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第三章6
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| 新しい乗組員 惑星ダラスを出航したリヴァイアサンはゆっくりと宇宙を航海している。トチローはメタブラディにつくまでには必要な情報を整理しておきたいと言っていた。新しい乗組員のこと、そしてハーロックの決断で艦載機を急ピッチで仕上げなければいけなくなっていた。 「広のおかげで急な仕事も楽に進められるよ。や〜よかったよかった」 「まかして下さいよ!これでも大山トチローさんにあこがれて、戦艦を作るために修行を重ねてきたんですから」 「え?トチローさんは広さんのあこがれなんですか?」 「あ?・・・あぁ、俺の親父の事だよ。同じ名前で混同しちまうな。まったくややこしいったら・・・だが俺はこの名前とても気に入ってる。」 リヴァイアサン艦尾艦載機射出口ではトチロー、広、アルバの三人が完成間近の新しい艦載機の最終チェックを行っていた。本来なら十数機入るはずのドックも今は2機しか無い。そのうちの1機がたった今試験飛行に出ようとしている。ブルーのボディに白の髑髏をあしらった全長9m程の戦闘機コスモ・エンジェル。パイロットはアルバ。彼はドックの奥に停まっている一際大きな黒い戦闘機に吸い寄せられるように歩き出していた。 「おい、アルバ、そいつに触るなよ。雷が落ちるぞ」 「この大きな戦闘機、誰がパイロットなんですか?」 「ハーロックだ。ブラック・アルバトロス。それはあいつが作ったヤツだ。きっとお前が見ても良くわからんコクピットだよ。古すぎる。」 それを聞いて広も小走りにアルバトロスに近づく。アルバと広は歓喜の声をあげた。アルバからすれば無駄に大きいとしか思えないその戦闘機をどうやって操るのか不思議だった。 「キャプテンもパイロットなのか。どんな操縦するか見てみたいな」 「そうだな〜」 「滅多なことを言うモンじゃないぞ二人とも。あいつの操縦といったらもう・・・目が回るなんてもんじゃすまんからな〜。あ」 そこに本人がやって来た。少し厳しげな目で広とアルバを睨むと二人はゆっくりアルバトロスから離れていく。 「立派な艦載機ができたな」 「お前の書いた設計図より小振りにしてみた。重量を減らした分、機動性は多少アップさせてある。最初の一機だ、贅沢に作らせてもらったよ。量産するならもっとコストを抑えるが・・・、どうだ?」 「たしかに少し小振りだな。これならお前も乗れるんじゃないのかトチロー」 「俺は遠慮しとくよ。戦闘機のでかさっていうのはナニのでかさに比例するって、お前言ってただろうが」 ハーロックはあきれ顔で笑いながら広とアルバの方を見た。広は笑いをこらえるのに必死のようだった。 「広、トチローの手伝いをしてくれて感謝する。今後は艦橋をメインに活動してくれ。アルバお前は試験飛行が終了したら戦闘席でトチローの指示を仰げ」 「了解しました」 トチローはよじ登っていたコスモ・エンジェルから降り、アルバをコクピットに乗せた。するとハーロックが艦橋に向けて通信を送る。 「ラ・フロリーナ、艦載機射出口を開け。それと・・・左舷カタパルトの準備を」 [了解] 「おいおいおいおい。お前まで出る必要は無かろうが」 ハーロックは意地悪げにトチローに笑いかけた。 「ドッグファイトがしたくなった。なんなら目を回してやろうか?」 「低調にお断りする」 ハーロックは意地悪そうに笑いながら、去っていくトチローと広を見送った。突然始まるドッグファイトに乗組員は一斉に艦橋に押し寄せた。ルールは至って簡単だ。空砲を使ってアルバトロスを撃墜。 [空砲で撃墜?ロックオンだけじゃなくてですか?] [俺がロックオンから逃げられないとでも?機械を当てにするな。制限時間は5分。ミサイル、機銃共に使ってよし。ただし無駄弾は撃つなよ。] 二人はおのおのの戦闘機に乗り込みコクピットから会話していた。 「カタパルト装着完了。いつでも出られる」 [射出口オープン。アルバ、いつでもどうぞ] コスモ・エンジェルのコクピットに元気いっぱいのラ・フロリーナの声が響く。 「発進します!」 コスモ・エンジェルの発艦と同時に艦尾左舷カタパルトはアルバトロスを射出。同時に素早く旋回し猛スピードでコスモ・エンジェルの真上すれすれを通過した。ハーロックのちょっとした挨拶だ。アルバとハーロックのチェイスは大艦橋の前で繰り広げられた。アルバトロスの小刻みな動きはその大きさからは想像できない機動性、そしてハーロックの見事な操縦桿裁きはアルバを驚愕させるに充分だった。アルバは確実にアルバトロスをロックオンするが、当たらない。追尾ミサイルさえも見事にかわしきった。突然始まった航空ショーに大艦橋は歓喜の渦。飲めや歌えやの大騒ぎ・・・・。そんな中、トチローは音もなくその場を去るアグリモニーの姿に気づき、ゆっくり後を追った。彼女は医務室に消えていく。確かに彼女の持ち場はドクター・シン・雨森のアシスタントとして医務室となっているが、壁づたいによろよろと歩いていく今の彼女の様子は明らかにおかしかった。 「どうしたんだ?顔色がすぐれないようだったから、様子を見に来たんだが・・・」 アグリモニーは医務室のベッドに横たわっていた。 「ハーロックが席を外している間に・・・私を抱きに来たのかと思った」 「ばかな。ったく、あいつの言ったように、あんたは強がりなヤツだな。ちゃんとドクターに見てもらえよ」 「・・・優しいのね。さすがはメーテルに育てられただけあるわ。」 トチローは驚くこともなくアグリモニーの横たわるベッドの隣の椅子に腰掛けた。 「やっぱりメーテルの知り合いだったんだな。でなきゃ銀河鉄道管理局のメインコンピューターにアクセスなんてできっこないからな。それに、何処かであったような気がしていた。そうか・・・あの時の・・・」 常に厳しい表情のアグリモニーも、今は穏やかな美しさを漂わせてトチローにほほえみかけた。 「貴方がまだ小さい頃、ラーメタルで貴方に会ったわね。あの時とは私も随分変わってしまったし、覚えていないでしょうけど・・・」 彼女は話を続けようとしたが、全身に激痛が走り、枕に顔を埋めてしまった。苦しむ顔を人に見られるのが大嫌いな彼女のささいな抵抗。トチローはすぐにドクターを呼び出した。 「しっかりしろ。いったいどうしたっていうんだ?え?」 トチローは為すすべなく、彼女の背中をさすった。 「理由は聞かないで。この事は、ハーロックには・・・内緒に。約束して。・・・いいわね」 「・・・・・うん。分かったよ。約束だ」 トチローはドクターを呼び出し、彼の到着を待って、その場を後にした。ドクター・シン・雨森は彼女の痛みの原因が何かは既に知っているようで、「心配無用。他言無用」とトチローに念を押して彼女の治療を始めていた。 艦橋に戻ってきたトチローは戦闘席のコントロールパネルで打ちひしがれているアルバを発見した。結果は惨敗という言葉が彼の背中に書いてあるかのようだ。 「トチロー、どこ行ってたんじゃ。せっかくのショーを見んと・・・」 「あぁ、ちょっとな。じーさん落ちるなよ」 久しぶりに艦橋で動力メーターをいじっているホセ。機関室よりも艦橋のクレーン式コントロールチェアに座っている方が彼は好きらしい。ご機嫌な顔振りで鼻歌を歌いながら作業を進めていた。 「いやぁ、人数が増えたんで仕事がはかどって何よりだ。まぁ、まだてんやわんわといった感じだがの」 「これでも手のかからんように建造したんだ。あれこれ言うなら降りて貰って結構」 冗談まじりの声でホセにそう言うとラ・フロリーナの方を見た。 「ハーロックは?」 「キャプテンはまだ艦載機格納庫です。エンジェルの微調整をするそうですよ。」 ハーロックはたった5分でアルバの飛行癖を確認して、そのための微調整を行っていた。トチローは打ちひしがれているアルバの背中をポンと叩いて戦闘席に腰掛けた。ちらとアルバの顔を見るとただでさえ青白い顔の色がさらに青ざめている。 「無理して飛んだな。気分が悪くなったか?まだまだガキだな〜」 「いえ、そんなことは。コスモ・エンジェルの性能はバルザック軍のそれとはあまりに違って、すこしとまどっただけです」 「俺はな、オートで操縦する事を認めん。殺られたくなかったら、自分の目と耳と勘を使って飛行しろよ。科学と機械の力を過信するヤツにアレは操縦できない」 「確かに、ヒューマノイドの勘や目、耳を使いこなせば、プログラミング漬けのプロメノイドに勝算が持てます。でも、僕にそれが出来るかどうか・・・」 「この戦闘席の照準機もオート機能こそ付いてはいるが、勘ってもんが必要だ。いいか、アルバ、お前自身で考えろよ。それが出来ないんだったら俺はこの席は譲る気はない。俺はその気になれば武器の製造も艦の管理も、戦いながらだってやれる自信はあるからな。お前みたいなガキに任せるほど、俺はまだまだなまっちゃいない」 アルバはビシッと立ってトチローに向き直った。 「ガキガキって、子供扱いするのは止めてください!やれます。僕だってやれます!やらせて下さい」 トチローは真っ白い歯を見せて笑った。 「ま、リヴァイアサンの武器はどれもアバウトな照準でもかなりの威力はあるからな、適当でも構わんよ。この戦艦は生きた脳を持ってる。だから「気持ち」が大切だ。それと、お前の飛行、なかなかなモンだったぞ。さすがはエースパイロットだな。感心感心。ハーロックの事は気にするな。あいつは艦長職に就いてから飛んでなかったからな、いい気晴らしって言うヤツか。大きな声じゃ言えんが・・・あいつサディストだぞ、うんきっとそうだ。イッシッシ」 アルバはとある夜の事を思い出して一瞬にして顔が真っ赤になった。トチローはその理由は知らない。ホセはなつかしげにアルバを見た。彼はまだ、むき出しの闘争心をその目に残した若者であることは間違いない。かつてハーロックがそうであったように。自分のレベルに釣り合わない事でも平気で無理を通し、場合によっては自滅しかねない甘さがそこにある。だが、それを乗り越えるべき時が彼に訪れている。 「そこにいたんですか」 広が艦載機ドックへ戻ってきた。照準機と制御装置の手直しを終えたハーロックが丁度コクピットから降りてきたところだ。 「もう艦橋に戻るが・・・どうした?」 「アルバ・・・無茶しなけりゃいいけど」 「あいつなら大丈夫だ。俺の挑発にやすやすと乗らなかったところをみると、無駄な深追いをしない冷静さを持ち合わせている。・・・不安か?」 「彼は子供じゃないけどまだ若い。俺の昔の事を思い出すとなんか放っておけなくて」 恥じらうように苦笑する広の肩を叩くとハーロックも苦笑した。ハーロックもまだ若い、だから若気の至りの痛さや失敗は広の方が良く知っている。だが、広からすれば、彼の前のハーロックはすでに人生の酸いも甘いも全て知り尽くしているかのように落ち着いて見えた。「時が解決してくれる」。広の肩に置かれたハーロックの手は、そう語っていた。 「ところで、ダイバーランド星の事について、キャプテンが知りたがっているとトチローさんが言っていましたが。あの星の伝説に興味が?」 艦橋に戻ろうとしたハーロックの脚が止まった。彼の脳裏にマヌエラの寂しげな姿が浮かび、体中の毛が逆立つような思いに駆られる。彼はまだ、ヘレス鉱山で彼を包んだ青白い炎のぬくもりを覚えている。無意識に、かつて彼女が口づけし、ハーロックに手渡したサーベルのつかを指でなぞっていた。目を閉じ、そして大きく深呼吸をしてから口を開いた。 「それはいずれ。全てが片づいてからでも遅くはないだろう。必要であれば・・・俺から訪ねる。わざわざすまなかった」 ハーロックはそう言うと、自分の部屋へと去っていった。 |
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