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昼メロ劇場 第十四話
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第十四話:出会い
志郎は繁華街を歩いていた。仕事ではその切れの良い頭脳を駆使し、素晴らしい集中力で仕事をこなしても、いったん仕事を離れると先日の件が重く彼にのしかかっていた。なんとなく、ただなんとなくではあったが、澪子が通ったという「黒虎」がどんなところなのか見たくなった・・・。だが、「今日はまっすぐ帰りたくないから」と呟いたために、元気のない志郎を気づかってか、南部と相原によって「ラーメン・徳川亭」へと来ていたのだった。 (まさか、ホストクラブに用があるなんて言えないしな・・・) 心でぼやくとチャーシュー麺をすすった。 「元気ないですねぇ、真田さん。まぁ俺達もなんですけどねー」 「そうだな、お前達も元気無さそうじゃないか。どうしたんだ?」 「相原は相原で、晶子さんがボストンへ帰っちゃったんでしょげてるんです。俺は俺で・・・相変わらずおふくろが見合いしろってうるさくてうるさくて」 「お互い、大変だな」 「そ、大変だよな、相原」 南部は「ざまあみろ」とばかり相原に顔を近づけてそう言った。志郎が苦笑すると相原は大きなため息をついた。 「晶子さんってあのかわいい人でしょ?俺知ってますよっ!この間うらの神社の公園で二人で野菊を摘んでるところ見ちゃいましたモンねぇ〜。いい歳してかわいいんだからなぁ相原はぁ」 珍しくカウンターでラーメンを出している太田がしゃべると向きになった相原が真っ赤な顔のまま反論した。 「う、うるさいなぁ、いいじゃないかよ。大食いしか脳のないお前に何が分かるんだっ」 「照れるな照れるな相原!恋愛の形は自由だ。野菊を摘もうが、手もつなげなかろうがねぇ〜」 南部が追い打ちをかけた。カウンター越しで太田、南部、相原のあーだこーだととりとめのない口げんかがはじまると、間もなく休憩のため、ホールでテーブルを拭いていた島が志郎に耳打ちした。 「真田さん・・・加藤の・・・いや、黒虎の様子が見たいんでしたら、閉店まで待つことになりますよ。いいんですか?澪子さん、ほっといて」 「ん・・・・何でそのことを?」 勘が鋭いのか、島はなぜ志郎がめずらしくこの繁華街に現れた意味が分かっていた。黒虎の営業時間は午後7時から翌朝5時まで、これも定かではない。そんなことは全く知らない志郎は顔面蒼白になってしまった。 そこにガラガラっと徳川亭の扉を開けて、ご機嫌な酔っぱらいが現れた。 「着てはもら〜えぬぅセーターをぉ〜〜〜。寒さぁこら〜えて編ん〜でますぅ〜〜〜とくらぁ」 「さ、齋藤!」 はじめに声をあげたのは相原だった。 「じゃまするぜ。ったくよぉ、ついこの間夏だと思ったらもう寒くていけねぇや。おい島!ダイちゃんラーメン大盛り頼むぜぇ〜」 「はいよ。ダイちゃんラーメン大盛りね」 太田がオーダーを受けると齋藤が割り箸を投げつけた。 「おめぇじゃねぇよ。俺は島の作ったラーメンが食いてぇんだ。見習いのおめぇが俺様のラーメン作るなんざ1000万光年はえぇんだよ!」 しょうがないとばかり台布巾を太田に手渡して厨房に入る島、俯いたままの志郎が心配そうだ。 「なんだなんだぁ?相原に南部の坊ちゃんまでいやがるぜ!っけ、しけた角刈りサラリーマンと一緒か?そんなしけたツラしてるとラーメンがのびちまうよ!!!」 「だれなんだ?」 「藤堂組の幹部で、ゆきかぜ荘の家賃取り立て屋・・・」 ?顔の志郎に南部が耳打ちした。 志郎が「ああ、そうか」といった風に頷く。島ができたてのダイちゃんラーメンを齋藤の前に置きながら顔を尽きだした。 「齋藤、声が大きすぎだ」 「声がデカイのは生まれつきだ。文句あんのかてめぇ」 カウンター越しで島と齋藤が鼻をつき合わして睨み合う。齋藤の酒臭さに島が先に身を退いたとたん、徳川が顔を出してきた。 「あちらは真田さんと言ってな、沖田十三氏の義理の息子さんだ」 「げっ・・・沖田って・・・じゃぁ組長の旧友の・・・。そいつはいけねぇ。・・・すまねぇな、からんじまって・・・」 一気に齋藤の酔いが醒めたようだった。志郎は苦笑した。沖田が藤堂組の組長と知り合いだったことは既知だったが、彼にとってヤクザ家業などというのは、ホストクラブ同様無縁の世界なのだ。 徳川は島に休憩に行くよう伝えて厨房に入った。裏口から外へ出る島はそのまま裏の神社の公園へと向かう。夜の休憩時間はそれほど長くはない。深夜にかけて客で賑わう徳川亭に島がいないと困るのだ。ちょうどそのころ徳川亭のドアを勢いよく開けてまた客が飛び込んできた。 ガラガラガラ! 「いらっしゃ・・・・古代・・・どうしたんだこんな時間に」 徳川の声を受けて志郎をはじめ、みんなが一斉に入口を向いた。進は汗をかき息を切らして目を三角にしていた。 「徳川さん!島は!」 「今休憩中だ・・・どうした?そんなにあわてて・・・お、おい!」 「あ、古代さん!」 進はずかずかと店内から裏口へと向かった。止めに入ろうと声をかけた太田を突き飛ばして裏口を抜ける。進は島がいつも公園で休憩しているのを知っていたのだった。シンとなる店内で齋藤がぼやく。 「なんだかねぇ〜」 店内にいた志郎、相原、南部、齋藤は、その後、島が口から血を流しながら戻ってきたことは知らない。島が加藤のことを黙っていた事に進が怒り、殴ったなどとは・・・ましてや、雪が加藤に合うために進の制止を振り切って黒虎へといったなどとは知る由もなかった。 つづく 一方、同じ繁華街ではもう一つの出会いが・・・ |
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