昼メロ劇場 第二十五話
第二十五話:逃走、スターシア
「山本が病院を抜け出しただと!!!」
この声が病院に響いたのは自宅療養をする事が決まったある日の朝だった。山本は表の傷が塞がったものの、中の傷が塞がるまであと数週間という状態で抜け出してしまったらしい・・・。
「退院したら、しょっぴかれるとでも思ったんですかねぇ・・・」
「まさか・・・一人でドメラーズに殴り込みに行くつもりじゃ・・・」
黒虎のメンバーは口々に憶測を並べ立てたが、一言聞こえる度に身体の傷がずきずきと痛んでくる加藤だった。
「兄貴・・・とにかく帰えろう。ここにいたら息が詰まりそうだ」
車を玄関にまわした四郎が病室に戻ってきた。
「店に、行かないと・・・・」
「山崎さんと平田さんが事務をやってくれてる。心配いらないよ」
加藤の額からピキッと音がした。と四郎は思った。
「ばっかやろう!!なんでボスに連絡なんか!!!・・・く・・・い、痛ぇ・・・」
「遅かれ早かれ、バレバレだって。大声だして、傷開いても知らないぜ」
しっかり者の弟だった。
「そうじゃなくて・・・パーティの出し物は俺と山本のカクテルショウだろう・・・それを・・・」
「はいはい、わかったわかった。いいから、ほら、外に車待たせてるんだよ」
腹に力を入れると痛みが走る加藤。弟が促すまま、病院を去って行った。なぜか、病院には進も島も斉藤、志郎達もいなかった。

プルルルルル・・・・。誰もいないデスラー邸のリビングに電話の音が響く。ここの所新商品発表会の準備でデスラーもタランも邸内の会議室にこもる事が多い。電話の前で立ち尽くすスターシア。発信着信履歴はタイムリーにコンピューターで監視され、電話のあるリビングはデスラーのいない間はどこかで監視カメラが作動しているという有り様。電話を取るなときつく言い付けられている彼女に取ってはなす術が無い。やがて留守番メッセージに切り替わった。
【ただいま、出かけております。ご用件のある方はピという発信音の後にメッセージを、ファックスの方はそのまま送信して下さい。お電話ありがとうございます】ピー!
[もしもし・・・・あ、あの・・・澪子です・・・。お話ししたい事があって・・・お電話いたし・・・]
スターシアはこの声を聞いて衝動的に受話器を取った。
「澪子さん!」
[その声は・・・スターシアさん!!]
「澪子さん・・・・守さんは・・・守さんは今どこに・・・」
[落ち着いて、スターシアさん・・・守さんは無事よ。安心して・・・・」
スターシアの瞳から大粒の涙がこぼれた。
「・・・・・よかった・・・・」
[元気なの?ちゃんと食べてる?]
「私・・・・・私・・・」
スターシアは何か言いたげだったが、それ以上は口に出せずにいた。澪子はデスラー邸の門まで来ていた。
[待ってて、スターシアさん。デスラー社長はいないんでしょ?今行きます]
澪子はそういって電話を切り、デスラー邸の玄関まで走った。しかし、ガードマンに阻止される。今までもこうやって、誰もが阻止されてきていた。しかし、ちょうど会議を終えたデスラーが玄関付近の窓から澪子を認め、邸内へと招き入れたのだった。
「これはこれは、澪子君。自ら来てくれるとはいったいどういう風の吹きまわしかね?」
玄関からリビングへと促すデスラーは、リビングに立ち尽くしているスターシアを発見して表情が堅くなった。
「スターシア・・・・ここには来るなといっておいた筈だ・・・・」
「いいえ・・・・デスラー・・・・私はここを出ます。もうかごの鳥はこりごりです」
「スターシア、来客中だ。話は後で聞く。退席したまえ」
澪子が進み出た。タランが止めようとするがその手を払ってスターシアの方へと走り寄った。
「スターシアさんは私が責任持ってお預かりします。どうぞご心配なく。この為にここに来たのですから」
「澪子・・・・君はそんな事をして何になるというのだね?・・・・ほう、ホストクラブへ行った事がご主人に知れて・・・開き直ったとでも?確かご主人は君の一件で技術スタッフから下ろされたそうだね。今度の新作発表会で会えないのは残念だ・・・」
澪子はスターシアの手を引いた。
「主人は負けません・・・貴方になど・・・さぁ、行きましょうスターシアさん」
澪子に向かってデスラーが歩み寄ろうとした時、サイドボードの引き出しから、以前ヒスの眉間を打ち抜いた拳銃をスターシアが構えた。
「来ないで下さい!デスラー・・・私の・・・私のお腹には守さんとの子供がいるんです!!・・・この子を守る為なら私はどんな事をしてもここを出ます!!」
愕然とするデスラー。スターシアの前にタランが進み出た。銃口をタランに向けるスターシア。
「お止め下さい!こんな事をして何になります!」
「おどきなさい!タラン!私を侮らないで下さい!私は本気です!」
「タラン・・・道を開けてやれ・・・もう、よい」
両手を挙げたタランが道を開けると、澪子がスターシアの手を引いて走った。屋敷の庭に銃を捨て、スターシアも走った。追ってくるボディーガードに気付き、タクシーに乗り込む二人。
「澪子さん・・・私はとんでもない事を・・・」
「安心して、スターシアさん。これから向かうのは病院よ。守さんがいる」
毅然としていたスターシアが安堵の涙を流す。同様に澪子もまた涙をながしていた。

「良いのですか・・・社長・・・」
「・・・・彼女の家の財は手に入った。それでよい・・・・それで。・・・よもや子供がいたとは・・・フフフ、私も見下された物」
デスラーは俯いていた。タランは思った。本当は彼女の事を愛していたんだろうと。いつもなら、激怒するはずのデスラーが、ただなぜかこの時は落胆したままだった。

つづく

次回予告:黒虎5周年パーティーの準備に現れた救世主!?