏内に敵が突入するまであと5分程です。」 「何の挨拶もせずにいきなり周囲を固めるとは言語道断だな。」 「所詮そんな奴らさ。体勢が不利になればメタブラディのヒューマノイドを人質にすることだって考えられるな。先制するか?」 「こちらは一隻・・・迎撃は避けたいものだな。対包囲陣戦の鉄則とやらで行ってみるか。のんびり撃墜している時間は無い。それに周囲は駆逐艦と巡洋艦中心だろう。」 その時業を煮やした後方の巡洋艦が先制攻撃を仕掛けてきた。いや、巡洋艦の後ろに潜中していた戦艦からの一撃だった。 「なにぃ?」 トチローが立ち上がり目を見開いて上部パネルを凝視した。向こうのリヴァイアサンに衝撃が伝わり、軽く揺れた。ハーロックが立ち上がり、蛇輪を掴む。戦艦主砲の射程距離ギリギリだったためか、リヴァイアサンに損傷は見られない。広が叫んだ。 「こちらの有効射程距離に入ります!迎撃しますか?」 「加速500% 両舷全速!全砲門開け!後方の戦艦は気にするな!前方のミサイル艦を突破して一気に前方旗艦を叩く。直進しつつ発砲!主砲斉射三連!!!」 ハーロックの一喝でリヴァイアサンの艦橋は突然緊張状態になった。一瞬無重力のような感覚と共に方々から轟音が響きリヴァイアサンは一気に加速し始める。駆逐艦からの一斉射撃も急速に加速したリヴァイアサンを追尾するだけで焦点の定まらない砲撃を続けた。無数の閃光がリヴァイアサンを取り囲む。 「ちっくしょうめ。ひどい挨拶をしてくれるじゃねぇか。ひっひっひ。それでもリヴァイアサンに何の損傷も出ないところを見ると相手の主砲も大したこと無いな」 ニヤリとハーロックに笑いかけるトチローにハーロックも笑みで答えた。リヴァイアサンの主砲は周囲の巡洋艦や駆逐艦を確実に射止め、一撃で数隻を消し飛ばす。リヴァイアサンの後方を追う戦艦の主砲はギリギリで艦尾をかするほど。この巨大戦艦がこれほどの加速と機動力を有するとは思わなかったのだろう。 「まもなく第三衛星に到着。ミサイル艦多数。爆撃機が出撃!」 「高度を下げろ。パルスレーザー発射!続いて粒子ビーム砲で遠方の爆撃機を撃墜しろ」 前方からのミサイルも次々と迎撃され、その中を悠然とリヴァイアサンが突き抜けた。ミサイル艦の美しい列が目前に広がる。 「敵長距離ミサイル、左舷に衝突の恐れあり!さらに爆撃機からの攻撃。艦首ブレイドに爆撃機多数衝突!」 「損傷の可能性は」 「リヴァイアサンが強化シールドで吸収しますが、それでも振動はあります。損傷はゼロ」 「敵旗艦まであとどれくらいミサイルが飛んできそうか?」 「ミサイル艦は三列。有効射撃数は100程度です。その後方に敵旗艦と思われる戦艦と空母」 「空母・・・艦載機の嵐だな。」 広とラ・フロリーナの小気味よい返事に後ろで聞いているハーロックも気分がよい。だが艦橋前をひらひらと飛ぶ爆撃機にトチローがついに怒りの声を挙げた。 「ったくもう!うるさえハエだな・・・艦橋窓が汚れる!。おのれ。撃ち落としてやろうじゃないの!」 トチローは腕まくりを始め、クレーンチェアを操りながらさもゲームを始めるかのようにコントロールパネルとレバーに手をかけた。敵爆撃機の戦闘は巨大な戦艦では避けようが無かったが、それでもトチローの確実な射撃で損傷を最小限に抑えることが可能だ。コントロールをトチローからリヴァイアサンそのものに託された主砲攻撃は確実に敵艦隊を粉砕していく。しかし、ついに後方を追尾していた戦艦との交戦が始まった。 「キャプテン。後方、敵戦艦接近しています!」 「ホセ!機関反転だ!艦載機射出口を攻撃させるな!」 「了解!」 ハーロックは蛇輪をめいっぱい回し、リヴァイアサンが反転しだした。 「アルバ、エンジェルの出撃準備だ。我々が援護する。おまえはメタブラディへ突入して妨害電波を発信源を破壊しろ!」 「了解!」 敵と戦うのではない。それでも対戦は辞さないだろう。意を決してアルバはコスモ・エンジェルに乗り込んだ。 |
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