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ぷち・さだだ劇場7話
薬味 |
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宇宙を航海していると四季感覚が感じられない。歳を重ねた者にとっては四季おりおりの変化というものが懐かしい。このヤマト乗組員の大多数を占める者たちの故郷はもうすぐ夏。そろそろさっぱりしたつけ麺や冷やしうどん、そうめん、冷し中華などが食べたくなったりする。ヤマト菜園ではそんな要望によって取り立てて重要でないような野菜が時として大活躍することもあるのだ。
「も〜う、冗談じゃないよったく!何が悲しくて俺がとりにいかされなくちゃならないんだ」 ヤマト菜園の入り口でぶつぶつ聞こえる声は生活班に配属になった土門のものだ。入り口でパスワードを入力して菜園へと入っていくところを見かけたのは真田だった。ヤマトの長い航海でいつしか自分は大先輩。真田から見れば古代以上に若い土門らの成長を見ているのはとても微笑ましく、楽しい。困っているところを見ると、ついつい手を貸したくなってしまうのは親心みたいなものなのだろうか・・・。 「え〜とぉ、佐渡先生のねぎ・・・ねぎ・・このへんかな?」 「頑張ってるなぁ、土門」 「え、さ、真田副艦長!!」 びしっと敬礼する土門。エプロン姿にはその敬礼は似合わないなと苦笑いしている真田の後頭部には「にへらぁ〜」と笑っているぷちさだだがとまっている。毎回しつこいようだが、ぷちさだだは誰にも見えない。真田本人ですら小人さんの存在を感じたことこそあれ、よもや自分の後頭部に巣くっているとは思いもよらない事だ。 「ぶ〜〜〜ん( ̄〜 ̄) ぶ〜〜〜〜ん( ̄ー ̄)」 土門の緊張した顔の前に全くそぐわない『ベロベロバ〜』をしたぷちさだだが飛んでいる。 「どうした?何か探しているのか?」 「そ、それが・・・佐渡先生に『そうめん食うから薬味とってこい』って言われて・・その・・ネギコーナーにあるからって」 「ははは、そうかそうか。佐渡先生はご自分でこのへんの区画を作ってるからな。ふ〜む、そうめんの薬味か・・・」 腕を組んで辺りを見渡す真田。一方土門はしゃがみ込んでとりあえず草がたくさん生えてそうなそのへんをじっと見た。 「これですかねぇ」 「ん?そりゃニラだろう。薬味用のネギになるのはそっちだ。わけぎとかあるだろう」 横を向むくとつんつんと草が生えている。 「わけぎ?変な名前だなぁ」 思わずぷちさだだが腕を上げて自分の脇を見てポッと頬を赤らめたりする。ちなみに脇毛などは生えていない。 「なんだかいろんな種類があって分からないや」 土門はネギコーナーに生えている量の多さにため息をついた。若い彼にはどれもよく似ていてよくわからないが、区画で分けられているということは種類が違うのだろう。正直面倒くささが嫌気に変わってきた。 「べつに長ネギでいいですよね。俺それしか知らないし」 すると、親心満点で微笑ましく土門を覗き込んでいた真田の表情がすっと変化した。 「あぼ〜〜〜ん( ̄  ̄ メ)/」 土門がなかばあきれ果てたようにぼやいた一言にぷちさだだが反応してしまったのだ。ぷちさだだは不服そうな面持ちで慌てて真田の頭へと飛び戻り、何度もバトンで真田の頭を叩いた。 「べつに・・長ネギでいい・・・か?」 「だ、だってネギは栄養があるし」 おどおどと立ち上がる土門。何も真田をおこらせるような事は言った覚えがないため困惑した。というか言っていない。怒ったのはぷちさだだだ。 「確かに、ネギには栄養がある」 「そうです、ネギにはアリシンっていう栄養分が独特のにおいを出してて・・・たしか発汗作用があるんで風邪にいいって平田さんが教えてくれました」 「そうだとも。しかしネギには様々な種類がある!白ネギと呼ばれる根深ネギ・・それぞれがラーメンの具としてかつて多くのラーメン店がその個性をだすために様々な品種を使った。たとえば豚骨には九条ネギ、しょうゆラーメンに深谷ネギ、徳島ラーメンには青細ネギ・・」 突然ラーメンの話になって土門は引きつった顔が歪み出した。にもかかわらず、真田は眉毛のない眉部をぐぐぐっと力ませてなおも続けた。 「ちなみにだ。ニラはニンニクや玉ネギにはないカロチン、ビタミンEが豊富に含まれている。まぁお前には関係無いが、生理不順や、冷え性にも効果があることから女性にもいい。これらは油との相性がよいので、炒め物に向いており、中華野菜には欠かせないスタミナ野菜だ。ニラレバなんか最高だな。ん?レバニラだったか!?」 実のところ、ぷちさだだはラーメンや中華料理を頭に巡らせ至福を味わっていたらしい。ニラレバかレバニラか考え込んでしまった真田に声をかける土門。 「あ、あの・・・そうめんの・・・」 額をポンと叩いて大声を出す真田。どうかんがえても通常の真田の行動とは思えないのだが、土門はあまり彼のことをよく知らないため、ただ呆然と話を聞かされるはめとなる。 「おお〜〜おお〜〜〜そうだったそうだった。そうめんの薬味だ。いいか土門、よく聞け。なぜ薬味というかを教えてやる。『薬味』とは古来、薬草として使用されていたからという説もあり、ただの飾りではなく、何らかの効能をもつ有益なものであるのだ。お前のいったように発汗作用はもちろんのこと、魚や肉の臭みを消したり、殺菌したり、整腸作用もある!したがって、生ものをいただく時にはとても重要な役割をになっているのだ」 「だ、だから長ネギで・・・」 「いかーーーん!!いかんのだ土門!薬味はあくまでも主食の味を引き立てる『役味』としての役割を担っていることを忘れてはいかん!よく考えてみろ、ここに生えている長ネギは堅い上に辛みがつよい!さりとて、『わけぎ』はもともとネギとタマネギの中間にある。他のねぎと比べて刺激臭や辛みが少なく、独特の香りと甘みがあるが、やはりそうめんには多少ぴりり感が欲しい。したがって『あさつき』がこれに該当する!」 「はぁ?あさつき?なんですかそれ」 一瞬かたまる真田、次の瞬間座った目で土門を見つめるとこう言った。 「・・・・・そこに生えてるだろう。では、俺は実験で忙しいのでこれでな。お、もしよかったら今度ラーメンについて語り合わんか?」 「結構です!」 真田は「そうか」と小さくつぶやくと、きびすを返してすたすたと去ってゆく。へたり込むように土門がしゃがんだ。 「ちぇっ、そこに生えてるってどれだよ〜。もういいやこれで」 一番近くにあった柔らかそうなものを数本抜き取って土門はキッチンへと戻っていくのだった。 その後、佐渡が土門を怒鳴りつける声がヤマト中に響き渡った。よりにもよって土門はネギでもなんでもない「ミーくん用ネコ草」を薬味で使ったらしい。もっとも、ニラとネギの区別も付かない土門にとりにいかせたのが悪かったのだが。 「苦労して船底から這い上がってこい、土門!俺はそんなお前を待っているぞ!」 ぷちさだだが意地悪げな笑顔と共に言ったとか言わないとか・・・。 |
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