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昼メロ劇場 第十六話
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第十六話:嫉妬
雪が十三の介護のため真田宅へと訪れていた。元気がないのは先日、進の制止を振り切って黒虎へと向かった事で、進と大喧嘩をしたせいだった。この事が心配で、非番の島も真田宅へと訪れていた。 「すまなかったなぁ、雪。俺が加藤のことをだまってたばっかりに、君までとばっちりを」 「島君、違うわ。私は島君が話してくれていたとしても、やっぱり加藤君に会いに行っていたもの・・・」 十三はべつに聞きたくもない話ではあったが、密かに加藤のことを案じていたのは確かで、本を読んでいる振りをして二人の会話を聞いていた。 「加藤君・・・強がりばっかりいって・・・追い返されちゃったの。だからゆっくり話ができなくて」 「そりゃぁそうだろうな。あいつ、俺と再会したばかりの時もそうだった。しょうがないよ、そうならなきゃ、風俗界を生き抜く事なんてできないからなぁ」 雪は寂しそうだった。 「雪、加藤は今でもあの事件のことを引きずってる。加藤はお前のことが・・・」 「島!」 島が話そうとしたとき十三がそれを止めた。雪は高校時代、弓道部の憧れのヒロインだった。誰もが彼女に恋心を抱いていたが、それが通じ合えたのは進。十三もそれをよく分かっていたし、島や加藤の悔しさも知っていた。だからゆっくりと十三は話した。 「雪、人には色々と事情がある。昔のようにいつまでも一緒というわけにはいかん。古代は守の事を、島は恋人を失い、加藤は夜の世界で大きな責任を・・・・それぞれが大きな問題をかかえて。それでも生きておる。雪、お前はいつだって三人のかけ橋になっていた。それを忘れるなとは言わん。だが、お前が動いて溝が深まることだってあるのだ。男の問題だ、お前は余計なことはしてはならん」 「館長・・・・」 雪は項垂れてリビングを後にした。澪子は志郎の誘いででかけている。誰もいない台所で声を殺して涙を流した。 「加藤君、私はもうあの時のことは何とも思っていないのよ。古代君だって話せば分かってくれ・・・」 「雪。ここはお前みたいなのが来るところじゃない。その酒を飲んだらもう帰れ」 「加藤君!」 雪が進の制止を振り切って黒虎に現れた。これは先日の事だ。幸か不幸か客の入りが少ない平日のど真ん中。ヘルプもつけずに部屋の一番奥の席で加藤が雪をさとしていた。 「これだけは言っておくよ。・・・俺は、お前のことも、古代の事も・・・忘れたことはない。だが、もう俺達は子供じゃないんだ。お前が古代とうまくやってるなら、それで良いじゃないか」 「もう、昔みたいにはなれないっていうことなの?」 寂しそうに加藤を見つめる雪。加藤には、まだ彼女の瞳がまぶしく感じていた。あの頃のように。しかし、視線を落とした加藤の目はストッキングの向こうにくっきりと残る傷跡を捉えた。一瞬にしてあの事件のことが脳裏をかすめる。加藤は立ち上がって指を鳴らしてチェックの合図を送ると赤城が現れて加藤のヤマテックス・ゴールドカードを受け取って去っていく。雪の酒は加藤のおごりだ。 「俺みたいなのが友達じゃ、お前達に迷惑がかかる。今日、お前は此処に来なかった。そういう事にしておく。古代に刺されるのはゴメンだからな」 「古代君だって・・・あんな風に言ってるけど、本当はとっても心配していたのよ!」 「お前はそうやって、すぐ古代を引き合いに出す。いつもみんなのことを心配して、誰にでも優しくして・・・でも結局古代なんだろう?」 雪に返す言葉はなかった。 「古代は小さいときに両親を失って独り者だ。俺みたいに兄弟がたくさんいるわけでもない。あいつにはお前みたいな優しい奴が必要だ。それにあいつはいざっていうときに頼りになる。俺は負けたんだよ・・・悔しいけど、何もかもあいつに負けた。俺はあいつを見返してやりたくてこの世界で金を稼ぐ道を選んだ。もう、抜け出せない」 加藤は雪をタクシーに乗せるとタクシーチケットを握らせながらそう伝えた。雪が何か言おうとしたときはすでに発車した後だった。 「雪・・・俺は今だって、時々古代がいてくれたらって思うときがある。また昔みたいにバカやってすごせたらって思うときもな。でも、いつまでも俺が近くにいたら・・・お前は幸せになんかなれないだろ。足に残った傷跡を見るたびに・・・・思い出すじゃないか」 たとえ雪が忘れたと言っても、足に残った痕のように、加藤の心にもくっきりと傷痕が残っているのだ。肌寒くなってきた繁華街の風が加藤の頬を叩くように吹いた。 島が雪の元にやって来た。慌てて涙を拭う雪だったが、島には何もかもお見通しだ。 「憎たらしいなぁ、加藤のヤツ」 島は苦笑しながら雪の涙を見てない振りをしていた。 「俺だって、古代のことがうらやましいし、ねたんでないと言ったら嘘になる。雪を取られたのは悔しかったしな。でも何の縁だか、ゆきかぜ荘であいつと暮らしてると・・・なんだかなぁ、安心するっていうか」 「テレサさんの時だって、古代君は島君のそばにずっといたものね」 「あいつのどこに安心があるんだかわからないけどな」 その言葉で雪が笑った。その反面、そこに加藤がいないのはやっぱり寂しいと思った。 つづく 志郎と澪子のデート |
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