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ぷち・さだだ劇場第11話
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一年とは早いもので、もうすぐ年末だ。宇宙戦艦ヤマトはこの一年の垢を落とすにはそれは時間がかかる。以前、砲術班での一件の如く、たとえ人員が数百人いようとも、この巨大にして未だ地球人には過ぎた科学とも思えるような物質などを用いられた各所・・・それはそれは手間のかかるものである。 大掃除。それぞれの班がそれぞれのプランを立てて作業に取りかかる中で、恐らくは大半をロボットに委任しているせいで人員が少ないと思われるのが生活班:炊事課だ。 「大掃除!?食堂と厨房を?」 「それだけじゃなくて、炊事課が関与している場所はすべて我々でやらなくちゃならないんだよ。森班長は第一艦橋組だしね」 「そんなのぉ〜」 不本意にも生活班:炊事課に着任した土門がぶーたれるも、平田はいつものように微笑んでキャベツにピーラーを滑らせていた。今日の食事はトンカツだ。土門が豚肉を力任せに卵液の中へと放り込む。 「一斉大掃除ともなると・・・ほかの班に食事を届けたりしなくちゃならないから・・・幕の内はそれに専念してもらうので、君と僕とがここを仕切ることになるね」 「なんだよそれ・・・」 豚肉にまぶしたパン粉を上から思いきり押し付けた。 「あぁ〜そんなに押し付けたらサクッと仕上がらんぞ」 「げっ、真田技師長!」 ーーーーこの人よくここ来るよなぁ・・・ーーー 内心迷惑な土門。一方の平田は一仕事終えた真田にミネラルウォーターを差し出した。 「技師長、今日はトンカツ召し上がりますか?」 「いや・・・トンカツは腹に凭れるから・・・魚のフライかなにかにしてもらっても構わんか?」 「そう来ると思って、アジとキスを用意してあります・・・土門、それは僕がやっておくから魚のフライを用意してくれないか?」 クルーの食事に気を使うのは炊事課にとって当然のこと。その鏡といわれる平田はクルーの中でも偏食がちな真田には特に気を利かせて材料を取り揃えている。 「はぁ〜い( ̄∩ ̄)」 土門は不満丸出しの顔でその場を離れた。 「不機嫌だな・・・また何か面倒なことでも?」 「大掃除の件ですよ」 苦笑いの平田が飽きれため息を漏らしながら呟いた。大掃除のすったもんだは真田もよく分かっている。技術班:工作室の器具の掃除もこの厨房に負けないくらい油まみれになる。アナライザーがいるからいいようなものの・・・。平田の日頃のこまめな掃除である程度はきれいな厨房も、よく見ればしつこい油汚れは見て取れる。 「ささっと掃除のできる物ありませんか?・・・あ・・・ここは口に入れるものを扱いますから・・・機械用の洗剤とかはだめなんですが。それに洗剤をそこら中に吹き付けると肌や目にも良くない。まさか宇宙服着て掃除するわけにもいきませんからね」 確かに、ここは厨房だ。ヤマトの巨大な機械部品を掃除するのとは訳が違う。 「でも、手抜きはしたくありませんし、少人数で魔法のように短時間で掃除をすまそうとすること自体無理ですよね」 「無理?」 『あぼーん( ̄  ̄ メ)/』 無理などという言葉は真田に向かって言うもんじゃない。真田の辞書には『無理』とか『不可能』なんて言葉は存在しないのだ。特に・・・ぷちさだだが起きている時には。 「あ、真田技師長!?」 平田が声をかけるも真田が黙って出ていってしまった。土門が開いて骨を取り除き終えたアジとキスをもって戻ってきた時には、肩をすくめてキャベツにピーラーを沿わせていた。 結局、真田が食堂に現れたのはすべての業務を終えて消灯した厨房の片隅で、いつものように平田が日誌をつける頃になってだった。 「平田!!」 「さ、真田技師長!?あ・・・いま魚のフライをあたためますね・・・もう今日はいらっしゃらないと思って、あとで持っていこうと思っていたんですが」 「そんなのは構わん。それよりこれを見てくれ」 ・・・と、真田の手の上に乗っているのはどこから見ても『スポンジ』だ。しかもピンク色で魚の形をした。そのあまりに子供じみた物体にちょっと顔が引きつる平田。 「スポンジ・・・?・・・魚の形していてかわいいですね?これがなにか?」 「超臨界ハイパーコスモ遠赤スーパーハイスピードDXなスポンジだっ!」 「な・・・なんだかとても速そうですね」 卓上ランプだけが灯る広い厨房に不釣り合いの大声を張り上げる真田。 「その名も『ずびずばスポンジ』!!( ̄▽ ̄) ニヤ」 勝ち誇ったが如く、なぜかヒーローのお面を被ったぷちさだだが真田の頭の上でポーズを決めた。 目前にずずいと出されたピンク色の魚形スポンジが顔にくっつきそうになってひょいと避ける平田。両面がちょっと固めの繊維で編まれているため、顔を擦ったらさぞかし痛いだろう。それより痛いのがスポンジの名前だ。 「ず・・・ずび・・・」 「すびっと登場、すびっと解決!どんな頑固汚れでも、ひと擦りであ〜〜〜ら不思議!擦ったところがぴっかぴか!!・・・ちなみに、この目に当たる部分には穴があいているから紐を通して壁にかけておけるという気の利いた細工付きだ」 「そ、それは気が利いていますねぇ・・・」 どんなに人のいい平田でも、さすがに冷や汗が出る。そんな細工は今時どんなスポンジでもあるだろうと。 「さらにだ・・・」 さらに・・・魚形にしたのは握りやすいからだとか言い出すんだろうと平田は思った。しかしそんなことはまるっとお見通しな真田だ。 「内部の柔らかい部分には、油汚れや茶渋も一気に落とす特殊な洗剤が編み込まれている。ナノサイズまで汚れに妥協を許さぬその完璧なまでのパフォーマンス!試してみたいだろう?」 「ナノ・・・サイズですか・・・?」 勝ち誇ったように頷くと、ニヤリと笑って腕を組む真田。呆気にとられていた平田がようやくスポンジに手を伸ばす・・・が、一瞬早く真田がそれを取り上げた。 「悪いが一個5000円で提供だ。・・・年末決算をしていたらどうも経費を使い過ぎていてな。確定申告時に少しでも所得がないと防衛軍からクレームが来る。ここの掃除ならそうだな・・・さしあたって50個は卸した方がいいが・・・いかがかな?」 ーーーーいつから個人事業主になったんだよあんたは!ーーーー 愕然としていた平田だが、翌日厨房に『ずびずばスポンジ50個入り』と書かれた段ボールが運び込まれたのは言うまでもない。計算にうるさい平田が自分だけの小遣いでうめるわけはなく、その被害は土門にまでおよんだだろう。 ちなみに、このスポンジは年末の大掃除には第一艦橋をはじめヤマトの随所に見られるだろう・・・。これで真田の決算無事終わるというものだ・・・。 |
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