|
昼メロ劇場 第九話
|
|||||
|
第九話:嵐の予感
志郎が出張に出た。予定では一週間香港支社へと赴き、プレゼン及びゲーム機製造工場でのライン見学になっている。彼が出張して3日目のある日、佐渡はいつものように十三と将棋を指している。 「今日は台風が来とるせいで空が暗いですなぁ」 「まだ、天気は崩れとらん様ですがな。こう天気が悪いと気が滅入ります」 「なぁにをおっしゃる館長。いけませんぞ、そんな事では。雪が心配しとりましたぞ。最近口数が減ったと」 「そうですか・・・」 十三は守の事が心配だった。澪子の渡した金を生活費に、結局、ゆきかぜ荘では迷惑がかかるからと沖田の弓道場「大和館」にこもっている。 台風が来るというのに彼は大丈夫なのだろうか、不安でならない。その時電話が鳴った。澪子が洗濯を終えてぱたぱたと走ってきた。 「真田でございます」 [澪子さん・・・ですね。ガミラスエレクトロニクスの社長秘書をしております、タランと申します] 「まぁ・・・先日はどうも」 [パーティの席にて社長がおっしゃっておりましたホームパーティ、本日6時にてお迎えに上がりたくご連絡を] 「き、今日?あの、でも主人は出張中で・・・」 [社長のご機嫌を損ねることは・・・お控えになられた方がと御身の為ですぞ。先日ホストクラブ黒虎にお入りなる所・・・お見受けいたしましたが。・・・ではこちらからお迎えに上がりますので]プツ、ツーツー 「あの、もしもし!」 澪子は真っ青な顔をして切れた受話器を持ったまま立ちつくしていた。 「澪子君、どうしたかね?」 佐渡が居間から声をかけた。 「いえ、・・・お友達から今日の夜パーティーがあるから来てくれないかと・・・」 「たまには外出しなさい。いつも家にこもって主婦ばかりしていたら疲れるだろう」 十三は気を利かせたつもりだった。 「そうじゃそうじゃ、館長はわしがついとるから、お前さん出かけると良い。いい気晴らしになるだろう。真田君の出張中だ、思い切り羽を伸ばしてきなさい」 澪子はなぜかデスラーからの誘いだとは言えなかった。自分の中に後ろめたい感情がくすぶり、また、黒虎へ行ったことを真田に知られるのを恐れ、つい嘘をついてしまったのだ。彼女はタランの車でデスラー邸へと向かった。 高輪の一等地にデスラー邸はある。森のようにうっそうとした中にひっそりとたたずむ邸宅。彼女が通された吹き抜けの一室には巨大なソファがある。たった一人、ポツとすわる彼女の前にタランがワインとオードブルを運んだ。 「あの・・パーティは・・・」 「招待客は・・・貴方だけだよ。澪子君」 「デ、デスラー社長!」 不気味な笑みをたたえて階段から降りてきた。澪子はこの状況に身の危険を感じて立ち上がったが、すでに彼は目の前にいた。 「やっと、会えたね」 「脅すなんて卑怯です。デスラー社長!」 「デスラー・・・と呼んでくれたまえ。澪子。私もそう呼ばせてもらう」 「何をなさるおつもりです?私は人妻です」 「人妻、良い響きだ」 デスラーはニヤリと笑ってワインを飲み干すと澪子の腕を掴んだ。 「離してください!」 「ホストクラブに出入りするとは、可愛い顔をして大胆なお人だ。君とて何かを期待して此処に来たのではないのかね?たとえば、一夏の甘い一夜。私が相手では・・・不服かな?そう、君は若く美しい。私が探している女性に良く似た君がどうしても私の脳裏から離れなかった。君はまるでくちなしの花の如く白く柔らかい・・・さしずめ私はその蜜を求めてきた蜂」 「あ、あなたは婚約者がいらっしゃるのでしょう!」 「・・・なぜ、君がスターシアの事を知っているのだ?」 表情が変わったデスラー。澪子は失言したと大きく首を振っていたが、デスラーは澪子の腕を引いて階段を上がっていく。彼女が連れてこられたのは言うまでもなく寝室。ベッドに放り投げられて澪子の美しい肢体が露わになった。 「止めてください!」 「なぜスターシアの事を知っているのか、ゆっくり話を聞かせて貰おうではないか」 外は大きな雷と共にどしゃ降りの雨。追いつめられた澪子は抵抗むなしくデスラーに唇を奪われてしまった。 志郎以外に唇を許したことがない澪子は震えていた。それを愛おしむようにデスラーは抱きしめる。 「何もかも私にうち明けるのだ。君のご主人に「黒虎」に出入りしていることを知られてもいいのかね?いや、ご主人の会社にこの事が知れたら・・・さぞかしショックだろう。私は一向に構わぬがね」 デスラーの低い笑い声が彼女の耳元でエコーする。澪子は震えが止まらず、あまりの恐ろしさから、彼女は涙を流しながら、デスラーにスターシアと守の居所をうち明けてしまった。 「・・・帰りたまえ・・・澪子」 全てを話した澪子は涙にくれていた。その美しい涙に罪悪感を覚え、これ以上デスラーが澪子に何かしようとはしなかった。 「タラン」 「は」 スーツの襟を正してリビングに出てきたデスラーは秘書を呼んだ。 「ヒス君に連絡しておきたまえ。スターシアは今「大和館」という弓道場に身を潜めている。手段は任せる・・・と」 タランは深々と頭を下げて去っていった。 次回予告:どしゃぶりの中で・・・ |
|||||