昼メロ劇場 第二十二話
第二十二話:新たなる展開

新年早々、ドメラーズでは不穏な空気が流れていた。年末の売り上げは上々だったにもかかわらず、ドメルは不機嫌そうな面もちで新年の挨拶を済ませるといつものように奥の席に座り、月初恒例の個人賞の発表をした。
「先月の個人氏名及び同伴賞はミルだ。ごくろうだった。だが、同伴率が下がっているようだが・・・どうした?」
ゲットー、ハイデルン、クロイツ、バーガーがニヤリとミルに目をやると、しらっとした表情で答えた。
「いえ、体力勝負のこの仕事・・・年末に少々頑張りすぎただけです。別件で用事を頂いた事もありまして・・・なにぶん社長から直々のご用のため・・・お伝えできなくて申し訳ありません」
「ドメル店長にも伝えられない用事をなぜミルが受けるのか合点がいかないが・・・」
「まぁいい、アルフォン、お前は次点賞として賞金を渡す。ミルは欠勤があったため取り消しだ。以上」
ミルは舌打ちをするとドメルから賞金を受け取るアルフォンを睨んだ。
「残念だな、ミル・・・今月は負けないよ」
開店準備に取りかかるホスト達。入口へと向かうアルフォンにミルが小走りで近づいた。
「あまりいい気になるな」
「それはこっちの台詞だ。ヤクザに肩入れするのもほどほどにするのだな・・・ミル・・・」
「なに・・・」
「俺が何も気づいていないとでも?」
二人は小声で話をしていた。
「店のためだと言いたそうだが、汚いやり方はドメル店長もいい顔はしないだろうな」
そう言い残して去ろうとするアルフォンの肩を思い切り引き寄せるミル。
「言ったのか!」
しかしアルフォンは黙って笑っているだけだった。

門に、玄関に、これ見よがしに巨大な門松が飾られたデスラー邸にには複数のベンツが並んでいた。吹き抜けのリビングには黒ずくめの男達が立ち並び、デスラーが入室したと同時に硬直した。
「デスラー社長・・・新年、明けましておめでとうございます」
ヒスの一声と共に総勢が「おめでとうございます」を復唱する。しかしデスラーは冷ややかな表情のままソファに腰掛けてタランが勧めた紅茶に口を付ける。
「しくじったな・・・ヒス・・・」
「・・・は・・・?」
「先だって警察病院に二名のホストが収容されたそうだ。黒虎のホストらしいが・・・」
「あぁ〜、その件ですか・・・ミルが社長よりご用を頂いたと連絡を受けました故・・・仰せのままに」
最後まで言うか言わないかでヒスの禿頭に紅茶が飛んだ。タランはがっくりと肩を落としたが、そのままもう一杯の紅茶を入れるため、ポットにお湯を注ぐ。
「黒虎のNo.1とNo.2をつぶすのは悪くない・・・手を汚すのはヒスにやらせろ・・・確かに私はそう言った・・・だが、店長をつぶせとは言った覚えはない!」
「は・・・?」
デスラーは静かに立ち上がってヒスに背を向け、リビング奥のテーブルに手をかけた。
「第一、脇差しにお互いの指紋を付けて喧嘩の末の刃傷沙汰に偽装する・・・そのような策を練ったところで私が喜ぶとでも思ったか?」
ヒスの表情はどんどん青ざめていった。タランが無言で差し出したタオルを受け取る手は振るえている。
「警察から車のナンバーに関する電話がかかってきた・・・やかましい限りだ。黒のベンツは全て処分すせねばならんな」
「け、警察に車のナンバーが?そ、それはどういう・・・」
「偶然とは実に恐ろしい事でございますな」
うろたえるヒスに耳打ちするタラン。
「す、す、すぐに車の処分を・・・この件今一度私めに後始末お任せ下さいませ。黒虎の連中とて致命的な傷はおわせていはおりません!警察にも我々の息のかかったものがおりますゆえなんとかもみ消しを・・・」
「ヒス君・・・君は馬鹿かね?」
パシュ!・・・デスラーの手にはサイレンサーのついた拳銃が握られていた。眉間を撃たれたままテーブルにつっぷしたヒス。
タランがデスラーより拳銃を受け取ると、グリップを布で拭き取りもとあった机の引き出しにしまった。
「新年早々見苦しいな・・・。始末しろ」
壁際に立ち尽くしていた構成員があわててヒスを抱き上げて車のトランクへと運び出す。去って行こうとするデスラーにタランが声をかけた。
「なにも殺さなくてもよろしかったのでは・・・?」
「黒虎の店長をわが子のようにかわいがっている男がいる・・・その男の裏に広域暴力団がついているという噂を聞いた。遅かれ早かれ命はなかろう。あとはドメルに任せる。私は今月末の新商品発表会の準備に忙しいのでな・・・」
リビング脇の階段をすたすたと上がって行くデスラーの後ろ姿が見えなくなるまでタランは頭を下げていた。視線を横にそらすと、階段下の壁の向こうにスターシアが立っていた。
「いつからそこにおられたのですか?」
タランは少し焦り気味だったがいつものように優しい声で話しかけた。
「いましがた。・・・一歩も外へ出られないので邸内を散歩していたのです」
「怖い思いをさせてしまいました」
「いいえ・・・もう慣れました。夫となる人の事ですから・・・もう・・・」
込み上げる涙をぐっと堪えてスターシアはそう言う。
「あなたはお強い方だ。デスラー社長もお喜びになるでしょう」
しかし、タランが微笑みかけようとしたその時、スターシアは急に吐き気を覚えてその場にしゃがみ込んだ。
「スターシア様?どうなさったんですか!」
スターシアは口元を押さえ、タランをはね除けて走り去って行った・・・。

つづく

次回予告:警察病院の同窓会