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昼メロ劇場 第二十八話
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第二十八話:ひきがね
深夜の繁華街。大盛り上がりを見せる黒虎にはひっきりなしに客が足を運んでいた。はじめは表情の硬かった進、島もすっかり息の合ったプレーを見せている。久しぶりの大にぎわいに店の中はパーティーを通り越して「祭り」状態。入り口で来客者を送迎する加藤の顔に安堵の笑みが浮かんでいた。 「お疲れさまです。良かったですね、盛り上がって。もうすぐ閉店ですけど・・・延長しますか?」 ボトルを取りに来た四郎が「店長・加藤」に微笑んだ。 「延長したらボスに怒られるよ。しかし、パーティが終われば、俺ものんびりできるな」 「まだ引退は早いですよ」 「・・・・どうだろうね・・・」 加藤はポケットからタバコを取り出し、ジッポーライターで火をつけた。ふと、ライターに掘られた戦闘機の図柄が目に止まる。 ーーー山本・・・どこにいるんだ・・・ーーーー その山本だが、澪子に会ってからあちこちふらふらした末、黒虎の近くまで来ていた。戻って来たのではない・・・彼が足を運んだのははす向かいのホストクラブ「ドメラーズ」だった。閉店前で客の見送りにホスト達が代わる代わる出て来ていた。 「店長はいるか?」 「お・・・・おめーは」 入り口にいたクロイツが目をひんむいておどろく。 「黒虎のNo.2・・・山本明だ」 「怪我の具合はもういいのか?随分と顔色がよくないけど」 階段から降りて来たのはミルだった。ちょうど最後の客を見送りに降りて来た。ちゃらちゃらしたギャル風の女をタクシーに乗せると山本の目の前まで来て頭からつま先までを舐める様に見た。 「ふ〜ん、No.2にしちゃぁ、ずいぶんとお疲れみたいだな。ま、黒虎じゃぁね」 「借りを返しに来た。店長はいるのか」 クロイツはそそくさと店の中へ走っていった。ミルは山本の前に立ちはだかって山本を中に入れようとはしない。 「怖い顔しちゃって〜。借り?例の一件のね。うちの店とは関係ない事だよ。どこかの暴力団が気晴らしにやったことなんじゃないの?」 「暴力団だってことくらいは俺だってわかってる。其所をどけよ。どかないんだったら・・・」 ミルの胸ぐらを掴んで引き寄せた。小柄なミルは簡単によろけたが、それでもあざ笑うかの様に山本睨んだ。 「たしか〜ヒス組って言ったかなぁ。行くならそっちの事務所あたったら?」 「貴様・・・・!その暴力団とここが関係してる事くらい調べはついてんだよ!!」 掴んだミルの胸ぐらを押して壁に叩き付ける。肘で首を締め上げている最中、誰かが階段から降りてくる。その男がこう言った。 「ミル・・・・なぜお前がヒス組の事をを知っているんだ?」 山本はミルの顔が豹変していくのがわかった。ドメルが帰宅する為に運転手のアルフォンを連れて降りて来たのだ。ミルを引きづりながらドメルに歩み寄る山本。 「悪いが・・・・今の君にしてやれる事は無い。安心しろ、ドメラーズはしばらく休業することを上から通達されている・・・・黒虎に迷惑をかける事もないだろう」 「どう言う事だ」 「ヒス組は解散した。そのせいで店への資金提供が打ち切らるようだ。山本君、無理は止めたまえ、傷にさわるぞ」 ミルを掴んだ山本の手を握って引き離す。 「ミル・・・・私の知らない所で、よけいな事をしてくれたな。自分の株を上げたいばかりに、私を通さず社長に取り入った。なぜなら君のような卑劣なやり方を私が許さないと思ったからだ。違うか?」 「やっぱりあの写真はお前が撮ったんだな」 ドメルは髪を振り乱してドメルにつっかかる山本をまじまじと見た。愕然と立っているミルに比べれば、怪我を押してまで借りを返しに来た山本を敵ながらあっぱれとでも思ったか、苦笑いをした。 「私は雇い主の言われた事をしたまでだ。誤るつもりは無い・・・。だが、本心として、私は黒虎と堂々と実力で勝負する・・・そのつもりでミルやアルフォンを引き抜いた」 「堂々とだと・・・・」 「なのにミルは私のプライドに泥を塗った」 ドメルの視線はミルへと向けられた。蔑む視線がミルを貫く。 「私とて・・・・社長に言われて・・・・」 「社長は私の雇い主だ。だが、お前の雇い主が私だと言う事を忘れるな。・・・ミル、この返事は高くつくぞ」 ミルは階段の隅にへたれ込んだ。業界からの永久追放は免れない。バーガー、ハイデルン、ゲットー、クロイツが店を閉めて降りてくる。 「失礼する」 去っていこうとするドメルを山本が追おうとしたため、彼を羽交い締めにしたドメラーズのホスト達。 「バカやろう!逃げるんじゃねぇぞ!!ドメル!!は、離しやがれ!!へっぽこホストがぁぁぁ!!」 山本の大声は向かいの黒虎にも聞こえていた。閉店を迎えて客を見送っている斎藤が振り向く。それは、階段を降りている黒虎のホスト達全員にもはっきり聞こえていた。だれが、黒虎一喧嘩っ早いNo.2の声を忘れられようか?中間にいた加藤が血相を変えてメンバーを掻き分け、道へと飛び出して来た。 「山本!!」 向かい合うホスト同士。何が起きたかと降りて来た、進、島がそっと顔を出す。深夜の繁華街に一触即発のオーラが放たれた。 つづく |
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