ぷち・さだだ劇場第13話
自由研究
ヤマトの乗組員はいわば国家公務員。地球の危機が訪れているときはいざ知らず、地球に帰還している間はせめて夏休みなどは欲しいものである。休みが終われば銀河系基地への物資輸送やら、太陽系内パトロールやらとかり出されてしまう彼等にとって、休みというものはとても貴重なものである。そして、彼等の家族にとってもそれは同じである。

たとえば、幼い孫の顔を見るのが楽しみで仕方がないとか、防衛軍基地から遠く離れた実家に帰って親を安心させるとか、甘えるとか、女子をナンパしてドライブにさそうとか、夏休みにそこここで行われているイベントにくり出すとか、夏しか食べれない旬の食べ物を食いまくるとか、海で泳ぎまくるとか・・・いろいろである。

しかし・・・である。
夏だろうが冬だろうが季節関係なく同じことをしている人物がここにいる。真田だ。
「あぼーーーーーーんっ!!Σ( ̄皿 ̄;; 」
ぷちさだだが切れた。

実家はないし、家族もいない。女子をナンパする勇気もなければ、しようとしても成功したことはない。だいたいこういうのは古代(守)が得意としていたが、そのためにいつもセッティングやらなにやらと使いっぱの様に翻弄させられた思いでがある。イベントで羽目を外す気にもなれず、ましてや遊園地は大嫌いだ。海にいこうものなら自慢の機械の手足がどうなることやら気が気ではないし、たとえプールでも、水着姿になるのをはばかる。そんな真田はただただ研究室にこもってヤマトの新たなる改造計画に勤しむか・・・あるいは整備・・・あるいは・・・まぁいいだろう。

いずれにしても・・・そんなふりして、真田にとっては実はとっても皆の事が羨ましい夏休みなのである。
そんな羨ましい気持ちがぷちさだだの怒りを増幅し、めったやたらと真田の頭をバトンで叩きまくれば、さすがの真田もターゲットを探さざる得ない。いや・・・分かってやっているわけではないのだけれど。

「大介兄ちゃ〜〜〜ん!」
「次郎!元気だったか?」
帰還後に一連の手続きを終えて防衛軍基地から出てきた島の前に、少々年のはなれた弟の次郎が走りよってきた。久しぶりの再会である。島は少し大きくなった次郎を眺めてから、満面の笑みを浮かべて頭をなでてやった。次郎は目を輝かせながらそんな兄を見つめている。
「ねぇ、兄ちゃん。ヤマトが帰ってきたら中を見せてくれる約束だろ?」
何をわくわくしているかと思いきや、そういう事だった。ちなみに地球の危機をすくった戦艦ヤマトの操舵長を兄を持つ次郎は学校ではちょっとしたヒーローだ。これくらいの年齢だと、そんな風に周りに持ち上げられると、ついつい悦に浸ってヤマトの凄さを友達に語る。大して知らない事を誇張して言うものだから、あとでヤバいことになる・・・。
「次郎・・・だからそれは・・・」
「乗せてくれるって言ったじゃん!兄ちゃんの席に座らせてくれるって言ったじゃん!」
まぁ・・・よくある話だ。子供がしつこくうるさいため、生返事で適当に相づちをうってしまう。適当に「じゃぁ今度連れてってやるから」とか言ってしまうと、こういう時に嘘つき呼ばわりされて困り果てる。まさに島はそんな状態であった。
「だめだだめだ!ヤマトは玩具じゃないんだぞ!?」
「嘘つき!!大介兄ちゃんの嘘つき!夏休みの自由研究でヤマトの事書こうと思ってたのにどするんだよ!!」
「えぇ?・・・んもぅ・・・まいったな。じゃぁ俺がいろいろ教えてやるから・・・」
「嫌だ!ヤマトに乗りたい!!乗せてくれるって約束だ!男の約束破るのかよ!」
「悪かったよ次郎・・・謝るから・・・勘弁してくれよ」
ぷぅっとほっぺたを膨らませて拗ねる次郎。男の約束と言われてしまってはさすがの島も少々凹み、浅はかな自分を責めつつ頭をぽりぽり掻いていた。そこに救世主が現れた。

「あら、次郎君じゃない。久しぶりね」
「あ、雪姉ちゃん。あー古代も一緒だー」
「・・・一緒で悪いか?」
ちなみに、雪は「雪姉ちゃん」だが古代は「古代」である。なぜなら古代守を「古代のお兄ちゃん」と呼んでいるからだ。
「ひゅーひゅー」
次郎は古代と雪が肩を並べて歩いているのを見て冷やかした。
「ねぇ、大介兄ちゃんひどいんだよ!帰ってきたらヤマトの中を見せてくれるって約束したのに破るんだ!」
「島・・・お前そんな約束したのか?」
迷惑顔の古代は島をギロっと睨んだ。島は「だってしょうがなかったんだ」と半泣き顔で訴えた。
「一般人をヤマトに乗せるのはちょっとなぁ」
「なんだよ、古代までそんな事言うのかよー。ちぇっみんなケチなの!」
「あのなぁ次郎?ヤマトは・・・」
「古代もいーっつもいい加減な事しか言わないから嫌いだよーだ」
「(-"-;) 島・・・ちょっといいか・・・」
古代は島の袖を引っ張って引き寄せた。
「お前の弟いつからこんなに物わかりの悪いガキになったんだよ!反抗期か?」
「知るかよ。まぁ・・・俺もろくに遊んでやれないから・・・少し歪んだかな・・・」
二人同時に振り向くと、そこにはやはり頬を膨らませて不満を訴える次郎の顔があった。

「いいじゃない古代君、島君も。生活班長の私が案内するわ」
「雪!?」
「ヤマトは夢よ。私たちもね。子供の夢を壊すようなことをしたらきっと沖田艦長だって怒るわ。これからの地球を背負っていく子よ」
「やっぱり雪姉ちゃんは優しいや!」
嬉しそうに飛び跳ねる次郎。そんな次郎を見ていると、やっぱり兄としてもほっとして嬉しくなるものである。
「よかったなー次郎。じゃぁ俺が働いている所を見せてやるとするか」
切り替えの早い島である。次郎は雪と手を繋いで歩き出す。島は次郎の反対側の手を取って歩き出した。
「お、おい!お前達!・・・ヤマトの乗艦は俺の許可なくして許さんぞ!艦長代理の俺の許可を仰げ!」
「権力を楯にするなんてかっこわるいわよ、古代君。さぁ、次郎君お姉さんと行きましょうね〜」
「え・・・えぇ??」
まるで三人親子のようにすら見える島、次郎、雪の後ろ姿を見て古代は固まった。結局、むっとした表情で彼等の後をついていく古代。その後ろをさささっと付ける人影があった・・・。

「でっかいなぁ〜〜〜!」
「だろう?今回はあまり酷い損傷がなかったから通常のドックで停泊しているんだ。いつもはもっとボロボロなんだぞ。被弾するとそれだけで随分と舵がとりにくくて・・・」
と、なにげなしに自分がどれだけ大変な思いをしているかを伝えてみるが、次郎はひたすらヤマトの巨大さに目を見張り、島の言葉はまったく聞いていない。
「だいたいなんで通常ドックになんか停泊させといたんだよ・・・修復用のドックにはいってりゃこんな事にならなくてすんだだろうに・・・」
ボソッと呟いている古代が背後に人影を感じ、即座に振り返った。
「ひっ!!・・・真田さん!!」
「・・・ほぉーヤマトの見学か。いいなぁ子供は自由で」
「いや・・・だめだと言ったんですが・・・」
「それよりいいのか?」
真田はこそーり現れて、こそーりと古代の傍に近寄り、前方を指差した。
「放っておくと、雪は島に靡くぞ・・・」
とたんに古代の顔色が悪くなる。そっと振り向いてみると雪と島、次郎もいない。焦る古代は走って開いているハッチへと向かった。

「ほら!走ると危ないって言ってるだろう?」
停泊中のヤマトは補助電源で艦内を照らすに留まり、いつもより薄暗く、自動で動くはずの廊下も今は普通の廊下だ。次郎ははしゃぎまくっていた。第一艦橋ももちろん薄暗く、外から入ってくるドック内の照明のせいで床がようやく照らされている程度。
「大介兄ちゃんの席はどこ?これ?あっち?」
「こっちは違うわ、もっと向こうよ」
よけいなことを雪が言うものだから、次郎はまた走っていった。
「ひろいなぁ〜〜〜!ねぇ!これなぁに?」
「あまり触るな!走ると転ぶぞ!」
「島君ったら、まるでお父さんみたいね」
「まぁ・・・父親みたいなものだけど・・・」
照れくさそうな島。微笑む雪。そんな二人の後ろ姿を見て、古代はさらに焦る。
『そこ!離れろ!!』と言ってやろうとずかずか第一艦橋へと入っていったとたん・・・。

「うわぁぁっ!!」
突然の次郎の悲鳴に一同ぎょっとする。無理もない・・・薄暗い艦橋の中にぼうっと白い物体・・・否、真田が立っていたのだ。
「ようこそヤマト第一艦橋へ」
ーーーげっ、い、いつの間に!?ーーー
さっきドックの外で古代と会ったはずの真田がもうここにいる。満面の笑みで。
「おっどろいたなぁ〜。真田のおじちゃんじゃないか!」
「お・・・おじ・・・」
次郎は真田の事を「おじちゃん」と言う。まぁ彼からすればそれくらいに見えるだろう。しかし同期の古代守は守お兄ちゃんなのに、自分がおじちゃんなのは気に食わない。だいたい子供は嫌いだ。特に夏休みを謳歌するこういうガキが嫌いだ・・・とぷちさだだは憤慨中なのだ・・・。

次回に続く・・・