ぷち・さだだ劇場3話
ピーマン
ヤマトは度重なる戦闘で受けた損傷を修復しながら航行する。こういった時、つねに真田ひきいる工場班が驚くべき速度で修復をしていくわけだ。しかし、戦闘が起きる度に大きな箇所の修理におわれ、小さい箇所の修理が後回しになる事は日常茶飯事。時としてはヤマトをどこかの小惑星に停泊させ、修理に時間を割く事もいた仕方ない。大部分の修理を終えるころ、真田が一番緊張する時間だった。他のクルー達が久しぶりの休みと息抜きしている最中、小さな箇所の修理の為に艦内をくまなく歩き回る。
ーーーさぁてと・・・最後はここか・・・ーーー
真田が入っていったのはヤマトの食堂こと「ヤマト亭」。
「あ、太田!!」
「ひえっ!!真田さんっ!」
「仕方の無い奴だな・・・まぁ、腹が減ってはなんとやらというからな、大目に見てやるよ」
「すみません〜。一応航海長には許可とってますんで」
頭をぺこぺこ下げながら、嬉しそうにピザを頬張る航海班員太田がいた。苦笑いの真田はひょいとカウンターを飛び越えてスパナをくるっと投げまわすとニヤリと笑ってオニギリ製造機をトントンと叩く。
「修理ですか?」
「うむ、大きな箇所の修理はしていたが、小さい故障箇所は手つかずだったからな。こういう時にやっておかんと」
「小さい・・・箇所ですか。それくらい放っておいて、真田さんも休んだらどうです?皆久々の休みだって遊び回ってるのに〜」
「小さな箇所の故障を放っておくと大惨事につながるやもしれんだろう。そんな悠長な事は言ってられんよ」
太田はオニギリ製造機の故障がどう大惨事に繋がるか考えてみた。
「まぁ、戦闘中にそのマシーンが止まっちゃったら、俺みたいな大食いは困りますからねぇ」
とりあえずそれが太田にとっての大惨事らしい。太田はビザを食い終えて、カウンターに皿を持っていきながら真田の方を覗き込んだ。すると、真田も太田の方を見る。太田の食べていたピザの皿の片隅に緑色の固まりが気になった。
「太田、何だ・・・ピーマンが嫌いなのか」
「へ?あぁ、子供の頃からこれだけは苦手で・・・」
「好き嫌いはいかんな。大きくなれんぞ」
「あ?あははいいですよぉ、今さら。ガキの頃からさんざんそう言われていつのまにかこんな大食らいになっちゃんたんですから」
真田はカウンターにスパナを置いて、皿の上のピーマンをじっと見ていた。おしゃべりな太田はなおも話を続けた。
「そうそう、子供の頃タマネギも嫌いで、よくばーちゃんに言われたんですよ。タマネギ食べると頭がよくなるから食えって。何でだか知ってます?」
「いや」
「ぎっしりつまってるからなんですって。それだったら中身がすっからかんのピーマンは食べるとバカになるって思いません?わらっちゃいますよねぇ〜〜」
「バカになる?」
ピーマンの固まりを凝視し続ける真田がふと疑問を抱いた。
「バカになるとは聞き捨てならんなぁ・・・」
真田が修理に頭脳を働かせたためにぐっすりと寝てしまっていた『ぷちさだだ』が「バカ」という言葉で目を覚ましてしまった。
『あぼーーーーん!( ̄^ ̄)/』
ぷちさだだが太田の発言に疑問をもってしまった。ぱたぱたと羽をぱたつかせて太田の回りを飛び回る。当然、見えない存在のために太田は気付かないし、真田もわかってはいない。
『ぶぶぶぶぶぶーーーーん』
ぷちさだだは太田の頭に蹴りを加えながら主人である真田の頭にまた飛び戻り、バトンで彼の頭を叩いた。とたんに真田は血走った目で太田を凝視する。
「太田!」
「は、はいっ!なんですか急に!」
「いいか、ピーマンをたべてバカになるんだったら今頃俺はどうなってるんだ?あぁ?そうだろう?俺は野菜が好きだ、ピーマンだって大好きだぞ」
「い、いやだからガキの頃の自分がそう思っただけで、べつにバカになるからと思って食べないわけじゃないですって・・だから・・」
突然、食って掛かる様に身を乗り出してきた真田に困り果てる太田。だが・・・
「ピーマンはナス科の野菜で、抗癌作用のあるポリフェノールはもちろん、ビタミンCはトマトの約4倍も含まれているんだ」
「え、栄養があるのはわかってますけど・・・」
「しかもだ、ピーマンの緑色にはクロロフィル・・・すなわち葉緑素が含まれているんだ。コレステロールを下げたり、血液をサラサラにしたり、疲労回復にも約に立つ!さらに!シミやそばかすを防ぐから美肌効果もあるわけだ!わかるか!」
「そ、そりゃぁスゴイですねぇ。いや、身体にいいのはわかりましたよ。そうそう・・・美肌効果があるんだったらぜひ雪さんに教えてあげたほうが・・・」
すると真田はぶんぶんと頭を振りながらカウンターを両手でバン!っと叩く。
「太田!」
「はいいっ!!」
「お前の所属は、航海班だな?」
「そ、そうですよ・・・それがどうしたんですかぁ?」
真田が腕を組んで深く頷く。太田はこの頷きが恐かった・・・。
「航海班のトレードカラーは?」
「み、・・・緑・・・です」
「だったら食え!この緑のピーマンはそんなお前のためにある野菜だ!」
「ええっ〜〜!そんなこといったら赤ピーマンは古代さんの為にあるってゆーんですか?」
「いいや、南部かもしれん。オレンジはさしずめ徳川機関長、黄色は雪・・・いや、相原・・・そうだ!コスモタイガー隊かもしれん!」
手のひらをポンとげんこつで叩きながら喜んでいる真田についていけない太田が逃げ出そうと後ずさろうとしたが、真田の長身からのばされた腕は目もくれぬ早さで太田の襟首を掴んでいた。
「そんな事はどうでもいいんだ。食うんだ太田!さぁ!航海班のお前が食わねば緑のピーマンさんに申し訳が立たんと思わんか?」
太田はその場に島がいない事をこれほど後悔した事は無かった。しぶしぶフォークに山盛りのピーマンを口に頬張る太田。あまりの苦さに涙目。
「えらいぞ太田!これで好き嫌い克服だ!」
真田は満足げに頷くと、またスパナをもってオニギリ製造機の修理をはじめたのだった。
太田は思う。「じゃぁ工場班の青はなんなんだよ・・・」と・・・。だがもう何も言うまい・・・。ピーマン・・・小さな一言が産んだ、太田にとっての大惨事だった・・・。