ぷち・さだだ劇場第9話
花粉症
真田志郎。言わずもがな、宇宙戦艦ヤマトの技師長である。多くの・・・否、すべての乗組員が彼に敬意を払っている。次々に襲いかかる危機から幾度となくヤマトを救ってきたその才能と技術だけでなく、思慮深く、優しく、決してその知識におごることなく、年下のクルー達を日々叱咤激励し、その人望の厚さたるや素晴らしい。
常に未知の空間において未知の敵、未知の物体、未知の武器、未知の現象に遭遇する中で、
「これは○○だ!」
と言い切っても、誰も
「なんでわかるんだよ!?」
なんてことは思わない。真田は何でも知っているのである。

「ぶええっくっしょい!! あ゛ーー。」
艦載機格納庫に響く加藤の大きなくしゃみは断続的に繰り返された。それに我慢の限界を感じた同僚山本が叫ぶ。
「きったねぇな!こっちに飛んでくんだろが!口を手で覆え!」
「あ〜すまん。でも、手が油まみれでな。ずる。 はぁ・・・・・。ふぇ・・・ふぇ・・・ぶぇっっくしょんっ!!ちくしょう〜」
「本当に佐渡先生は何でもないって言ったんだろうな?」
加藤はティッシュで鼻をかみながら頷いた。ここ数日急激にくしゃみが止まらなくなり、やがて目がかゆくなり、鼻水は止まらない症状が続いている加藤は当然の如く佐渡のところへ行って診療を受けたが、風邪でもなんでもないと診断された。この数日間のコスモタイガー隊員の様子からしても、感染性のものではないようなのだが、隊長がこんな調子では隊員は心配で仕方がない。

隊員たちが次々と格納庫からそれぞれの部屋へと戻る中、大隊長である加藤はこの異様な状態によっていつまでたっても整備がはかどらず、一人格納庫でくしゃみと格闘していた。
「へぇ・・・へぇ・・・・・・・・くそっ!出なきゃ出ないで気持悪いっ! くそっ、やる気が起きん」
「どうしたんだ?加藤」
こういう時になぜかいるのが真田だ。彼はちょうど波動エンジンの様子を見てきた次いでにその下にある格納庫へと散歩していた。次々と格納庫から戻ってくる隊員達のむこうから、ひときわ大きなくしゃみが轟いているのを聞き逃すはずもない。
「あ゛〜〜真田技師長・・・」
なんとも情けない声を出しながら振り向いた加藤は目が真っ赤に充血し、涙まじり。手が使えないために鼻には鼻水落下防止にティッシュが詰め込まれている有り様だった。ちなみに先の「飛んでくるだろが!」の山本の言葉にある飛んでくるものとは鼻栓のことを指す。

『けけけけけΨ(▽´)ΨΨ(`▽´)ΨΨ(`▽)Ψ』
やけに機嫌の良いぷちさだだ。加藤の顔の有り様を見るや否や腹を抱えて笑い転げた。いつものことだが、ぷちさだだは誰にも見えない。真田の頭の上に常駐しているも、真田本人ですらそれは未だ知らない事だ。

「酷い顔だな。どうした?」
「それが佐渡先生にかかっても何でもないっていわれたんですよ。風邪だと思ったんですけど。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ・・・」
「確か、コスモタイガー隊は数日前に衛星ポーレンで演習を行ったな?」
それとこれがどういう関係が?と加藤は首を傾げる。
「・・・花粉症かもしれんな」
「へ・・・なんですか?それ」
時は23世紀(あたり)だ。地球ではすでに『花粉症』などというものはなくなっている。そもそもアレルギー体質というものすらも見られなくなっている(たぶんね)。
「衛星ポーレンに自生している樹木の花粉がコスモタイガーのエンジンなどで舞い上がった結果、その花粉によってお前はアレルギー症状を起こしたんだ」
「んな莫迦な!だったら山本も鶴見も坂本もみんななるはずですよ!なんで俺だけがなるんですか。おかしいでしょう。いくら物知りの真田さんでもそれは話が突飛すぎますって」
と、鼻栓をつっこんだままの加藤が爽やかに笑ってみせた。・・・が。

『あぼ〜〜ん!(σ-"-)σ』
唐突だが、ぷちさだだが疑問を持ってしまった。なぜ突飛なのか!? 例によってバトンで真田の頭をポカリと叩くや否や、真田の目が見る見るうちに座ってゆく。向かい合った角刈り同士。加藤の方が剃り込みが鋭いが、目つきは真田の勝ちだ。
「お前は自分自身のことを何も分かっとらんようだな。お前の遺伝子の濃さがこの事態を招いているということを!」
「い・・・遺伝子って・・・いきなりそんなこと言われても・・・」
「いいか、花粉症とは鼻がむず痒くなって、くしゃみを連発し, 水ばながたくさんでたり、鼻詰まり症状もだ。 鼻のほかに、目のかゆみ、ゴロゴロする、涙がでる、咳がでる、のどがゼイゼイする、顔がほてる、寒気がする、 皮膚がかゆい、 腹が痛いなどの症状を伴うこともある。風邪と似ているため間違えられることがあるが、症状の多くは 空気中に 飛び散っている花粉を吸い込んで起こるアレルギーで、これを花粉症という」
ちなみに真田は背が高い。若干加藤を上から押さえ込むかのように語りはじめた真田。加藤は自機と真田に挟まれつつ、いつもの糞真面目な顔をいっそう真面目にして耳を傾けた。・・・といっても、鼻栓姿であってはどうあっても真面目には見えないが。

「地球にアレルギー症状というものが少なくなってずいぶん経つが、それは人間がアレルギーに強くなったのではなく、強くなったように見えてただ抑えていただけに過ぎん。お前の先祖にはアレルギー体質だった人がいたんだろうな。花粉症そのものが遺伝することはないが、発症率は三等親までにアレルギー体質がいる場合は約90%、そうでない場合で約30%だ。地球にいれば発祥しなかったのだろうがな。ま、お前みたいに色濃く遺伝子を受け継いでいるやつは、その分遺伝的発症率が高くなってもおかしくあるまい?」
口元を( ̄▽ ̄) ニヤリと歪ませて、勝ち誇ったように語る真田。そんなことかとあきれてつぶやく加藤。
「色濃く遺伝子ってねぇ・・・じゃぁ山本達は色薄いわけですか?」
色薄い遺伝子っていうのはどんなだろう?自分の発言に若干疑問を抱きつつ、言ってしまった事を今さら撤回しないのが漢:加藤三郎である。
「お前の色濃さは一目瞭然だ。お前と四郎、見分けがつかん」
(え( ̄д ̄) そこかよ・・・)
「ついでに言っておくが、睡眠不足、生活時間が不規則、精神的なストレスがたまっている、などは自律神経が乱れ、免疫機能が正常にはたらかなくなり花粉症になりやすい。お前はどれにも当てはまる。さりとて訓練中に眠くなるのを懸念して抗ヒスタミン薬は処方されんだろうから、とりあえずこの格納庫を一斉洗浄しろ」
「お、俺がですか!?」
「それとも・・・この先ずっとその鼻栓姿で航海をつづけるのか?・・・そのうちヤマト艦内に花粉が散らばって、誰ともなく花粉症を発症しはじめたら・・・・・お前、恨まれるぞ」
ニヤリ笑いはなにも真田だけでなく、頭上のぷちさだだもだ。それもいつの間にかバトンをペロペロキャンディに持ち替えてご満悦のニヤリ笑いだ。

唖然呆然の加藤を残して真田は去ってゆく。一人ポツと格納庫に残った加藤に再びくしゃみの応酬。
「洗浄って・・・・・一人で出来るわけないだろ。・・・ふえっくしょんっ!!・・・はぁ・・・」

その後・・・・・

「ちょっと待って下さい艦長代理!・・・隊長の声がもごもごしてよく聞こえなかったんですよ!マスクなんかしてるから・・・」
「あぁ、マスクしろって言ったのは俺。通信マイク越しにデカイくしゃみされるよりましだろうって思ったんだが・・・まぁ、俺の隊には関係ないんだけど」
加藤がヘルメットをかぶってもなおマスクを装着していたために、いっこうにフォーメーションの指示が聞こえなかったらしい。演習中に隊列を大いに崩した結果、古代の怒りを買い、鶴見が山本と共に呼び出された。
「ばかやろう!戦闘中に通信が聞こえなくなる可能性だってあるんだからそれくらいでしのごの言うな!罰として・・・CT隊全員で格納庫の清掃だ。コスモタイガー全機、床も壁も徹底的に洗浄!艦内空気清浄器のフィルター交換もしろよ!」
ということで・・・加藤はヤマトクルーから恨まれることはなかったが、コスモタイガー隊員にはひどく恨まれる結果に終わった・・・らしい。

果たして、加藤は本当に花粉症だったのだろうか?

「隊長は本当にその、花粉症ってやつだったのか?」
「しらねぇよ。でも真田技師長がそう言ったって」
「あぁ、じゃぁそうだ」
「間違いないよ」
・・・・・事の真相は結局分からないままだが、誰も真田に異論を唱える者はいないのである。

Ψ(`▽´)Ψうけけけ・・・今日もぷちさだだは悪戯相手を探して真田の頭の上にいるのである。