|
昼メロ劇場 第十一話
|
|||||
|
第十一話:嵐の訪れ
沖田の弓道場「沖田館」は哲学堂公園の奥にある小さな古い小屋のような建物。今は誰にも使われず、手入れの行き届かぬ緑に囲まれてはいるため隠れるにはちょうどいい。コンビニも近く、守とスターシアはそこでなんとか暮らしていた。窓を閉め切り、雨戸を閉め、外に明かりが漏れない様にしながらひっそりと。 「すまない・・・スターシア、こんな思いをさせてしまって。館長の親切を断るのにも気が引けて・・・」 「いいのです、守。私は貴方の傍にいられるだけで幸せ。雨風が凌げるだけでも充分ですもの」 スターシアが守の肩に寄りかかると、守はスターシアを強く抱きしめた。 「秋になったら此処を出よう。北海道で暮らさないか?」 「北海道?」 「ああ、何もないところで一からはじめるんだ・・・そうだな、家も自分たちで建てよう・・・そして子供を作ろう・・・幸せな家庭を築くんだ、だれの邪魔も入らない幸せな家庭を・・・」 「うれしい」 バタン!カランカラン! スターシアは突然の物音に驚いて肩をびくつかせた。 「風がまだ強いみたいだ・・・きっと外の看板か何かが倒れたのかもしれない、ちょっと見てくるよ。雨は止んだみたいだし」 「ええ・・・気をつけて・・・あなた」 守は優しく微笑んで入り口へと向かった。入り口の真鍮製のネジの様な鍵をひねってガラガラと玄関を開けると石畳が続き、その向こうの門に看板が落ちていた。大きな柳の木がざわざわと揺れていた。 「あぁ、やっぱり。昔から立て付けが悪いからな」 一歩踏み出したときだった。柳の木陰から人相の悪い数人の男達が現れた。 「スターシア!逃げろ!」 ふり返って叫ぶ守に男達が飛びかかる。慌てて玄関までやって来たスターシアが悲鳴を上げた。 「守!」 「いたぞ!捕まえろ!」 「逃げるんだ!スターシア!」 スターシアは勝手口へと向かい、包丁を掴むと裸足のまま裏口へと走った。時既に遅し、裏口には黒のベンツと共に数人の男達が待ちかまえていた。 「スターシア様、ささ、こちらへ・・・。デスラー様が首を長くしてお待ちです」 いやらしい笑みと共に深々と頭を下げたつるっパゲの鶏ガラ男が傘を持って立っている。 「ヒス組長・・・」 黒のベンツのボンネットには暴行を加えられた守が突っ伏していた。 「守・・・」 「スターシア・・・俺の事なんて構わず・・・逃げろ・・・!」 「分かりました・・・・その代わり守の身の安全を保証しなければ私は此処で自害いたします」 「ほぉ、相変わらず、気の強いお方だ」 スターシアは自分の首に包丁を突きつけた。たじろぐヒス。 「デスラー様の宝物に傷を負わせては私の立場がない・・・いいでしょう。この男にはもう危害は加えません」 ヒスは部下に合図すると守から離れた。ずるずるとボンネットから滑り落ちた守は水たまりの上を這いながらスターシアに呼びかけた。 「ダメだ・・・スターシア・・・此奴らの言うことを信じちゃいけない!」 「いいのです守・・・私は、ほんの少しの間でも・・・貴方と一緒にいられたこと・・・幸せに思います。どうか・・・もう、私のことなど忘れて!」 ヒスの部下達がスターシアに駆け寄り、手から包丁を奪い取ってベンツへと押し込む。押し込まれる寸前、彼女は大粒の涙を流して守を見た。 「愛してるわ・・・守」 「スターシア!」 ベンツは走り出した。スターシアは見た、弓道場の裏口に残ったヒスの部下数名が守を囲んだのを。 「卑怯者!彼には手を出さぬと・・・」 ヒスは車の中で暴れるスターシアのみぞうちに軽くパンチをめり込ませると彼女は気を失ってしまった。 「お嬢様はこれだから世話が焼ける」 「いいのですか?あれで」 ベンツの運転席にいるドメルが呟く。 「あの男に訴えられでもしたらガミラス電気の株が下がる。なぁに、心配には及ばない。ちょっと口が利けなくしてやるだけ・・・ま、もっとも永遠に利けなくなるかも・・・しれないがね」 ドメルは汚いヒスのやり口が気に入らなかった。だが、これも仕事と割り切るしかない。そして、後部座席で気を失っているスターシアを哀れげに思った。 翌日、台風一過の晴れ空の元、進は軽快なエンジン音を鳴らしてピザの配達に精を出していた。 「ふぅ〜、暑い暑い!こんなくそ暑いのに朝っぱらからよくピザなんか食うよな〜」 「売り上げ上々でなにが悪い!」 コスモピザの店長・幕の内が怒鳴った。彼は弁当屋の両親の反対を押し切り宅配ピザを始めたドラ息子だが、仕事にかけては頑固者だ。 「冗談ですってば。幕の内店長は頭が堅いなぁ〜」 「そう言えばさっき変なおっさんがお前を訪ねてきたぞ」 幕の内がピザ生地をまわしながら呟いた。 「変なおっさん?なんだそれ?」 「さぁ〜。このくそ暑いのにスーツ着てよ、肩からコートかけちゃってさ、渋いツラして・・・まるで刑事みたいなの。ありゃ「太陽にほえろ」のファンだなきっと」 おもむろに進が電話の受話器を取りながら、下ぶくれ風に渋い顔をした。 「何?殺し?おい、山さん!」 幕の内がタバコを深々と吸っている真似をする。 「ボス・・・事件ですか」 「なぁ〜んちゃって」 コスモピザに爆笑する二人の声が響いていた。 次回予告:真田家はまだ台風が吹き荒れていた・・・そして加藤は・・・ |
|||||