昼メロ劇場 第三十一話
第三十一話:一つの終わり
都内某所の高級ホテル大宴会場「武藏」の間にてガミラス電気の新商品発表会が盛大に行なわれていた。スクリーンに過去の商品が次々と映し出され、そしてデスラーの偉業をたたえる映像が続く。ロックバンドやクラシックの生演奏、運び込まれる高級料理に客達は舌鼓を打つ。そんな中に志郎はいた。宴会場に入る前、フロントで土方と目が合った。
「真田君。本当にいいのかね。我々はいつだって踏み込める。すでに家宅捜索の礼状も出た。本来ならば、こんな事は我々警察側が許す事など出来んのだ・・・もっとも事の次第を全て見ているからねぇ・・・私は」
「ならば、何もおっしゃらないで下さい。私は善人ずらしてのうのうと会社を経営しているデスラー社長が憎い。屈服させねばならない悪です。引導を渡すのはわたしの役目です」
志郎はそう言って宴会場に入って行った。一方、警察病院で退院の決まった守がスターシャと荷物をまとめていた。進と雪がそこに現れる。
「雪さん、いろいろお世話になりました」
「だいぶお腹が大きくなって、順調そうでなにより。守さんも最近少しずつ思い出してきたんでしょ?」
「兄さん、スターシャさんの顔を見るなり思い出すんだから、まいっちゃうよ」
「進君の看病のおかげです」
スターシャが微笑んだ。
「礼を言うなら雪に言って下さい。・・・兄さん、兄さんもだよ」
「あぁ。進、お前には世話をかけっぱなしですまない」
守は進の手を取って、強く握った。二人の目が合った。守とスターシアは子供が産まれるまで北海道で静養しながら過ごす事にした。病院の入り口で待たせていたタクシーの前で、進の両肩に手を置く守。
「雪と仲良くな。それと、館長の後を頼む。弓道場を立て直してまたはじめるんだ・・・・俺は必ず、帰ってくる。それまで・・・」
「わかったよ、兄さん。もう俺や真田さんに迷惑かけないでくれよな」
守はスターシアの肩を抱いてタクシーへ乗り込んだ。振り向いて雪に微笑むスターシア。タクシーが走り出すと、進途中まで走って追いかけた。大きく手を振る進。雪も大きく手を振っていた。
「兄さーーーーん!元気でねーーーー!!」
ちょうど、その頃、ホテルでは志郎が自分の出番を待っていた。大勢のマスコミのカメラのフラッシュを浴びながら、デスラーが主賓席へと姿を現す。満悦の笑みを浮かべ、タランの運んだシャンパンを受け取るとガミラス電気開発部部長ガンツが乾杯の音戸を取った。歓談の始まる中、いよいよ各ゲストからの祝辞が述べられていた。
「え〜それでは、続きまして、南部電気化学工業株式会社より、代表取締役社長南部様に代わりまして、技術開発部部長・・・真田志郎様からのご祝辞でございます」
デスラーの顔が引きつった。
「まったく、代理を立ててくるとは・・・・。よりにもよってあの男を!・・・止めさせろ」
「し、しかし社長・・・この場でそれは・・・」
小声でのやり取りが続く中、ステージのスポットを浴びながら志郎がマイクの前に立った。
「デスラー社長・・・このたびは未来型ポータブルプレーヤー「ガルマン」の完成、おめでとうございます。このような数々の素晴らしい新商品を開発される裏ではよほど多くの方のご苦労と、多額の資金を必要とされたと思います。それをおくびにも出さず・・・いや、いつもながら感服いたしております。時にわたしの妻がお宅へとお邪魔させて頂いた際は、奥様には大変お世話になりましたが・・・お元気で・・・いらっしゃいますか?」
この時、少しばかり場内がざわつきはじめた。デスラーはこのパーティが終わってから、結婚式を盛大に行なうつもりでいたために、スターシアの事は知られてはいない。マスコミはこんなゴシップネタにすぐ飛びつく物だ。
「社長!い、いけません!!」
立ち上がろうとするデスラーを必至に抑えるタラン。その時、巨大スクリーンに帳簿データが映し出された。辺りのざわめきはさらに大きくなった。
「デスラー社長、これを御覧下さい。これは、貴男が麻薬犯罪組織ヒス組に横流しした献金の帳簿・・・・あなたはこれを元にヒス組を自分の配下につけ、やりたい放題していたそうですな」
「貴様!私を愚弄しに来たのか!」
タランの力の甲斐なく立ち上がるデスラー。
「愚弄ですと?これはまぎれも無い事実でしょう・・・こうして証拠があるのですから」
「貴様は自分の妻がおどされた腹いせにこんな事をしているのか!」
「おどされた?・・・・はて・・・・」
「デスラー社長!おどしたとはどう言う事なんですか!あなたは結婚なさっていたのですか?確か・・・資産家のお嬢さんとの婚約は以前破棄になったときいたんですか・・・」
「どう言う事ですか!デスラー社長!答えて下さい!」
次々にフラッシュがたかれ、まぶしさから目をそらすデスラー。そしてその時、土方率いる刑事達が踏み込んだ。その手には逮捕状。
「デスラー社長。暴力団とそれが経営するホストクラブへの献金および癒着、さらに銃刀法違反で逮捕させていただく」
「・・・・いつのまに・・・・」
「まだまだ他にも叩けばほこりが立ちそうですな。ま、詳しくは署の方でうかがいます」
「さ、真田!社長を陥れるとは・・・・その気になればガミラス電気に迎え入れてやる所を!」
タランが叫んだ。
「もうよい、タラン。醜いあがきはよせ。スターシアを失った時から・・・分かってはいた事だ。真田君、私のおどしに動じなかったのは君が初めてやもしれぬ。だが、私を陥れてもまだ先はあるやもしれぬぞ」
「私はこれ以上愛する妻と友人達の悲しむ姿を見たくない。もうこの業界と関わる事も無いでしょう。貴男とも、二度と会う事も無い」
志郎がデスラーの瞳を貫いた。
「残念な最後になってしまったが楽しい一時だった。いい友に恵まれなかった私の負けは認めよう。・・・・そう、君の・・・凛々しく美しい奥方にもよろしく伝えてくれたまえ。さらばだ」
デスラーとタランは刑事、そしてマスコミにとりかこまれながら宴会場から外へと連れ出されていく。嵐の様な時が流れ、誰もいなくなった宴会場にぽつんと志郎が立っていた。心配して来ていた澪子が入り口に現れる。
「あなた・・・・」
「澪子・・・・」
二人は走りより、志郎は澪子を抱きしめた。
「終わったよ・・・なにもかも・・・これでまた元の暮らしに戻れる・・・」
「あなた・・・ありがとう」
「一から出直さなくてはならないだろうが・・・いつまでも俺の傍にいてくれ」
澪子は志郎の胸の中で、涙を流しながら何度も頷いていた。

つづく

次回予告:そして数ヶ月後!?