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ワイド劇場第七話
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第七話:総員配置に着け
真田のオフィスからほど近い廃工場の一角。割れたガラスがまだ残る窓からうっすらと光が差し込み、薄汚れた床の水たまりを照らしている。錆びたドラム缶の上で小型ノートパソコンを相原がカチャカチャとキーを叩く。南部が手持ちの眼鏡から相原の渡した眼鏡へ付け替えた。 「ちょっとあっち見て」 「はいよ。おおっ!」 眼鏡のフレームに組み込まれた小型カメラが南部の見た方を捉え、パソコンにその映像が映った。南部が驚いたのは、彼等のずっと先でワンピースに着替えた雪がこちらへ向かって来たからだ。相原のパソコンにそれが映り、思わず声を上げる。大人っぽく髪をまとめた姿はいつもの男勝りの雪とちがい、淑女といっても過言でない程だ。 「きれいだなぁ〜」 「お世辞はいいから、どれを付けるの?」 「あ、これです。ネックレス型の小型カメラ。こっちに転送されるようになってます。南部と同じのが入ってますから。それと・・・これ」 「真珠のイヤリング?もっとかわいいのがいいわ、これじゃ大きい」 雪が受け取った真珠のイヤリングは小指の先程の大きさの真珠がついていた。彼女の年齢から考えると少し大きいのかもしれない。 「通信機です。南部は眼鏡のフレーム。俺はホテルのスタッフに紛れ込むんで小型インカムです」 南部はバリッとタキシードを着込み、小さな鏡の前でリボンタイを結ぶ。相原はすでにホテルのスタッフ風のタキシードを着込んでいた。そう、彼等が向かうのはオークション会場だ。先に真田が指令を受けた、「天使の水瓶」がでるオークションへと向かうための準備だった。 「そっちの準備は大丈夫そうか?」 「OKですよ。うちの工場から持ってきた黒のバン、乗り捨てても足つかないようにしてありますんで」 タイをつけ終えた南部が真田に伝える。パソコンに黒のバンが映った。島が運転席で計器のチェックに余念がない。真田は頷くと自分の両手を確認した。はた目で義手と分からないように黒皮のグローブをしているが、そでから見える手首が若干太い。雪が心配げに見つめていた。 「大丈夫。必要とならないと思うよ。だが、念のためだ」 手首が太く見えるのは、そこに12口径の銃が仕込まれているからだ。真田の筋肉の動き一つで発砲する、彼の発明品の一つだった。 「で、壷は大丈夫なんですか?」 「ブラックタイガーのお二人さんは今頃スタンバってる頃じゃないかな。俺たちも急いだ方がいい」 島がバンのドアを開けた。ノートパソコンを閉じて真田に渡す相原、眼鏡のフレームにある通信スイッチを入れる南部、そしてイヤリングを装着した雪が乗り込んだ。向かうはオークション会場のホテル・ルガール。 ホテル・ルガールの屋上。夕方間近になって窓の掃除が始まった。もっともホテル側はそんなことは知らなかったらしく、作業員に紛争した加藤と山本がうまいこと取り繕ってホテルの屋上に到着する頃には日が暮れはじめていた。 「やべえな・・・時間がギリだ。受付が始まってる」 真田から受け取った一抱えの箱を背負ったままつぶやく加藤。山本はホテルの排気孔にロープをくくりつけ、すでに下りはじめていた。箱を背負った加藤が排気孔に向かう。熱風の出ている排気孔をこじ開け、中に滑り込んでからは真っ暗やみだ。頭に装着した小型ライトとホテルの見取り図をたよりに目的の部屋まで匍匐前進が続く。 「冗談じゃないよまったく・・・・吐きそ」 「だまって早く行け!時間がない!」 「はいはい・・・え〜と42階スイートルーム・・・・4211はこの辺かな。こりゃ抜けるの辛いぜ。ケツが引っかからないように気をつけようぜ」 排気孔から部屋を覗く。今晩オークションに出る品が箱から出され、部屋中に並べられていた。ここから3Fのオークション会場である大広間へと5品づつ運ばれているらしい。入り口からセキュリティーに囲まれたスタッフが台車を押して中に入ってきた。オークション番号の若い順に数個ずつ会場へと運んでいくのだ。 「で?天使の水瓶は何番目?」 「天使の水瓶を隠したただの壷だろ?15番目「ウルクの壷」だ。今5つのせていったから・・・次の次だな」 山本の問いに加藤が答えた。天使の水瓶を隠し、たいした価値のない「ウルクの壷」になったそれと同じ壷を箱から取り出す。真田が丹誠込めて作ったただのレプリカだ。 「とっとと作業終えちまおうぜ」 山本が通常なら美容師のハサミやら櫛やらの入っているウエストポーチから万能ドライバーを出してニヤリと笑った。 オークション会場では受付を済ませて席に座っている雪が周りを見渡しながらペンダントのスイッチを押す。映像がバンで待機している真田のパソコンに映った。相原が会場内のドア付近に立ち、入ってくる客を席へと案内している。南部は会場外の柱の付近で待ち合わせをしているふりをしながら来場者をチェックしていた。と、南部が突然目を見開いた。 「さ、真田さん!」 南部の眼鏡は受付に現れた紳士風の二人を捉えている。 [見えてるよ。デスラーとドメルだ・・・] 二人は受付を済ませるとしずしずと会場へと入っていった・・・。 「おかしいですね・・・招待リストにはなかったです。今は悪役専門の俳優プロダクション、ガミラスエージェンシーの社長と俳優でしたっけ?」 バンの運転席で島が呟く。真田が唸りながら頷いた。 [雪、相原、デスラーとドメルが入った。マークしろ。南部はそのまま来場者をチェックしててくれ、奴らが黒だと決まったわけじゃないし、目当ての品が出るまで来場者はまだいるはずだ] 雪、相原、南部は小声で「了解」と返事をする。オークションが始まった。 |
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