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第二章9
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| プロメタリア アンドロメダ星雲にうかぶ要塞惑星。惑星を手で千切り割った様な惑星の中にそれは存在する。中央にそびえる巨大な塔を中心に広がる煌びやかな機械都市。そびえ立つビルの数々には多数のスケルトンチューブが渡され、カプセル型の車が行き来する。小型飛行艇や戦闘機が忙しく行き交い、塔の麓に広がる地帯では一般人も軍人も入り乱れ、一見平和呆けしているかのようにさえ思える。機械化母星に代わってそこに存在する要塞惑星プロメタリウム。プロメノイドを生産し大宇宙に送り出しているプロメタリアの中枢都市でもある。プロメノイドの最高指導者であるデ・プロメノイド・ラミアは要塞惑星の中心にそびえる塔を牙城としていた。その下の階級であるセスキ・プロメノイドはラミアの直属の部下であり、軍人や神官といった肩書きを持つ。さらにその下の階級モノ・プロメノイドは兵隊、プロメノイドになってはじめて一般民が含まれる。多くのメタノイドがもはやプロメノイド化し、現在宇宙に散らばっているメタノイドのほとんどはいずれは滅ぼされる運命なのだ。あの時、ヴェルセルークがあのままヘルブラディを持ち帰っていれば、恐らくモノ・プロメノイドくらいには改造されていたかも知れない。しかし、彼は分かっていた。所詮は使い捨てのメタノイドにすぎない事を。そしてヒューマノイドの誇りを捨ててまで成り代わるつもりは無かった。 「ヒューマノイドがそなたの送り込んだ戦艦を破ったというのか!それは真か!」 「恐れながら、真にございます。ラミア様。・・・女官カルナの最期の通信では、数人のヒューマノイドが現れ、ヘルブラディの封印をといたと。」 「・・・おのれ、ヒューマノイドごときが・・」 プロメタリアの中央にそびえる塔の中は巨大な空間に低い、女の声が響き渡る。それは振動波を伴い、にわかに塔の中はビリビリと音を立てた。塔の中を自由に泳ぐエネルギー生命体・・・それこそがプロメノイドの全てを支配するデ・プロメノイド・ラミア。ダイオード様の発光体であり、脳や身体、手足すらもはっきりせず、まるで炎の様に、時に蛇の様に巨大な触手が浮かび上がっては消える・・・それは惑星ヘレスの鉱山で人工的に作られた龍がそうであったように。彼女の感情はそのまま振動波となって塔の空間に放出されるのだ。エネルギー体デ・プロメノイド・ラミアの前まで伸びたカプセルの中に跪いた大柄の騎士風の男、ハルヴァルドーはカプセルの周りを吹きすさぶラミアの振動波でかぶっていたローブのフードがとれた。フードの向こうはヒューマノイドとまったく区別が付かない。太い眉毛の下にある大きな瞳はラミアの感情に揺れるエネルギーの中心を見据えていた。 「白鯨は惑星もろとも宇宙の塵に・・・。ヴェルセルークはヒューマノイドとの決闘に敗れた後、自決かと・・・。」 「カルナを失ったばかりか、ヘルブラディの消息まで分からなくなるとは・・・・」 「ヘルブラディに関しましては、プロメタリアより巡洋艦を発艦させ、捜索をはじめております。白鯨を撃沈させたヒューマノイドに関してましても調査を進めております。どうかしばしのお時間を」 「時に、トールの言っておったヒューマノイドのエネルギー銃、コスモドラグーンとかいう正体不明の銃の調査は進んでおるのか」 「は、研究所にて・・・・」 「そなたの戦艦の建造は?進んでおるのだろうな。必要あればトールに手伝わせるが良かろうが、トールの話ではそなたが許さぬと」 「軍の管理は我が配下にござ忌ます故、トールには一切着手を許してはおりませぬ。しかしながら、コスモドラグーンの性能は侮れず、あのエネルギーの正体さえつかめれば確実にプロメタリウムの脅威を大宇宙に示すことが可能とトールは確信しており、やりたいようにやらせておくが良いかと思っております。戦艦の建造は順調に進んでおりゆえ、どうかいましばしのお時間を請いたく存じ上げます。」 ラミアの振動波は徐々に沈静化しはじめていた。セスキ・プロメノイド・ハルヴァルドーと呼ばれる男はモノ・プロメノイドの指揮官であり、軍は全て彼の管理下にある。プロメタリア要塞惑星の大半を占める軍事基地ではプロメタリア兵、そしてメタノイドたちが働き蜂の如くそこにいる。そして、全宇宙から集まってくるプロメタリア化の希望者をふるいにかける。プロメタリアにおける事実上の最高指導権は絶対指導者ラミアの腹心、ハルヴァルドーにある。 ラミアに報告し終えたハルヴァルドーは長い廊下を歩いてきた。そこに7人の女官が待っている。彼女たちはラミアの塔の守護を司ると言われているセスキ・プロメノイド達で、どれも皆同じような顔をしているが、彼女らをとりまとめいていると思われる、一際美しい女官はドレスの上に甲冑を着込み、女にしては大振りのサーベルを腰から下げている。彼女がハルヴァルドーに声を掛けた。美しく、また厳しい。 「ハルヴァルドー。カルナはなぜ、どのように死んだのか」 「さぁ。なにぶん死ぬ寸前の通信を傍受しただけのこと、ゆえにその後どうなったかは知らぬ。」 「ふん、所詮そなたの軍などその程度。甘いな。なぜこのような事になる前に対策を打たなかった。」 ハルヴァルドーは悠然とマントを翻しながら第一女官の方へと向いた。 「たとえ対策を打っていたとて間に合わなかったやもしれぬ。それに、ヒューマノイドに骨抜きにされるような女、このプロメタリアに生きて戻るのはいかがなものかと思うが・・・」 「骨抜き・・・?それはどういうことか」 「わからぬのなら分からない方が良い事もある」 「貴様、このトールをバカにしておるのか」 「乙女と長々話している時間は無いのでな。失礼する」 女は腰のサーベルに手を掛けた。女官トール、彼女はラミアの8人の守護乙女をとりまとめる女騎士でもあり、その腕はセスキ・プロメノイドでもかなりの腕前。しかしハルヴァルドーはきびすを返して去っていった。乙女の館の外はリムジンが止まっており、その入り口でハルヴァルドーの側近が頭を下げて待っていた。 「よろしいのですか?ハルヴァルドー様。」 「構うな。放っておけばいい」 二人はエレベーターで長いチューブを降下した。 「カルナのプログラミングはヒューマノイドとの肉体的交流によって破壊された。あのように男の身体をむさぼるような者はセスキ・プロメノイドの乙女の器には戻れぬ。プロメタリアに帰還の際は処刑だ。・・・だが、あのヴェルセルーク、そしてあの男が連れていたアルバ・・・あの者達の知識には我々のしらないヒューマノイドに関する情報を持っていた。惜しいことをした。」 ハルヴァルドーには彼なりのやり方があった。トールが強引にカルナをヴェルセルークの監視役としてつけたため、彼はカルナのプログラミングをヒューマノイドと交流させたのだった。そしてハルヴァルドーはカルナを「据え膳」にし、ヴェルセルークにそれを与えた。これもヒューマノイドの生態を知るための手段だったのか・・・?それともカルナがヴェルセルークに無用の手出しをしないようにするための策だったのか。 「彼らがプロメノイドとなった暁には・・・プロメタリアの支配権をハルヴァルドー様の手中に納める事も近かったでしょうに・・・・」 「そんなことでは無い。ヴェルセルーク・・・私が今まで会った者の中であれほど腕の立つ騎士はいなかった。できれば共にプロメノイドとして戦ってみたかった。それだけの事だ。それと・・・あの守護乙女・・・プロメタリアの繁栄に必要な存在とは思えぬが・・・」 ハルヴァルドーはそのあと何も言わず、エレベーターが到着した地下基地へと入っていった。地下基地の研究室には白衣を纏ったプロメノイドの研究者達が所狭しとコントロールパネルに向かい合っている。研究室にある数々のモニターは銃の部品とおぼしき透過図を映し出していた。そして中央でからあらゆる面にライトを当てられたコスモドラグーン。ハルヴァルドーはゆっくりそれに歩み寄って見つめた。 「閣下、やはりこれはかつて伝説の奇銃、戦士の銃と謳われた宇宙に5丁しかない銃、コスモドラグーンでございます。動力は次元流動エネルギーを使っておりますが、これだけで我々プロメノイドを消滅させる事は非常に難しいかと・・・」 「旧式のメタノイドは頭を、昨今のメタノイドは心臓を打ち抜くことで粉々に粉砕される。ヒューマノイドはその閃光に触れただけでも原子となり・・・プロメノイドではどのように?」 「・・・・は、はぁ。この銃を携帯していたヒューマノイドは実際に多数の我々の同種を手に掛けました。結果はプログラミングの消滅・・・」 「消滅だと?」 「トール様はこれがかつてメタノイドを滅亡に追い込んだ銃だと知って以来、詮索を続けていらっしゃったのですが、今現在、これを強力な武器として使うことが出来ないかとおっしゃっておいでです」 その後、ハルヴァルドーの前のプロメノイドはすごすごと後ろ座し、そこにハルヴァルドーの側近が歩み出た。研究員は側近の合図に深々と一例をしてその場を去った。 「ハルヴァルドー様・・・ヒューマノイドを捕獲した後、この銃を試し打ちした部下がやはりプログラミングにバグを起こし、この銃に吸い込まれるような現象と共に消滅を・・・」 「誰もこの引き金を引くことかなわぬと言う訳か。して捕獲したヒューマノイドは今どこにおる?」 「メタブラディの捕虜収容所にてございます。種は地球人であることが分かったのですが、他はまだ分析中です。なにぶん、我々の精神分析装置には反応を示さず、拷問をかけてもまったく口を割りません。・・・いかがいたすべきか思慮に果てましてございます。」 「私の判断で命ずる。その者、決して殺すことあいならぬ。分かっておるな。しかし・・・トールめ、この正体不明の銃を全て我々の手中に収め、新たなる兵器の開発を進めるようとは・・・。引き続きトールの行動を監視せよ。何を考えているのか・・・あやしい」 「は、御意のままに。」 側近はハルヴァルドーがその場から見えなくなるまで深々と頭を下げたままハルヴァルドーを見送った。ハルヴァルドーはドーム状に開けた軍事エリアへと入っていく。軍事エリアに入ると、彼が通る道々は朱に金モールをあしらった絨毯が敷き詰められ、玉座ともいえる彼の席が置かれていた。遠く向こうでは建造中の戦艦や駆逐艦が並ぶ。玉座の周りでは数々のモニターがプロメタリアのあらゆる情報が映し出されていた。ハルヴァルドーは天井からつるされたモニターを見つめていたが、息を切りながら入ってくる兵士の姿に気づいて視線を落とした。玉座から数メートル離れたところで走り込んできた兵士はハルヴァルドーの直属の部下達によって止められた。 「貴様!何事だ!ここを何処と心得ているか!」 「も、も、申し訳ございません。しかしながら火急の用件にてお目通りを・・・」 「どうしたというのだ」 「煉瓦の星にて海賊とおぼしき者達の手によりアガディール山が陥落。メタノイドどもの報告によれば、捕らえていたヒューマノイドは逃亡。正体不明の巨大戦艦が出現したと・・・」 「なに!」 朱の絨毯上で兵士を取り押さえていたハルヴァルドーの部下達が一斉に硬直した。ハルヴァルドーは眉一つ動かさず兵士の次の言葉を待った。 「巨大戦艦の名はリヴァイアサン・・・。髑髏の旗を掲げている・・・そう言い残して脱出したメタノイドは撃墜されたと思われます。」 「リヴァイアサン・・・・。髑髏の旗?」 ハルヴァルドーの背筋に冷たいものが走った。事態は思わぬ方向へと動いている、そう、彼は髑髏の旗印を掲げた巨大戦艦の存在を知っている。しかし巨大戦艦とその戦艦の持ち主は遠い昔に宇宙の塵となった筈だ。 「巨大戦艦の名はアルカディアではなかったのか?」 「いえ、メタノイドの話ではアルカディア号では無く、アルカディア号に似て異なる赤黒い巨大戦艦だと・・・」 「マゼラン宙域の巡洋艦の話ではそこここででキャプテン・ハーロックが復活したという噂が蔓延していると聞いているが」 いまだ震えたままの兵士にハルヴァルドーの部下が問いただした。 「それも煉瓦の星で見かけた者がいるという・・・まことしやかな噂にございます」 「閣下!」 動揺を丸出しにした部下達がそろってハルヴァルドーに駆け寄った。わななく手をぐっと握りしめ、立ち上がったハルヴァルドーがようやく口を開く。その声は低く落ち着いてはいるが、若干の焦りを隠せない。 「マゼラン宙域の巡洋艦の数を増やせ。必要であれば駆逐艦を飛ばしても構わぬ。巨大戦艦の正体を掴み、捕獲せよ。戦艦及び爆撃機の建造を急ぐのだ!」 「ハルヴァルドー閣下、ラミア様にご報告は・・・」 「否・・・この眼でキャプテン・ハーロックと確認するまでこの話はラミア様には伏せておく。またあの口うるさい乙女どもがしゃしゃり出てきては迷惑だからな。急げ!」 「ははっ!」 部下達、そして兵士はその場を小走りに去っていった。ハルヴァルドーはどっかりと玉座に座り込み天を仰いだ。外宇宙での時間はアンドロメダより急速に動き、そして速まっていることを痛感した。 「リヴァイアサン・・・恐ろしい名だ・・・。キャプテン・ハーロック・・・お前は死神にでもなるつもりか・・・!」 |
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