ぷち・さだだ劇場第12話
武勇伝
戦いが終わり艦が帰還すれば次の出航まで皆別々の職務へと散らばっていく。次の航海で再会する者達もいれば、選からもれてこれっきりの場合もある。そのつど解散会をかねたパーティが催されるが、いかんせん若い男子ばかりの多いヤマトでは、しゃれたパーティなど性に合わず、たいがい運動会まがいのスポーツ大会で汗を流す・・・らしい。
問題はどんな競技を行うか・・・だ。
「やはりもめたか」
「もとより承知の上ですぞ長官」
「私らもああして睨合ったものだなぁ沖田よ」
「懐かしいですな。若い頃を思い出す」
「まさか老体にむち打って出るとか言うつもりじゃ?」
「何をおっしゃる長官こそ」
はははははは

沖田と藤堂の笑い声が響く。そのはるか先で繰り広げされているのは古代と島の睨合い。どちらも一歩も譲らない様子だった。そこに、二代目の沖田/藤堂と言ってもよさそうな古代守と真田がやってきた。遠巻きに第三代目の沖田と藤堂になるのか分からないが、古代と島のやり取りを見て苦笑いをした。
「おお、なんでも対抗試合をするそうだぞ。野球かサッカーかでもめとるらしい」
と藤堂の声。

そう、野球かサッカーかで対論していたのだ。

一対一のトーナメント戦などでは大旨優勝者が分かってしまいそうなもので、チームプレイによって何が起きるか予想のつかない団体戦を選び、そこから野球派とサッカー派に別れたと言うわけだ。野球を押す古代に対し、サッカーと言い張る島。お互い決着が付かなくなったのは以下の理由による。

投票結果
戦闘班の多くが古代に付くことで間違いなく野球に決まると思いきや、日頃の連係プレーが功を奏したのか、次に人数の多い機関班が航海班に付いたため五分となった。
生活班は通信班とつるんで仕出しの支度と会場整備、アナウンスをやるからと投票を棄権。
戦闘班の多くが・・・と言ったが、ある意味最後の頼みの綱となるはずだったコスモタイガー隊は「男は野球だ」と言い張る加藤に対し、「スポーツにまでヘルメットなんか冠れるか」と山本が言い、真っ二つに割れた。

「で、決まらないと・・・工作班はどうしたんだ?」
「帰還すると改修やら整備やらで何かと忙しいためまだ投票はしていないが」
「まぁ、お前たちはスポーツあまり得意じゃなさそうだしなぁ〜。ガリ勉の集まりだろ?」
訓練学校時、部活にも入らず半ば引きこもって研究に没頭していた真田の姿しか知らない古代守が軽くそう言うと、真田の目が据わった。
「・・・・・まるで、俺がスポーツできんみたいじゃないか?俺だって野球くらいはやるぞ」
「へぇ〜。ま・・・サッカーやるんならコーチくらいやってもいいし、俺はサッカーに入れとくかな」
弟の気も知らず、訓練学校時代サッカー部だった古代守がそう言う。このままだとサッカーになる可能性大だ。さらに真田の問いをほとんど気にとめていなそうな守の口振りがいけない。
「残念だな、真田。俺が一票入れれば票は動く。弟に文句は言わせない。サッカーに決まりだ」

「あぼーーん!」
ちょっと地球の重力酔い気味で不機嫌なぷちさだだが目を覚まし、一目散に真田の頭をバトンで叩いた。徐々にふるふると小刻みに震えたかと思うと、突如どんよりとした視線で古代守の顔を見つめる。
「俺を・・・侮るな」
「え?・・・あ、やりたいのか?。まぁお前ならきっとベンチで・・・」
「ベンチで?・・・ベンチでだと?・・・この俺にベンチを温めておけと!?」
ちなみに、古代守は真田の四肢が機械であることはなぜか知らないらしい。
「古代。これでも俺はな・・・凄いんだぞ」
「す、すごいって・・・なにが?」
恐らく進ならば目上の真田に対して何が凄いかをとりあえず何でも言うだろうが、同期の守はそんな気遣いもしない
せいでかえってまずい。いずれにせよ、真田の場合、凄さの焦点をどれに当てていいのか分からない事もあり、古代守は笑顔を引きつらせたまま目前の真田の豹変した顔に圧倒されてしまった。

「よく聞け俺の武勇伝っ!!」
「ぶゆうでん!?」
真田は大げさな身ぶり手ぶりでしゃべりはじめる。もちろんこれはぷちさだだの悪ふざけだ。しかし、ぷちさだだは誰にも見えない。

「訓練学校卒業記念野球大会。9回表0対1。バッターが一塁に出たところ滑り込みが悪くて負傷。俺が代走に出た。次のバッターは4番を控えてピッチャーゴロ。ピッチャーが一瞬エラーしたのを俺は見逃さず、一気に走ってバックホーーーム!!」
「えええええ!?」
一瞬のエラーで一塁からどうやってホームへと走ったのか、守は見当も付くまい。
「同点に持ち込んだために試合延長、俺は剛腕ピッチャーの初球をいきなりホーーームランっ!! カッキーーーン!」
「ぶぁっ!」
ブンと振った両腕が隣にいた守の顔面にヒット。なおも真田は妄想の大声援の中、清々しい目で遠くを(ホームランで飛んでいく球を追うように)見つめご満悦の笑顔だ。
「ま、遠征中だったお前は知らんだろうが」
「知るかよそんな話!!それにお前はアンドロイドか!?」
鼻を押さえて立ち上がった守。それに向き直り、勝ち誇った顔で真田は続けた。
「ふむ・・・奥歯を噛み合わせると光速で走れるし、膝からロケットが出たり、足の裏はブースター付きだし、指先からは鞭が飛び出す。それと目からビームが出るし、口からは高圧ガス、あぁ、それとな、この胸の錨マークは実はブレストファイアーといってレーザーが出るんだが・・・」
そんな細工はありません。ちなみに、ぷちさだだは全部できるらしい。というか、一応やってみるが、誰の目にも止まることはない。なぜなら・・・くどいようだが誰にも見えないからである。

古代守、もはや驚愕の表情のまま固まる。念のため言っておくが真田の手足のみが機械なだけで、特にこれと言って特殊な装備は無い。
「・・・・・わ、わかった・・・そんなに野球にしたけりゃ野球にしろよ・・・俺は投票しないから。な?」
あまりの豹変ぶりに恐れをなした古代守は宥めるように下手に出るしかなかった。
「分かればいいんだ古代君」
ポンと古代守の肩を叩いて深く頷く真田は、結局野球がやりたかっただけだ。
ーーースアーシア・・・やっぱり地球は居心地が悪かも・・・ーーー
イスカンダルが恋しい守であった。

「おお〜あの時のことはよく覚えておるよ、真田君。すばらしい功績だった。おかげで我がチームが優勝して万万歳だった!参謀長の悔しがった顔が今でも忘れられんよ」
なぜか最後の方は全く聞こえていなかった藤堂がにこやかに声をかけた。ちなみに藤堂は真田の四肢の事は知っているらしい。いや、これもぷちさだだのせいなのか?
「いやぁ〜それほどでも〜」
振り向きながら頭をぽりぽりかいて照れ笑いの真田。
時に長いものには巻かれるのがぷちさだだである。エリーと街道まっしぐら。目指せ長官の椅子・・・である。

沖田と藤堂は笑い声を響かせながらその場を去っていく。
「真田君の頭の周りが白くぼやけて見えた・・・いかんな、最近老眼が進んで」
「わしもですぞ。いや年をとるといけませんな。さっそく佐渡先生のところへ行きましょう」
・・・天国に近いものほどぷちさだだはよく見える・・・のか?
「おお、そうだ。久しぶりに飲み明かすとするかね」
「いいですなー」
目的が違う。
(以後フェイドアウトで)
「そういえばこの間、佐渡君がカレーの臭いがどうのと言っておったなぁ」
「それはカレーの臭いではなく年齢の加齢臭ですぞー長官」(ほとんど銭形のとっつぁんと大差無いしゃべり方)
「なんと!そんなものがあるのかね!?いやぁ彼といると勉強になる」
ははははははは

結局、対抗試合の内容が決まる前に出航となったためこの件は持ち越しとなった・・・らしい。