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ワイド劇場第八話
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第八話:作戦開始
ルガールホテルのスイートルーム排気口から内部を眺める加藤と山本。山本がドライバーで排気口の出口をゆるめながら内部を伺った。加藤はポケットからガムを噛み、真田の作ったウルクの壷のレプリカをペンライトでチェックする。 「ちょろいぜ加藤。カメラなし、赤外線なし。防犯行き届いてないってーの」 排気口から頭を出してゆっくり辺りをうかがう山本の目には防犯機器を判別するゴーグルのようなカメラが取り付けられていた。 「当たり前だ、ここは銀行の金庫室じゃないからな。セキュリティーは外に二人。ブツの搬出の時だけここに入ってくる・・・」 「これだけのお宝前にして、何もいただけないってのは残念だね」 「ばかっ!」 おちゃらけている山本に向かって鼻息荒げた加藤が手を伸ばす。びくっとした山本が次の瞬間襟首を捕まれ後ろに引っ張られたのはそれと同時に部屋のドアが空き、セキュリティーがオークションの品を下におろす運搬員と入ってきたからだった。 「ちょっと早いんじゃないのか?ついさっき降ろしたばかりだぞ」 「いやぁ、思ったよりオークションの進行が早いので念のため降ろしておかないと。ここのエレベーター遅いですからねぇ」 「直通だろう?」 ぼやくセキュリティーの声に耳を傾けずに大きな台車に骨とう品をのせている運搬員はセキュリティーの隙を狙って排気口にウインクした。いつのまにか運搬員に変装した島だった。 「以上ですね、残り5つはまた後でとりにきますので。では失礼します」 怪訝な顔のセキュリティー二人は島が出ていくのを確認してドアを閉めた。誰もいなくなった部屋に音もなくおりる黒い影二つ。加藤はすぐさま入り口へと身を寄せ、外の音を伺いながら先ほど噛んでいたガムをドアの隙間へとなすり付けた。それと同時に地下駐車場のバンでは真田がコンピューターのENTERキーを押す。オートロックのドアはカードのIDチップの認識によって開閉されるが、加藤はそのIDを一時的に無効にするチップをガムの中へと押し込んでいた。ドアを開けようとすると、10秒間だけは容易にドアは開けられないというもの。ホテルの構造上、二人は真田との通信機が使えないため、もしものための秘策だった。 「OK!とっとと済ませようぜ」 「見た感じ、全く分かんないけど重さは見た目から感じる質量からして重すぎる。・・・おおっと!」 山本が天使の水瓶を隠したウルクの壷を加藤に渡し、ひきかえにレプリカを受け取るとあまりの重さの違いに手もとがぶれた。慌てて加藤が支える。 「気をつけろよ」 「悪ぃ〜」 「・・・この重さは・・・余計なものが中に入ってますっていう証拠だ。もともとウルクの壷なんて捏造品だからな、重さの詳細なんか分かりゃしないのさ。とりあえず、重さを同じくらいにしておかないと・・・これからは俺の仕事だ」 加藤がねじり鉢巻を巻くと背中にしょっていたリュックの中から粘度と砂を取り出す。寿司のしゃりで鍛えた微妙な重さへの勘はこういうことに役に立つ。いよいいよレプリカの重さを本物に近付けるための工作がはじまった。 この頃、オークション会場は一通りの入場者を終えたその時だった。焦りを感じる相原の声が全員の通信機に流れる。 「真田さん!大変です!!・・運搬員が第二班の受け取りがもうすぐ・・・」 [何?予定ではまだだろう!?島が向かったばかりだぞ] バンの中でモニターを見つめている真田の表情が堅くなる。 「本当にオークションの流れが早くてですね。島さん・・・まだ降りてきてないですよ。このままだとすれ違いになっちゃいます!」 この通信が聞こえている一同が冷や汗を垂らした。予定では第二班の運搬員が出る前に島が彼等にそれを運んでいく手発だ。一足先に持ってきたと伝えればそれで済む筈だが、島とすれ違いに第二班がスイートルームに到着するのはまずい。部屋では加藤たちが作業をしている最中でドアはID攪乱チップによって開閉不可能になっている。セキュリティーがドアを開けようとすれば、加藤と山本はすぐさまそれに気付いて逃げる時間が稼げる。だが、荷物が勝手に運搬されたことがばれたら、とたんに異常事態だと騒ぎが大きくなる。 [相原、第二班の乗る搬入エレベーターを止めろ!] 「ど、どうやって!」 [彼等の足留めをするんだ・・・理由はなんでもいい] 「わ、わかりました!」 しかし、相原はホテルのボーイの姿だ。第二班運搬員を止めるのは何の支障もないのだが、会場を出たところで宴会場を探している老夫婦に話しかけられてしまう始末。 「あのぉ〜すみませんが、宴会場をさがしとるんじゃが・・・」 「え、あ・・・」 慌てる相原は泳いだ視線でロビーに立つ南部に助けを求める。目前で危機を察した南部が搬入口へと走った。 [南部!持ち場を離れるな!!お前は一般客なんだぞ!] 「大丈夫、俺に任せて下さい!!」 滑る大理石の床に転けそうになりながら搬入口へと向かう南部。 「すみません!!」 「は?」 搬入口に立っているセキュリティーが怪訝な顔で南部を見た。 「あのっ!!・・えっと・・・何だったっけな・・・」 「ここから先は本日オークション用の搬入口で、関係者以外の方は立ち入り禁止です!」 「あぁ〜〜〜すみませんっ!!これ、IDカードです。俺、関係者ですよ」 南部の顔写真付きのIDパスを提示する。セキュリティーがカードリーダーに通すと見事に承認され、南部は小走りに搬入口へと向かった。 [おい、そんなものいつの間に・・・] 「相原がもしものときのためにって・・作っておいてくれましたから・・・って、このホテルのIDカード盗んで写真張り替えただけですけどね」 真田はほっと胸を撫で下ろした。おそらく運搬員とオークションについてしのごの適当に話を引き延ばせばそのうち島が降りてくる。島が運搬員のふりをして一足先にとりにいったとでもいえば何とかなるだろう・・・ポーカーフェイスの島なら、その辺はうまく丸め込む確信はある。だが、この時リストには名前の無い男女がオークション会場へと入っていく。南部が持ち場を離れた後のことだったため、真田達に彼等の存在はノーマークとなった・・・。 |
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