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昼メロ劇場 第十話
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第十話:大雨の中
台風が上陸したようで、そとはどしゃ降り。黒ベンツは澪子を乗せてデスラー邸を離れた。後ろの座席で俯いている澪子をバックミラーでちらとみる運転手。ドメルだった。 「・・・大丈夫・・・ですか?」 「・・・え?」 ホストの癖なのか・・・つい女を気づかうようになっている。 「あの、この辺でいいです」 「しかし、外は台風ですよ。お宅の前までお送りせねば、社長に・・・」 「結構です!家の前にこのような車を止められては迷惑ですから」 澪子はきっぱりとドメルに言った。バックミラー越しに見えるドメルの顔が曇る。 「・・・ごめんなさい。ご親切には感謝いたします。ですが・・・」 車が止まった。神田川沿いの一本道。真田宅までもう少しといったところだ。車が止まったと同時に澪子はドアを開けて飛び出すように降りた。ドメルは一礼して車を出す。どしゃ降りの雨の中、澪子はデスラーとの口づけを思い出し、激しく口を拭いながら歩いていた。 (ごめんなさい・・・!ごめんなさい・・・あなた・・・守さん!スターシアさん!) 正気に戻った彼女の膝がふるえ、川沿いの公園のベンチに座り込んでしまった。どれくらい時間が経ったのか分からない。ただ、煌々と輝く外灯の元で、雨に打たれたまま澪子は項垂れたままだった。 「あぁ〜くそ、なんで俺が買い物なんか。ったく台風だってのに冷蔵庫からっぽにしとくなよな〜」 ぶつぶつと文句を言いながら山本が神田川公園を歩いていた。コンビニの少ないこの辺りでは、歩いて10分ほどいかないと食料が手に入らない。さりとて、加藤のジャガーでコンビニに乗り付けるのも馬鹿馬鹿しく、おかげでジャージもタンクトップもびしょぬれで、傘は意味を成していない。そんな彼が澪子を見つけたのはもう夜中だった。 「あの〜、大丈夫ですか?酔っぱらってるの?ねぇ、こんなところで座ってたら風邪ひくよ・・・。?ひょっとして澪・・・ちゃん?」 澪子が聞き覚えのある声で顔をあげると其処に山本がいた。 「明・・・君・・・」 「何やってるんだよ!こんなところで!な・・・・何があったっていうんだ!」 驚きのあまり、つい本音で言葉を発してしまったが、それすら気づいていない程彼は驚いていた。澪子は呆然と立ち上がり、ふらふらと倒れそうになったため山本が彼女の肩を掴んだ。 「み、澪ちゃん?・・・おい!しっかりしろよ!やばい・・・医者・・・医者・・・あぁ〜でも夜中」 買い物袋と傘を落としてうろたえる山本。 「明君・・・ごめんなさい・・・。平気です・・・お医者さんだなんて、あまり大げさにするわけには」 「だけど、こんなにからだが冷たくなってるじゃないか。こんな時間に・・・。澪ちゃん?澪ちゃん?」 澪子は気を失っていた。山本が思うに何かあったに違いない、おそらく病院に連れて行けば旦那に知れてしまう、こんなこと、ホストならすぐに分かる事だった。山本は彼女を抱えてマンションへと急ぐ。 ピンポンピンポンピンポン!ドンドンドンドン! 「加藤!加藤!速く開けろ!このバカ!」 「遅せーんだよ!腹減っただろ〜が!・・・え?・・・おい、どうしたんだ!」 「倒れた」 玄関を開けた加藤の前に、澪子を肩にかついだ山本が厳しい顔で立っていた。気を失っている澪子をベッドに寝かせ、バスタオルで体を拭いた。加藤も山本も必死に彼女の身体を見ないよう、お互いの顔を見合ったまま、澪子の服を脱がして毛布にくるんだ。 「どうするんだよ、山本・・・。彼女の家、どこだか知らないのか?このままだとヤバイ」 加藤はビニールが泥まみれになっているメロンパンの袋を開けておもむろにかじりつきながら話した。 「あぁ・・・」 「あぁってお前な。まったく世話の焼けるヤツだな。とりあえず医者を呼ぶ。あの先生なら大丈夫だ。口が堅い」 加藤は山本に軽くウインクをしたが、山本は浮かぬ顔で澪子を見つめていた。 「おい・・・・こんな事が許されると思ってるのか?揚羽の事を思い出せよ。客との交際がばれてクビになったんだぞ。今、俺が店長だから良いようなものの・・・事と次第によっちゃ親友のお前でも。俺にこれ以上世話を焼かせないでくれ」 山本は焼きそばパンを握ったまま俯いていた。 「山本・・・お前、・・・ひょっとして・・・。止めとけよ。俺は許さん。第一相手は人妻だ」 「分かってる」 「確か彼女はお前に1000万ちかくつぎ込んでる。短期間でこれくらい貢いでくれる客はそういない。いいか、俺達の夢のためにも金が必要なんだ。鬼になれ、鬼に」 加藤はそういうと受話器に手をかけた。加藤と山本の夢は大きかった。リゾートアイランドを買い取り、そこにコテージを作る。一大観光地へと広げる夢だった。 ピンポーン 「わしじゃ!ったくなんじゃ、この大雨のしかももう夜中じゃぞ!」 「あ〜すいません、佐渡先生・・・ちょっと急患・・・」 医者とはやはり佐渡だった。下駄を脱ぎ捨てるとずかずかと部屋に入っていく佐渡はベッドに横たわる女性をみて立ちつくした。 「み、・・・澪子君・・・。なんで・・・おい!加藤!こりゃどーゆうーことじゃ!」 「ど・・・どういうって。知ってるんですか?この女性の事・・・」 「知っとるもなにも、沖田館長んとこの嫁さんじゃぞ!」 「か、館長の?」 愕然とする加藤。山本は事情がよく分からずただ青ざめた二人を見つめていた。 次回予告:追いつめられたスターシア、そして守は・・・? |
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