|
昼メロ劇場 第六話
|
|||||
|
第六話
新スカルダートホテル「冬月」の間は大スクリーンと簡易ステージに南部電気の新商品、次世代ゲーム機「アステロイド」がスポットライトに浮かび上がっている。南部社長の開会挨拶が終わり、歓談中だ。もうすぐ真田の商品解説がはじまる。妻帯者婦人同伴のこのパーティでは煌びやかなドレスをまとった女性達がおのおの自慢話に花を咲かせる。澪子はそんな彼女たちから少し離れた壁際にポツと立ってシャンパンを飲んでいた。 「退屈でしょ?澪子さん」 「南部君・・・来てたんだ」 「そりゃぁ一応、跡継ぎらしいですからね、僕。首根っこひっつかんででも連れてこられますって。嫌いだなぁこういうお堅いパーティ」 澪子は南部のあきれた顔を見て少し気持ち和んだ。 「相原君と星空を見ている方が楽しいわよね」 「相原?アイツいつの間にか可愛い彼女つくってメロメロみたいですよぉ」 「そういう南部君はどうなの?」 「僕ですか?いいですよ女性は。この間もおふくろが見合いの話し持ってきて散々で・・・疲れます」 南部が本音をもらした。そこに志郎が現れる。 「澪子、すまんな構ってやれなくて。お前も無理をしなくてよかったのに」 「いえ、みなさんご婦人をお連れなのに貴方だけという訳には」 澪子は十三を雪に任せて、気乗りのしないこのパーティに出席していた。そのとき、彼女たちの周囲で今までとは違うざわめきが起きた。 「真田さん!ガミラス電気の社長ですよ!ヤバイ・・・こっちに向かってきてる・・・」 志郎をつつき、耳元で小声で伝える南部。人混みが二つに割れ、悠然とこちらに向かってくる薄紫のスーツに身を包んだ長身の男が目に入った。 「あ、おい南部!逃げるのか!」 そそくさと南部がその場からいなくなり、いつの間にか志郎の前にガミラス電気の社長が秘書を連れて立っていた。息をのむ志郎。 「君が・・・真田技師・・かね?」 「は・・・はぁ」 青白い顔をした長身の男はかるく頭を下げる。 「ガミラス・エレクトロニクスのデスラーだ。よろしくお見知り置きの程」 彼の後ろから秘書が名刺を差し出し、志郎に渡した。 「お会いできて光栄です。真田志郎と・・・申します」 デスラーは志郎が差し出した名刺をちらとみると秘書がそれを受け取った。 「素晴らしいゲーム機だ。洗練されたデザイン、コンパクトで機動性にすぐれかつ頑丈な作りになっている。これからが楽しみだね」 「お褒めいただいて恐縮です。御社の反射衛星を利用したブロードバンドとモバイルコンピューターを先日拝見しましたが、実に素晴らしい」 「フフフ、君のような技師がウチの社にいれば、もっとましなものができるよ。・・・それにしてもお美しい奥様をお連れだね」 志郎は思いだしたようにビクッとなると澪子をデスラーに紹介した。デスラーは澪子の吸い込まれそうな瞳を見て、思わず彼女の手を取り、甲に口づけた。 「これ程に美しい女性が奥様とは・・・真田君、つくづくうらやましい限りだよ」 志郎は内心ぞっとしたが、その時、部下に呼ばれて正気に戻った。まだ彼の商品解説スピーチの時間ではないが、軽い打ち合わせがあるらしい。志郎はデスラーに一礼するとその場を去ってしまった。困惑する澪子の前に、まだデスラーは立っている。 「澪子君・・・と言ったね。今度、我が家のホームパーティに是非ご招待したい・・・来てくださるかな?」 「あ・・・はい・・・是非」 引きつった笑顔で返事をした。この男が守の言っていたスターシアの婚約者だというのか?澪子は彼の強烈な威圧感に圧倒されている。デスラーの申し出を断るには相当な勇気が必要だ。そこにタランが澪子にデスラー邸の電話番号を書いたメモを握らせた。 「気が向いたら連絡をくれても構わぬ。では・・・また」 彼の低く落ち着いた声が澪子の耳にエコーする。微笑みながら踵を返すデスラー。しばらく歩いてから立ち止まり秘書の名を呼んだ。 「タラン」 「はっ」 三歩後ろで立っていたタランが歩み寄る。 「真田君に出張の予定があるか・・・探りたまえ」 「・・・かしこまりました」 もうすぐ志郎のスピーチがはじまる。志郎は立ちつくしている澪子に駆け寄った。志郎は先のデスラーの行為に不安を覚えたのかもしれない。 「澪子・・・すまない、今夜は遅くなる。君は先に帰って休んだ方がいい・・・少し疲れたようだし」 言われたとおりに澪子は一人、会場を後にした。駅まではタクシーを使うほどの距離は無いため、彼女は繁華街を歩いた。彼女の耳にデスラーの声が焼きついて離れず、少しめまいを覚え立ち止まる。目を凝らすとそこに『ホストクラブ・黒虎』の看板があった。 (あ、この間のチラシのお店・・・) 澪子は財布に偲ばせておいた例のチラシを出した。ちょうど店から山本が客を送るために出てきた所。客はタクシーに乗って手を振る。 「バイビ〜!明く〜ん!」 「ま〜た来てねー!ばいばいき〜ん!」 タクシーが行ってしまうと山本はさも「あほらしい」と言わんばかりにため息をもらして振り向いた。澪子と目が合う。 「あ・・・」 やばいところを見られたと思うが速いか彼はすぐさま【営業スマイル】に戻った。 「こんばんわ!寄ってかない?あ〜ウチの店のチラシじゃんっ。それ使うと1時間3000円で飲み放題なんだ!どう?」 「あ・・・あの・・・私・・・」 山本はニッコリ笑って「どうぞ」と店に向かって手を伸ばす。澪子は何かに押されたかのように、黒虎へと入っていってしまった。 つづく 次回予告:メモれ新米ホスト!コレがホストクラブの実状だ・・・そして澪子は・・・! |
|||||