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昼メロ劇場 第一話
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主婦の憂鬱
澪子は真田の家に嫁いでから2年ほど経とうとしていた。近所で評判の可愛い若奥様、澪子が暮らすここは、何の変哲もない、のどかな住宅街にある一軒家、ここには澪子と歳の離れた夫・志郎と、ほとんど寝たきりになってしまった義父・十三が住んでいる。十三は随分前に亡くなった志郎の実母が後妻に入った沖田家の長だったが、近頃身体が思うように動かず、放り出されてしまったのだった。いたたまれず志郎が引き取り、いつも澪子は十三の世話に精を出している。 そして、今日は十三の将棋のライバルであり、主治医の佐渡が上がっていた。 「先生、今日はゆっくりしていかれるんでしょ?」 「おお、館長の具合も随分良いようだし、一局指していくぞ」 十三を佐渡は「館長」と呼ぶ。沖田は今でも若者達の集う弓道場「大和館」の館長だった・・・。 ピンポーン!ピンポンピンポンピンポン!!! 「ハーイ!いま出ます!」 澪子は佐渡に麦茶を出すと、けたたましくチャイムの鳴る玄関へと向かった。 「真田さん!真田さん!」ダンダンダンダン! 真っ昼間から大声で玄関の戸を叩く若者がいる。隣のアパートゆきかぜ荘の住人だ。 「進君!どうしたのこんな時間に、アルバイトは?」 どうやら服装からしてまだアルバイトの最中のようだ。胸には『コスモ・ピザ「古代」』と書かれたネームプレート。白と赤のストライプに赤い帽子という制服を着たままだ。 「それどこじゃ無いんですよ澪子さん!真田さんは?」 「会社にきまってるじゃない!」 「あ・・・そうか」 澪子の夫、志郎はこの国でも屈指の会社「南部電化工業株式会社」の科学技師をしている。が、ただのサラリーマンには違いない。平日の昼にいるわけがなかった。 「ねぇ、どうかしたの?」 「あの・・・兄さんが帰ってきたんだ」 「守さんが?よかったじゃない!突然いなくなったって聞いたから主人もお義父さまも、みんな心配していたのよ」 「それが・・・どっかの大金持ちのお嬢さんと・・・駆け落ちして俺の部屋に転がりこんで来たんだよ!」 その言葉は十三と佐渡がいる居間にも聞こえてきた。顔色を変えて立ち上がろうとした十三を佐渡が止める。 進の兄、守は志郎の親友で十三の愛弟子だったが、理由あって破門を喰らったきり行方が分からなかった。 澪子は嫌な予感がした。大金持ちのお嬢さん・・・?。 いつも残業で帰りが遅く、家に帰っても自室にこもって研究に没頭しがちの志郎が澪子から連絡を受け、今日は珍しく残業もせずに帰ってきた。その脚でゆきかぜ荘へと向かった。畳敷きの粗末な部屋で守達は正座していた。 「守・・・どういうことなんだ・・・」 「すまん、志郎」 「兄さん、さっきから会う人会う人誤ってばっかりじゃないかよ!いったいどれだけ心配したと・・」 噛みつかんばかりに大声を出す進を制したのは向かいの部屋の住人、島だった。島は進を部屋から引きずり出し、彼の部屋は志郎と守、そして駆け落ちしてきたという美麗な女性だけになった。 「はじめまして、スターシアと申します」 三つ指ついて頭を下げた女性の美しさに志郎は飲み込まれそうだった。 「志郎、しばらく俺達、逃げ回っていたんだが・・・金も尽き果ててしまって、しかたなく弟のところに」 「逃げ回ってって・・・お前何をしたんだ!」 志郎はすぐさま守の胸ぐらを掴んで引き寄せたが、スターシアがその手を外そうとする。 「お止め下さい。・・・追われていたのは私のせいなのです!」 「貴方の?」 「私・・・両親が無理やり決めた相手と結婚しなくてはならなかったのです。・・・結納の日、守さんと逃げ出しました。でも婚約者は大会社の社長・・・部下を使って私たちを追い続けているのです」 志郎は掴んだ手を離すと、落ち着いてスターシアの話に耳を傾けた。 「ガミラス・エレクトロニクス株式会社の若社長との結納がいつの間にか決まっていたのです・・・。私はその時両親の反対を押し切って守さんと・・・」 スターシアは涙ながらに話したが、志郎は頭を抱えざる得なかった。ガミラス・エレクトロニクス(ガミラス電気)・・・南部電気化学とのライバル会社だ。ついこの間も志郎が開発したゲーム機器の件でもめたばかり。相手が悪い・・・すぐさま志郎は思った。 一方、志郎の家では澪子が夕飯をテーブルに並べたまま、なかなか帰ってこない志郎をじっと待っていた。こういう生活がはじまってもう2年・・・こんな筈じゃなかった・・・時々思うようになった。志郎の給料のおかげで生活は何の不自由もない。だが、何でも話せる温かい家庭、週末は一緒に外出を楽しんだり、そんな明るく平凡な家庭を望んでいたのだが、それも叶わない日々を送っている。子供をもうけたくとも、近頃では床を共にすることも無くなった・・・。澪子はちらと十三が眠る居間の方を見やるとおもむろにエプロンのポケットから一枚の紙切れを出す。 『ホストクラブ・黒虎』・・・今日ポストに投げ込まれていた名刺ほどの大きさのチラシだった。 [行ってみようかな・・・最近、主婦の間で流行ってるっていうし] 誰でもいい、現実を忘れさせてくれるのならば。ずっと押し殺してきた誰かに甘えたいという気持ちが少しずつ頭を出してきていたのだった・・・。 つづく |
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