ぷち・さだだ劇場2話
レタス
宇宙戦艦ヤマト艦内菜園。通称「ヤマト農園」。ぷち・さだだは真田志郎の食欲程度では腹がいっぱいにならないのか、時に真田の身体から離脱しては辺りを徘徊。このヤマト農園で腹を満たしている。今日もヤマト農園をぷち・さだだが飛んでいた。
『ぶ〜〜〜〜〜〜ん』
ちなみに、彼(?)の大きさは、真田が小人と思う程に、小さい。せいぜい人間の顔程度といったところか。むしゃむしゃとレタスにかじりつく。だが、次第に彼はレタスの弾力のよさからか?居眠りをしてしまったのだった・・・。
「さぁて、今日は何を収穫するんだっけ?」
がらがらと手押しのワゴンをもって農園に現れたのは生活班班長:森雪と、その部下数名。
「とりえあえず、熟したトマトとお茄子。あ、レタスもよさそうね。あと、果物はブドウと梨だったかしら。うん、そうだわ、じゃぁ手早くお願い」
ということで、部下達がそそくさとトマト、茄子、レタス等をかり出した。つぎつぎにワゴンへと積み込まれたが、当然、その中にはぷちさだだが乗っているレタスもあった。どさっとワゴンに放り込まれてぼやっと目を覚ますぷちさだだ。
『あう。はん?ぶすっ!(怒)』
「じゃ、これでいいわ。食堂に運びましょう」
きびきびとチェックリストに積まれた野菜達のチェックを書き込み、優しい声と笑顔で部下達に指示をする雪。実際彼女は何もしていない。まぁそれはいいとして。ぷちさだだを乗せたままワゴンは農園を後にした。
「やぁ、雪」
「あら、真田さん」
「ほう、今日は新鮮な野菜が食えるな。上手そうなレタスじゃないか。夜食にレタスロールなんかいいなぁ」
「真田さんって本当にお野菜が好きなんですね」
真田はレタスを一つ手にとって、手のひらでぽんぽんと弾ませる。この上にぷちさだだが居る等、だれも見えてはいない。
『あう。あう。あう。』
「レタスはたくさん食べると眠くなるそうですよ。だから仕事のいそがしい真田さんの夜食にはあまり向いてないと思いますけど」
いつもの真田なら、ここで笑って去っていくはずなのだが。
『あぼ〜〜〜〜ん( ̄^ ̄)/』
ぷちさだだは雪が話した事に疑問を持ってしまった。ちょうど主人が居る事に気付いたぷちさだだがレタスの上から飛びたった。小さな羽をぱたぱたと動かし真田の後頭部につかまる。もちろん、誰にも見えていない・・・。真田の頭に捕まったまま、手に持ったバトンで頭を叩いたその瞬間だ。
「雪、レタスを食べると眠くなるのか?」
「え、ええ。ヨーロッパでは昔からそう言い伝えがあるんですよ。古い絵本で主人公がレタス畑でたくさん食べて寝てしまったっていうお話があるんです・・・えぇと・・・ピーター・・」
「ピーター??誰なんだそれは?」
「ウ、ウサギですけど・・・」
雪は小声でそう呟く。冷や汗を垂らしながら、よけいな事を言ってしまった様だと少々後悔した。ぷちさだだが悪戯を始めると、人の話に耳を傾けなくなってしまうのだ。
「しかしレタスを食べると眠くなるとはな。それは科学的に証明されている事なのか?」
「え、あ・・・それは・・・」
一応、雪は栄養学も心得ているのだが、この状況において頭が真っ白になってしまったのは、食って掛かってくるような真田の勢いのせいである。もちろんこれはぷちさだだの悪戯だ。
「あの、すみません、時間が無いので・・・はやく食堂に持っていかないと・・・」
「あぁ、そうか、すまんな」
雪はほっと胸を撫で下ろしながら、真田に会釈して食堂へと向う。フェイドアウトして聞こえる真田のつぶやき。
「そうか・・・レタスは眠くなるのか・・・。食べ物は専門外だったな・・・いかんぞそれでは」

しばらく雪は食堂でとってきた野菜をならべて献立を考えていた。早くしなければ一仕事終えた男達がわんさか食堂に押しかける。その状況たるや、凄まじいのである。だが・・・早くも食堂に駆け込んできた男がいる。
「食堂はまだ開店・・・・真田さん!」
「雪!分かったぞ!」
「え?」
「レタスがどうして眠くなるのかが分かったんだ!」
真田はなにかの大発見をしたかのように大声で食堂のカウンターに詰め寄った。カウンターごしに雪は少し退いた。
ーーーこんな時に!ーーー
そう思ったのも無理は無い。
「いいか雪。レタスが眠くなるという話はなんと古代ギリシャ時代から言われていた事なんだ。凄いじゃないか、お前はそんなに古い事を知っていたんだな〜〜。それでな、実はレタスには[ラクッコピコリン]という成分が100g中に20mg程含まれている。これが眠りをもたらす成分なんだ」
「え、えぇ、確かに・・・って、今まで調べていたんですか?」
「あぁ、そうだ。それでな、レタスには糖分や刺激成分が少ないために、よりこの成分の効果を発揮できるんだ。だいたいレタス100g〜200gで安眠だというデータを入手した」
「それはよかったですね。謎が解明できて、なによりです」
ひきつった笑顔でそういう雪。だが、真田はまだ止まらない。
「なんと、レタスには抗酸化作用のあるフラボノイドが含まれる。これは直射日光の当たる部分程たくさんあるんだが、なぜならこの成分は紫外線防御物質だからだ。さらに、ビタミンやカリウム、カルシウム、鉄、食物繊維をバランスよく含んでいる上!野菜としては珍しいビタミンEを含んでいる!!これは血行促進にも繋がるな。素晴らしい野菜じゃないか!」
「はぁ・・・」
いいかげん引きつった笑顔も沈んできた。
「レタスの安眠成分[ラクッコピコリン]は茎などからでる白い汁の中に多く含まれるんだ。しかし[ラクッコピコリン]とはへんな名前だなぁ。はっはっは」
「へ、変な名前ですねぇ・・・」
もう食堂の開店時間だ・・・。
「じゃ、そういうことで。謎が分かってすっきりしたよ。おっと、まだ調べものは終わっていないんだ」
「ま、まだあるんですか・・?」
「そう!ピーターというのがどんな種に属するのかを調べるんだ。人間の名前を持つレタスを食うウナギなんて珍しいじゃないか。また分かったら知らせるよ!じゃぁな!」
ーーーウナギ?種?何を聞き間違えているんですか〜〜!ーーー
真田、さわやかな笑顔で手を振って食堂を出ていく・・・と、同時にどたどたとヤマトクルー達が食堂へと入ってきた。もう開店時間だ。
ーーー間に合わなかった・・・ーーー
雪の顔から血の気が引くと同時に目の前のレタスを先ほど持っていたチェックリストで叩き潰す。
「せ、生活班長?大丈夫ですか?」
「後、まかせます」
「は・・・はぁ」
ーーーレタスしばらく見たくないわ。ウナギも・・・ーーー
そう心で呟いた雪はぷんすかと自分の部屋へと戻っていった。
「ウサギって言ったし!」
ベッド脇においてあるウサギのぬいぐるみの耳を掴んでしばらく睨んでいたとかいないとか・・・。

注:ちなみに、レタスにまつわる「ピーターラビットが眠くなる話」ならびに「食物における成分とその作用/効果」に関しては実証されている真実です。