昼メロ劇場 第四話
古代の憂鬱
「戻りました〜」
疲れ果てた進がコスモ・ピザ宅配所に帰ってきた。守がまた居なくなった事の落ち込みは相当キツイ。ロッカーに制服を投げ込むとすり切れたよれよれの服に着替えて出てきた。彼の唯一の救いは今日が「給料日」だったということ。
「そうだ!アレの発売日だった!・・・南部のやつに自慢してやるか」
突然表情が明るくなって、コスモ・ピザの従業員入り口で両拳を握りしめ、ガッツポーズ。これで今月も家賃滞納が決まった。そんな古代の姿を、向かいの駐車場からじっと見ている者が居た。黒ずくめの車中で、厳めしい顔にロマンスグレーの髪の中年男。タバコを吹かしながらただじっと進を見つめてからおもむろに手帳に書き込む。『弟、進・18時退社』。

♪パ〜パッパパ〜パラパ・パッパラ〜!!♪けたたましいマーチの着メロが鳴る。
「なんですか!今打ち合わせ中です!」
携帯の着信からそれが進だと分かった南部が小声で出た。
[シュルツ社製コスモ・ガン1/1、真鍮限定モデル。ゲットだぜ]
勝ち誇った進の声が携帯から聞こえる。
「ええええ!!」
南部は父・南部電気の社長に睨まれ、すごすごと社長室を出て廊下へ出る。
[見たいだろ?だったら俺んちに来いよ]
「行きます!すぐ行きます!」
「康雄坊ちゃま!何処に行かれるんですかーーー!」
秘書らしき男の言葉も耳に届かず、南部は打ち合わせをほったらかしに、そのままゆきかぜ荘へと行ってしまった。ゆきかぜ荘は常にいろいろな人間が出入りする。隣人の真田はもちろん、進と島の後輩・太田や南部、そのほか彼らの後輩や友人達が集う。だいたいは一番入り口に近い進の部屋だ。
「古代さぁん!」
扉を開けると狭い畳部屋には島も雪もいた。進はすでに南部にモデルガンを向けていた。
「伏せろ!南部!」
島の冗談交じりの声に続いて進が「バァァァァン!」と言ってみる。
「うぁ!やられた〜〜〜!・・・って、俺で遊ばないでください!」
雪が声を上げて笑いながら南部にジュースを出した。
「相変わらずみんな子供っぽいんだから」
「古代さんといるといつも昔に引き戻されるからなぁ」
「此奴がいつまで経ってもガキなんだ」
「何だと島!」
「やりやがったな古代!」
進が島に座布団を投げると島が投げ返す。南部は上手くよけて「柿の種&ピーナッツ」をぼりぼり食べていたが、進の投げた枕が南部に当たり、「柿の種&ピーナッツ」が床にばらまかれてしまった。
「あぁ〜!古代君!」
「雪、沖田艦。沖田艦。南部、お前ちゃんと食えよ!」
雪はそそくさと充電式卓上クリーナーを古代に渡す。どうやらプラモデルの「沖田艦」という戦艦に形が似ているからだと進は言うが、雪は良くは知らない。ちなみに吸い込み口に広口のをとりつけると「ゆきかぜ」になるそうだが、いまもって雪はまったくわからない。そしてこのゆきかぜ荘との関連性があるのかどうかも定かではない。
「こんにちは〜」
掃除まっただ中の4人が振り向くと、南部が開けっ放しにしておいた扉に見知らぬ可愛い女性が立っていた。
汗でずれたメガネを直す南部。そこに奥から相原が走り込んできた。
「晶子さん!僕の部屋こっちです!!」
「あぁ!相原お前いつの間に!」
「藤堂晶子です。いつも相原さんがお世話になってます」
4人は声を揃えて「藤堂?」と言った。晶子の両親はゆきかぜ荘の事実上の管理人だが、海外赴任中につき、晶子の恋人である相原が後を任されているのだという。晶子は夏休みを利用して日本に帰ってきていた。
「とてもゆきかぜ荘には似合わないお嬢さんじゃないか、相原」
「なによ!島君その言い方」
ふてくされる雪。照れる相原。
「今夜、神社でお祭りがあるそうなのでこちらに寄ったんです。祖父の会社の社員さん達がお店を出すのでみなさんもいかがですか?」
「あ・・・晶子さん・・・」
晶子の祖父はゆきかぜ荘の地主であり、事実上の持ち主。
「店って・・・焼きそばとか?」
「お好み焼きとか?」
「りんご飴?」
「俺は射的が好きだなぁ」
晶子はニッコリ頷いた。ゆきかぜ荘の持ち主の藤堂とは、かなりの歴史がある広域暴力団藤堂組の藤堂らしい。
「俺、ちょっと家賃払わないと・・・」
「そうですよ島さん、先月分もお願いしますね。あ、古代さんも・・・」
立ち上がる島。
「相原!仲良くしようぜ!・・・こんどメシおごる」
南部がにこやかに手を振ってみる。
「どうしたの?古代君、顔色悪いわ」
古代はモデルガンを買ってしまったことを後悔した。滞納した家賃は3ヶ月分。このままではいつコンクリートで固められ、東京湾に沈められても文句は言えまい。

つづく
次回予告:黒虎VSドメラーズ全面戦争勃発か!?巨漢のヤクザって誰だ?