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第三章3
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| ジャンク部品の山 トチローは惑星ダラスの港付近にあるジャンク部品の山を漁っていた。下層はまるで使い物にならないさび付いた鉄くずばかりだったが、最近の入港者の増加のおかげで上層にはまだ仕えそうな部品がごろごろしている。トチローからしてみれば本当に山を登るに等しいほど積み上がったジャンク部品の山、地上から見ればネズミがうろうろしているようにすら思える。 「・・・・たく、こうもいっぱいあると砂場から宝石を探すのと同じだなぁ〜。ん、だがこれだけ仕えそうな部品があると探し甲斐があるってもんだ。なぁトリよ」 うろうろと歩き回るトリはいつしかその辺の部品を加えてはトチローの前に差し出していた。 「おい、俺の探してるのはチップだよチップ。コントロール中枢を制御するためのチップ。硬化テラサイトとビリジウムで出来てるチップだよ。まぁお前に言ってもわからんかもしれんが・・・、こいつが有ればリヴァイアサンのコントロールシステムが完全になる。あ、それと、コスモドラグーンをサーチするために小型エネルギー探知機だ。分かるか?分かんねぇだろうな〜」 その言葉にトリは不服を訴えてトチローの帽子をつついた。 「おい!止めろって。痛いじゃねぇかよ!。ん、もう、なんで俺についてきたんだぁ?ラ・フロリーナがミーくんばっかり構ってるからつまんねぇんだろ。」 トリは首を振った。 「じゃぁハーロックもでかけちまったし。ホセは新入りの教育に忙しいしってか?」 トチローは端から見れば独り言をぶつぶつ言っているように見えるが、あくまで彼はトリに話しかけている。そしてトリは話が出来ないまでも、彼の言っていることを理解しているようだった。二人(?)はなかなかいいコンビのようだ。しかし、しばらくジャンクの山を掘り返しているとトリは大声で人の気配を訴えた。しかし、部品の山を漁っていたトチローにはその声に気づかなかった。彼は探している部品が見つかって、それを引っ張り出すので必死だった。 「動くな!」 「え?」 背後に男の気配。それほど背は高くないが、こちらに向いている銃の威力はかなりの物だとトチローは推測した。彼の声は落ち着いていて、殺気は無い。 「こっちを向け。妙な動きをしたら撃つ」 トチローはゆっくり両手を挙げたまま、まだ振り向かず、手に持った部品も手放さなかった。 「ちょっと待ってくれよ。俺は部品の山を漁ってるだけだぜ・・・別に迷惑掛けてる訳じゃないだろ〜が」 「この山は俺の作った飛行艇の部品が置いてある。何に使うのかはっきりさせたい」 「はぁ?あんたの作った飛行艇?・・・こんな粉々の電子部品の山でいちいち使い道をはっきりさせなきゃならねぇのかよ」 トチローは身体の力が抜けた。そんなことでいちいち銃を向けるヤツがいるかと思うと・・・だが男は続けた。 「ヒューマノイドの作った部品をサンプルとしてプロメノイドに売りつける奴が後を絶たない。ヒューマノイドを滅亡させる兵器を作る為にこの部品を使われては迷惑だ。何に使う!速く言え!」 (プロメノイドに売りつけるだと?) トチローの血圧が上がった。やおら振り向いてその血圧の上がったツラで噛みつくように訴えた。 「俺は俺の船の部品を探しているんだ!だ〜れが虐殺マニアの片棒なんか担ぐか・・・」 「・・・!・・・ト、トチ、トチロー・・・さん?」 振り向いたトチローの目の前に突きつけられていた銃、それはコスモドラグーンだった。そしてそれを握って立っていた男は両目を見開いてトチローを見つめていた。トチローも、その男もしばらく目を合わせたまま動かなかった。トチローは帽子のつばをすこし上げて男に歩み寄った。 「どうしたんだ・・・その銃は?」 「エメラルダス・・・。貴方のお母さん、クリーンエメラルダスから受け取りました・・・。」 トチローの前の男はもう中年間近と言ったところか、明らかにトチローより歳は上だ。そして彼と彼の母を知っている。彼の持つコスモドラグーンはシリアルナンバー“0”。トチローの父が作ったコスモドラグーンのプロトタイプで、大山トチロー自身が生前使っていた物だった。 男は『ドクター・シン診療所』と看板の出た古くさいアパートのような家にトチローを招き入れた。一階が診療所で二回が自宅になっているようだったが、その部屋の汚さといったらトチローの自室に負けない程、有りとあらゆる所に電子部品や機械が転がり、所せましと書きかけの船の設計図が開かれていた。 「すいません、俺、居候の身で、ここは自分の家じゃないんですけど・・・」 「あ・・・あのな。別に敬語なんて使わなくても・・・。俺べつに偉くなんかないし・・・」 「いえ・・・そうはいきません。謎の怪人大山トチローさんとクイーンエメラルダスの息子さんじゃないですか。あ、遅くなりました。俺、海野です、海野広」 気さくな男、海野広。ボロボロのハンチング帽の中の丸い瞳はまだ少年の様に輝いている。トチローは母、エメラルダスの手記を思い起こしていた。海野広という名は、父・大山が死んで随分後になって出会った少年だった。落ちぶれた地球を捨て、自分で建造した船で宇宙を旅する夢を抱いた少年。数々の困難をエメラルダスと共に闘い抜いた戦士の一人。その少年・海野広は成長し、立派な大人としてトチローの前に現れた。 広はトチローにお茶とあり合わせの食べ物を運んできた。 「エメラルダスは・・・随分前に俺に通信を送ってきました。どこからだったのか探査できなかったんですが、恐らくこの辺りの宙域だったんじゃないかと・・・それで俺、慌てて本拠地にしていた星から跳んできたんですが、見つけられませんでした。そればかりか・・・プロメノイドとかいう高次元生命体がアンドロメダからマゼランに向けて進軍しだしたんです。しばらくクイーンエメラルダス号の消息を掴む旅を続けていたんですが、メタブラディの辺りで攻撃を食らって、この星に。以来ずっとこの星でプロメタリアの様子をうかがっていました」 「プロメタリア?」 「エメラルダスが送った通信ではプロメノイドが組織する軍、プロメタリアがコスモドラグーンを探すだろう、決して渡してはならない。渡す相手は自分の息子・・・と」 そう言うとペンダント型の通信機をトチローに渡した。トチローはそのスイッチを恐る恐る入れるとノイズ混じりの音の向こうでエメラルダスの声が聞こえてきた。 [広・・・・ごぶさたね。元気でいることと思います。・・・貴方に頼みがある・・・・この通信を聞いたらすぐに旅に出なさい・・・コスモドラグーンを手に入れようとしている輩から、戦士の銃を守りなさい・・・そして・・・私の息子・・・大山の血を引く男、トチローにそれを渡して欲しい・・・決して・・・私を捜してはならない・・・。広・・・私が貴方に伝える・・・最後の使命・・・・] トチローははじめて母の声を聞いた。いや、幼い頃に聞いているはずなのに、何も思い出せず、涙が止まらなかった。ペンダントをぐっと握ったまま、何度も、何度もこの通信を聞いていた。広はティッシュを箱ごとテーブルに乗せてトチローにすすめると、トチローは黙って数枚取って鼻をかんだ。 「コレ、コスモドラグーンです。貴方にお渡しします。きっと、貴方はエメラルダスの足跡をたどってこの周辺にやってくると思っていましたから、俺はここでずっと待っていました。よかった。俺はこの役目を果たしたら、またダイバーランド星に戻ろうかと思っていたんです。」 ダイバーランド・・・聞き覚えのある星の名前だった。トチローは行ったことのない星だが、この星の名前は彼と随分親しい者がいたと言っていた星。 「ダイバーランド星って言ったよな。ひょっとして・・・マヌエラっていう名前を聞いたことないか?」 「マヌエラ・・・それは落日の姉妹の事ですか?ダイバーランドの伝説で聞いたことがありますが・・・」 「落日の姉妹?・・・伝説?・・・まぁ、それは分からないが、オレンジ色の髪をした・・・ちょっと神がかった感じの女で・・・」 「ええ、時の魔女伝説というダイバーランドに古くから有る話に出てきます。双子の姉妹で、姉が過去を、妹が未来を司っていて・・・えっと〜、たしか1000年位前に宇宙の時を操ろうとした悪の手から「破滅を呼ぶ石」を奪い取って封印した・・・とかいう話です。おかしいですよね。二人ともマヌエラっていう名前なんでごちゃごちゃになっちゃいますよ。まぁ伝説なんでよく分かりませし容姿も分かりませんけど。それが何か?」 トチローはその時唖然とした。双子の姉妹、破滅を呼ぶ石はヘルブラディを指しているに違いない、そして二人ともマヌエラという名を名乗っていた事をはじめて知った。トチローは卒倒しそうだった。 「い、いや、何でもない。・・・なぁ、その銃、まだ撃てるのか?」 「ええ、この星に到着してこの銃を使うことは滅多に有りませんでしたけど・・・」 トチローは広の渡したコスモドラグーンを手にとって見つめていたが、それを返した。 「もし・・・よかったら俺の船に乗らないか?・・・まだあと2丁探さなきゃいけないんだ。それにおふくろのこといろいろ聞きたいしな。あと、会わせたい奴がいる。俺と一緒に船を造ったヤツだ。コレと同じ銃を持ってる。名前は・・・分かるだろ?」 メガネの向こうから広の表情を伺った。彼の顔が一段と明るくなった。脱いでいたハンチング帽をぐっと握りしめ少年のような瞳が輝いている。 「お〜い広。帰ってるのか?ワシだよ。いま戻った。酒場から食い物を貰ってきたぞ。な、なんだ!ここは動物病院じゃ無いぞ。なんでトリがおるんだ」 トリは一階の診療所にいた。 「オヤジ!オヤジ!大変だ!」 ドクターの帰りに気づいて広が階段を駆け下りてきた。 「な、なんじゃ。あわてて。だいたいな、いつもオヤジは止めろと言ってるだろが。ワシはドクターだ!おまえのオヤジじゃないわい」 「わりぃ、ドクター・・・」 階段を駆け下りてドクターの前に立ちはだかった広の後ろからボロ切れを纏ったトチローが顔を出した。とてもドクターをは思えない、白衣こそ着ているが、足下は下駄、片手に酒瓶を持ったがに股の男。トチローとはさほど背の高さも変わらない、一見ただのオヤジ風の男だ。その男はトチローの姿を見るやいなや眼を細めて微笑んだ。 「お〜、お前さんが先に広と会ったか。ハーロックも連れてくればよかったな。」 「じゃぁドクターってあんたのことか?雨森博士!」 「はっはっは。これでも本業は医者じゃよ。・・・ただの酔っぱらいだと思ってたか?」 ドクターはトチローの事を知っているようだった。おそらく広い銀河の旅の途中で酒でも酌み交わした仲だったのだろう。トチローは懐かしそうにドクターの手を取って握りしめた。広にはよく分からなかったがとりあえず知り合いであるということは理解した。 「ハーロックなら酒場で会った。お前さんら、ついに一緒に旅をはじめたようだな」 「あぁそうだよ。・・・なんでもあいつ、船に医務室を作りたいって言ってた。さしずめあんたを船に招き入れるつもりだと思うが・・・ドクターがあんたなら俺は大歓迎だ。」 「はっはっは。そーか、それは光栄だな。まずは乾杯だ。再会とお前さんとハーロックの旅を祝ってな。おい、広、コップだコップ!」 ドクターは二階の広の部屋に入り込んで酒瓶とコップを広に用意させた。 「おい、酒は勘弁してくれよ。俺を酔いつぶすつもりか?」 「なんだ、ハーロックと旅を続けとるのにまだ酒が飲めんのか?」 「あいつのピッチが速すぎるんだ。ま、これからは酔いつぶれてもあんたがいるから安心だ。な、ドクター」 二人は広の入る隙がないほど気が合っているようだった。三人はグラスを交わし、一気に酒を飲み干した。トチローは倒れなかったがすでに顔が赤い。その赤くなった顔をみて広が笑った。 「オイ広。お前も船に乗るんだろ?誘われたんじゃないのか?いつまでも自分の戦艦を作ると言ってるのもいいが、今はそんな時ではなさそうだ・・・そう思わんか?」 ドクターは広に何気なくだが厳しいおもむきで話した。広は感じていた、時の環が思ったより速く回転しているのだと。広はトチローとハーロックが作った船が速く見たくてうずうずしている。 「なぁ、ドクター、キャプテン・ハーロックは酒場にいるんだろ?俺、速く会いたいから酒場に行ってくる」 立ち上がった広のズボンの裾をドクターが引っ張って転ばせた。 「やめとけって。焦らんでも会えるだろうが」 トチローはドクターの言葉を聞いて納得した。ハーロックは当分船には戻らないようだ。 |
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