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第一章9
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| ヘルブラディ 大地の揺れはおさまるところをしらず、ひたすら揺れ続けていた。三人は大地の揺れに足を取られながらもマヌエラの待つ小屋へ戻ってきた。 「なぜ白鯨が鉱石を回収しに来たんだ?」 「バルザックは消滅した・・・それはずっとずっと昔の話だ。俺は惑星を離れていままでいろいろ調べてきたが・・・プロメノイドとかいう組織が奴らを使って銀河系に向けてを航行を開始していた」 「プロメノイド!メタノイドが新たに開発したという高次元生命体の事か?」 ハーロック、トチロー、ホセは小屋の窓から鉱山を見つめた。鉱山からメタノイドが多数出てきているのが見える。いよいよ鉱石を運び出すための準備が始まった。 「どうするんじゃトチロー!このままでは鉱石が採られてしまうぞ。お前さんアレを採るためにココに来たんじゃないんか?この時がくるのを待っとったんじゃないんか!」 「・・・そ、それが・・・」 トチローの表情は厳しかった。ヘレス鉱山にある鉱石はただ物では無い・・・以前マヌエラがトチローに話した「とても恐ろしい鉱石」の意味を知ってしまった様だった。マヌエラが言葉に詰まっているトチローの代わりに彼らに話し出した。 「ヘルブラディ鉱石・・・あの山に眠っている鉱石は・・・精神生命を持つ鉱石ヘルブラディ」 ヘルブラディ鉱石。伝説では過去の墓場と呼ばれる場所に在ると言われている。それ自体が固有の精神を持っているともいわれ、時の魔女がその暴走を恐れてブラックホールの彼方に封印したと言い伝えられている。一説では、遙か昔にそのブラックホールに閉じこめられたある一族の血の結晶、あるいは憎悪の結晶だともいわれている。 「そんな・・・バカな・・・」 「時の魔女は今から1000年ほど前、新星爆発によって生まれた蟹座星雲のブラックホールにヘルブラディを封印したの。以来、蟹座星雲は黄泉の国と語られ、誰も近寄ることは無かった・・・でも、時が経ち、数々の戦いによって時空は歪み、その結果、ブラックホールは消滅して、ヘルブラディを封印した場所・・・つまりココ惑星ヘレスだけが残った。過去を知らない愚か者達はここを惑星と思いこみ、上陸して兵器を作るための基地にしようとした・・・でも封印はそれを許さない。だから地殻変動で追い出してきた。でももうすぐ1000年の封印がとかれる。そして封印そのものもその力を失いつつある。そうしたらココは滅びるわ」 「滅びたらどうなるんじゃ?マヌエラ」 「ヘルブラディには正しい主が必要だわ。主無くして滅びれば、ヘルブラディは大宇宙を彷徨って多くの災いをもたらすでしょうね。・・・もっとも災いを好む者達がこの宇宙にはたくさんいるけど・・・」 「ただでさえ災いをもたらすと言われている精神生命鉱石がそんな奴らの手に渡ったら・・・えらいことになる」 トチローがうなるように呟いた。彼は度々惑星ヘレスを離れては、鉱石採掘の手だてを考えていた。その最中にプロメノイドの存在を知ることとなった。正直トチローにはどうしていいのか分からなかった、ただマヌエラが鉱石を採るためにやってくる人物を助ける役目を自分が担っているのは確かなのだが。 「トチロー・・・貴方は貴方のやるべき事が分かっているはず。」 マヌエラはそう言ってハーロックに歩み寄り、コスモドラグーンを手渡した。 「1000年の伝説が終わろうとしているわ。プロメノイドにヘルブラディの封印を破らせてはいけない。大宇宙を虚無にしたくなければ、貴方が封印をときなさい。ハーロック、貴方はこの時のためにココを訪れることを余儀なくされた宿命の持ち主・・・こうなるべくして生まれてきたの」 「俺達は大宇宙を旅する夢がある。そのために課された宿命ならば、目をそらすことはできないな」 ハーロックはコスモドラグーンを受け取った。マヌエラは泣きたくなるのを必死にこらえて笑顔でハーロックを見送った。 「アルバ、どうやらさきほどの飛行艇は墜落したようだな」 「はい閣下。残骸のスキャンの結果、あの飛行艇には一人の生命体が積まれていたようです・・・。まだ地表に微量ですが、生命体の反応が見られます。しかしながらあの地割れの感じ。地殻変動が起きているようですね。これ以上の攻撃は危険かと」 「そのようだな。上陸して採掘の手だてを打つとしよう」 巨大モニターには先ほどトチローが乗っていた飛行艇の残骸をとらえていた。ヴェルセルークの口元がゆるんだ。しかし、彼の目が飛行艇の残骸の向こうに人影をとらえ、その部分を指さした。 「人間!まだヒューマノイドが居るのか!」 アルバの手元のレーダーは微弱な生命反応を点滅しながら知らせている。ヴェルセルークは鉱山にむかって歩いている男の姿を見つめた。彼の機械の目はそれが過去に見たことのある人物であることを知らせている。 「この人間を拡大画面に映せ。どんな輩か見てやろう。」 「は!」 アルバは荒野を歩く人物に焦点を当て、モニターに拡大投影した。微動だにせず、じっとモニターを見つめるヴェルセルーク。アルバにはその手が小刻みにふるえているように見えた。 「この男・・・・いつかダラスでヴェルセルーク様の剣のご慈悲に与った若者ではございませんか?」 その時、高らかな笑いが艦橋上部から聞こえてきた。カルナだ。 「知っているわ。よりによってまたこんなところで出会うとはね。それに、ご覧なさい。あの顔の傷!ヴェルセルーク、貴方が慈悲なんて掛けるから・・・いい男だと思ったけど、ずいぶんひどい傷になってしまったのねぇ」 カルナはヴェルセルークの元へすがるような目で近づき、その手を取って口づけをした。ヴェルセルークはカルナの腰に手を伸ばし、カルナは彼の胸にもたれながら指をその胸にすべらせた。 「あの男。なかなかの腕だった。地球人にしてはね。私好きよ・・・ああいうの。アルバよりは楽しみがいのある男だと思うわ。また会えるなんて。」 「地球人を甘く見るな・・・あの者、あの目・・・あの男と同じ輝きを放っている・・・!ダラスで会ったときは気づかなかったがな」 ヴェルセルークの脳裏にキャプテン・ハーロックの姿が浮かび上がった。太陽系での闘いで大敗したその時の事と共に。 「アルバ、上陸する。後をたのむぞ。あの男に・・・・引導を渡してやる」 ヴェルセルークは蒼のベルベットローブを翻しながら踵をかえして艦橋を去っていった。その後をカルナが小走りでついていく。アルバは一礼して二人を見送った。 ハーロックはまぶしげに上空を見据えていた。彼には白鯨の姿がはっきり見えていた。足下は今だ揺らいで細かい地割れが方々に渡っているが、まだ立っていられる状態だった。青い白鯨から見覚えのある銀色のシームレス機が飛び立った。太陽光が反射してその形すらはっきり見えないが、ハーロックには分かっていた。強制労働施設で見たアレだ。 トチローは墜落した飛行艇から持ってきたコントロールユニットと、ハーロックがホセに手渡した小型通信機を使って驚くべき速さで遠隔操作用の機械を作りはじめた。 「何をしとるんじゃトチロー!白鯨から戦闘機が降りてきたぞ!」 「あぁ、分かってるよ。だがな・・・あっちが攻撃するならこっちだって攻撃態勢を取ってやる。俺の人工惑星には次元重力波を装備してあるんだ」 ホセはわなわなしながら窓の向こうを見た。シームレス機から降りたヴェルセルークがハーロックに歩み寄っていた。 「しばらく振りだな・・・その傷、なかなか似合っている。まさかまた会おうとはな」 「運命・・・・というヤツだな。ヴェルセルーク!」 ヴェルセルークの動きが一瞬止まった。あの時、ダラスの決闘の時、彼は名乗らなかった筈だ。ハーロックも理由は告げず、サーベルに手を掛けた。 「惜しいな。お前のような腕の立つ男は是非とも我が艦に迎え入れたいものだったが・・・やはりそうも行かぬか」 蒼のローブが宙を舞い、それと同時に甲冑ともつかない身体のヴェルセルークがサーベルを手にした。彼の身体はダラスで見た時と比べ一段と大きく、多くは機械の部品に取り替えられているようだった。二人のサーベルは地殻変動の始まりを告げる轟音と共に交わった。磁場で砂塵が舞う。トチローは小屋の窓の向こうで狂喜乱舞しているに違いない。ハーロックの動きの一つ一つがトチローの知っていた頃とは見違えて素早く、隙が無くなっている。その猛撃はヴェルセルークに攻撃の隙を与えなかった。そして正確かつ強力な一撃をヴェルセルークに見舞っていた。ヴェルセルークの左腕が宙を舞う。肩の電気線がむき出しになり、ショートした。 「くっ・・・あ、甘く見ていたようだ。・・腕をあげ・・・たな」 がっくりと膝をついて切り落とされた機械の肩を押さえた。 「ば、ばかな!おのれ・・・!ヒューマノイド!」 シームレス機のコクピットにいたカルナが驚愕の表情でわななき、シームレス機を操縦しながらハーロックに向けてミサイルを発射した。 「き、汚いぞ!こら!」 「ホセ!だめだ出ちゃ危ない!」 ホセが小屋から走り出した。その後をトチローが追う。 トチローは飛び出していったホセの後を追い、腕を掴んで小屋に戻そうとした。地割れがさらに進み、小屋の前の道は徐々にその近辺の小屋を飲み込んでいく。トチローのみごとながに股は見事に大地に吸い付き、ゆがむことなく走り続けた。ミサイルは執拗にハーロックを攻撃していたが、地殻変動の揺れに阻まれてただ荒野を削るだけだった。 「思い出したぞ・・・もうずいぶん昔の話だ。・・・地球でお前に会った。お前がまだほんのガキだった。その目・・・真の戦士の瞳。あの男と同じ眼をしている・・・大宇宙の悪魔、キャプテン・ハーロック!」 ヴェルセルークが立ち上がった瞬間だった。あわててヴェルセルークに近づこうとしたカルナの操縦するシームレス機はバランスを崩して岩石に衝突し、なおもミサイルを撃とうとした結果、暴発をおこして卑怯者を乗せたまま粉々に粉砕された。爆風でトチローとホセが転がる。トチローがついに地割れに足を取られ落ちそうになった。ホセがその手を掴む。 「トチロー!!」 「・・・くそ、俺としたことが・・・」 「い、いかん!トチロー!・・・コアが・・・発光しだしたぞ!」 「なぁにぃ!」 その時ヴェルセルークの前を高度を下げた白鯨が放射したビームでバリアを形成した。ハーロックは睨みながらそれをただ見つめるしかなかった。にわかに大地の振動は激しくなり、地割れした合間から岩石が吹き出しては雨のように落下を続ける。ホセは引き上げられてもなお地割れの奥に頭をつっこもうとするトチローを必死に引っ張るので精一杯だった。トチローは半べそ状態で地割れの中に頭をつっこもうとしている。 「よせ!やめんかこら!死んでは元も子もなくなってしまうぞ〜!と、トチロー・・ッ!」 「ホセ!離してくれっ。誰が死ぬなんていった!この星・・・いやぁこの星の鉱石は生きてるんだよ!畜生俺は・・・俺は約束したんだ。男の約束だ・・・生きて生きて大宇宙の旅に出るんだ!ちくしょうヘルブラディのやろうおとなしくなりやがれぇぇぇぇぇ!」 地割れの奥にトチローの叫び声が響いた。トチローはその時何かを感じた・・・地中深くで風が吹いている・・・声に反応したかのように赤色の光が地中からわき上がってくる。しかしホセの怪力で引っ張り上げられ、地べたにたたきつけられた。その時トチローは音を聞いた。 ゴゴゴゴゴ・・・・・ ハーロックにもその声は聞こえていた。地中深くから聞こえる、唸るような声が聞こえてくる。それは封印をといてほしいと懇願するヘルブラディのうめき声のようだった。 |
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